2008年11月10日

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN その2

perpetualflame.jpg

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN

■ようやく新作PERPETUAL FLAMEについて、の作文
イングヴェイの秘密主義によって焦らしに焦らされた結果リリースされた新作。ジャケットからして期待通り。これを買うのが恥ずかしいとか言うやつは、まず鏡を見ろ。そしてそのツラで表を歩いている自分こそを恥じるべきだ。いやーほんと実際恥ずかしいジャケ。だからこそイングヴェイであり、だからこそいい(さらに繰り返されるイングヴェイファンの屈折自己肯定)。

何はともあれリッパーが加入したことがもっとも大きなトピック。ATTACK!!を除けばALCHEMY以降ヘヴィ志向を強めていたイングヴェイだが、マーク・ボールズ、ドゥギー・ホワイトともにその路線に合っていたとは言えない。イングヴェイもインタビューで「極端さ」をアピールし、新作はヘヴィでアグレッシヴであることを強調していたし(まあこれは毎回そうだが)、ようやくイングヴェイの志向に合ったヴォーカリストが加入してのヘヴィ志向ということで、かなり期待していた。

そしてもう1点今回大きく注目していたのがミキサーとしてROY Z.を起用したこと。ROB ROCKのアルバム等で現代的なヘヴィネスも取り入れた音作りをしていたので、それをイングヴェイのアルバムでもうまく取り入れてくれたらすげーカッコよくなるんじゃない!?と一人興奮しておりました。

が。当初7月発売予定とインフォメーションされたのに、いつまで経っても発売日が確定しない。ロイ・Zによってミックスされたカッコいい音質のアルバムを、イングヴェイが聞いて「なんだこりゃダメだ!」とまた自分でやり直してるせいで発売が遅れている、なんつーネタが冗談に感じないのがイングヴェイなので、不安は募るばかりでした。

まあ実際は身内で固めたマネージメントが日本を軽視してるからか情報が入ってこなかったってだけで、イングヴェイからしてみたら最初から10月発売の予定だったらしい。

まあ事情はともかく焦らしに焦らされて期待と不安が今までになく膨らんでいた今回のアルバムであったわけですが、もちろんやっぱりイングヴェイ全開で、今までと大きく変わったところはなし。ただ、リッパー加入は俺はアリだと思う。やっぱイントロでさ、「イャーーーー!!」ってシャウト入ると燃えるじゃないすか。それがあるだけで、ドゥギーよりリッパーでよかった、と思う。オープニングを飾るDeath Dealerはシャウトのインパクトがあってテンションが上がる曲だ。最近のアルバムからはなかなかライブの定番として生き残る曲が少ないが、この曲は今後もセットリストに残って欲しいって思えるカッコいい曲だ。サビの後niリッパーが低音で唸る”Death dealer is on the hunt!"がカッコいい。そういやWAR TO END ALL WARSのジャケってDeath Dealerっつータイトルだったよね。

リッパーの歌のスタイルってイングヴェイのメロを歌うのにはフィットしないかな、というのも実際感じるところで、すでに出回っているリッパー加入後のライブ音源を聴く限り過去の曲とリッパーの相性はあまり良くない。そういう意味ではかなり不安も大きかったんだけどこの曲の唸るパートのように、今のイングヴェイの志向とリッパーの(歌唱ではなく)攻撃的な声質は合ってると思う。シャウトがさらなる攻撃性を音楽に加えるのはもちろん、彼の中・低音域は非常に邪悪な雰囲気があるので、Live To Fight (Another Day)のようなドロップDチューニングのヘヴィな楽曲はリッパーだからこその魅力が出ていると思う。まあ全部が全部リッパー最高ってわけじゃなくてところどころ「やっぱあんま合ってないな」ってとこもあったりするんだけど、まあ俺はこれはこれでアリ。

ROY Z.効果はあまりないようだけど今回は低音、特にベースの音が硬質でカッコいい。これは今までのイングヴェイの作品にはあまりない質感で嬉しいところです。

ギタープレイについてはコンチェルトを境にまた一段階アップしたなと思ってたんだけど、今回もさすが。ただのピロピロではないと思う。Damnation Gameのソロ前半のように「圧倒しよう」というだけでなく「聴かせよう」というタッチが感じられたりするし、Priest Of The Unholyのエンディングはまさに圧巻。例によって「フンガー、ムハァ」、とフランケン&毒息全開のイングヴェイヴォーカルが聴ける(そして嬉しくない)Magic Cityでの泣き全開のプレイと並んでいつまでも聞いていたい素晴らしいギタープレイです。Magic Cityは後半の転調が新鮮。

Caprici Di Diablo~Lamentで使われてる6弦スウィープに関しては技術的には凄いのかもしれんが聴感的には特に印象に残らず。Disciples Of Hellの決めフレーズみたいだなって思ったぐらい。でも今回は全体的にソロパートのコード進行が多少練られていたり、バックの演奏にちょっとしたオカズが入ってたりもしてソロパートについては好印象。

っつーことで俺が書くと好き好き全開になってしまうんだけど、スローテンポな曲が続く後半の流れはちょっとキツい。あと、Death Dealer以外のスピードチューン2曲がどちらも悪くはないけどすごいいいってほどでもないっつー感じなので、そのあたりがこのアルバムの印象をちょっと物足りなくさせてるかもしれん。今回のアルバムはアタマ4曲のファスト→ノリのいい曲→ヘヴィ→ポップって並びがMAGNUM OPUSに似てなかなかいい並びだなんだけど、それこそ後半にFire In The Sky級のインパクトある曲がないので前半のテンションと後半のテンションにかなり差が出ちゃってる。ポップなRed Devilもフェラーリかっとばすぜ!な曲の割りになんかモッタリしてて間抜けな感じがするし、もう少し魅力的な歌メロにならんかったのかなーとか思ってしまう。

まあでもそのRed Devilがいいアクセントになってるのも確かだし、前半は聞き応えがある。後半もMagic Cityみたいな聴きどころもあるし今回はギタープレイの冴えっぷりもあって、キャリアの中でもそこそこ存在感があるアルバムになってると思います。

投稿者 trouble : 00:38 | コメント (318)

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN その1

perpetualflame.jpg

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN

書いてたら長文になりすぎたので分割しました。まず前半。

■今のイングヴェイを好きな自分をムリヤリ肯定する作文
90年代中盤以降の正統派とかメロディック・パワーメタル、そして所謂メロハーというのは、言ってしまえばデータベース化された要素を組み合わせての同人誌みたいなもんである。メロハーはJOURNEYの同人誌だし、欧州のメロディックパワーメタルの多くはHELLOWEENとSTRATOVARIUSの同人誌である。

「美旋律」「哀愁」「疾走感」「ドラマ性」そのどれもがいまや新しく生み出されるというよりは先人たちが築き上げたデータベースの中から検索され、組み合わせの妙を楽しむというのがメロハー、もしくはメロスピである。

で、こういう流れはメロハーなら80年代中期以降、メロスピならHELLOWEENのTIME OF THE OATHあたりから顕著になってきたような気がする。もちろんメロハーやメロスピだけの問題じゃなくて、最近だと「やりたいことをやった」のではなく、明らかに過去の自分たちの音楽を分析してデータベース化し、そこから必要な要素を組み立てて作った感アリアリのMETALLICAの新作もわかりやすい例だと思う。このへんの是非を問うつもりはないし、そもそも俺もそういう東浩紀言うところのシミュラークル的な作品を普段から愛聴しているのは言うまでも無い。

で、イングヴェイだ。

彼がひたすら同じような音楽をひたすらやっている思っている人は多いだろうし、実際フレーズの使いまわしはかなり多い。そういう意味では「データベースを活用しての自己パロディーばっか」だと思う人も多いのではないだろうか。しかし、俺が思うに毎回同じようなことをやっているようでありながら実はシミュラークルになりえていないのがイングヴェイの凄い(そして悲しく切ない)ところだと思う。

イングヴェイの築き上げたネオクラシカルメタルというジャンルの音楽はどちらかというと要素に分解しやすい、言い換えればデータベース化されやすい音楽性だ。だからこそファンの期待するものはかなり具体的になるし、ある意味そのデータベースに対して意識的になれば、簡単に(というと語弊はあるかもしれないが)ファンの求める要素を組み合わせての高機能なシミュラークルになり得るはずなのである。NATIONとかMAJESTICとか。

しかしながら、その大元イングヴェイの音楽性というのは、実はその「こてこてネオクラシカル」とはややズレている。彼本人の音楽志向は「もっとヘヴィに!」であり、ファンが期待する「クラシカルで美旋律志向」ではない。北欧キラキラ路線の傑作ECLIPSEの時でさえFaultlineを人に聞かせて「どうだ!ヘヴィメタルしてるだろ!」と威張っちゃうぐらいなのである。彼のそういう下品にロックでありたいヘヴィ志向はいまだにECLIPSE以前の音楽性を求める多くのファンの志向とは大きくズレている。欧米では再評価されていると言われているが、彼の存在のLEGENDARYっぷりが評価されてるのであって、彼の最近の作品が評価されているわけではない。

まあ問題なのは志向の問題だけじゃない。ヘヴィ志向はそれはそれでいいんだけど、この人それを具現化するだけのスキルがないのである。だからWAR TO END ALL WARSのようにやりたいことはいいのに音質で失敗してみたり、ATTACK!!みたいな中途半端な作品を作ったりしちゃうのだ。UNLEASHE THE FURYはそういう意味ではここで書いたように痛快な作品ではあったが、ヴォーカリストのチョイスを間違えた感は否めない。

彼の使いまわしは「陥っている」だけであって「データベースの活用」とはやや違う。彼はいつも同じようなことをやっている印象があるにも関わらず、彼はファンの求めるものとか市場にウけるもの、自分の音楽のおいしいところ、ってのをデータベースから引っ張り出してきて作品を作ってるわけではない。飽くまでそのとき湧き上がってきた衝動を音楽にしているだけなのだ。前に使ったかどうかとか考えてないから似たフレーズが出てきてるだけなのだ。それを才能の枯渇と言ってしまえばそれまでなのだが、その計算の無さ、衝動性に委ねた創作スタイルがあるこそ「シミュラークルとして機能しきれない微妙に外れた作品」を出し続けることになるし、痒いところになかなか手が届かないもどかしさを感じるアーティストである。

青臭いことを承知で書かせてもらうが、俺がスリルを感じることが出来る音楽というのはデータベースを活用してる部分とその衝動によって作られた部分の比が後者に傾いている音楽である。言い換えれば「機能性を追及するシミュラークル」も大好きだが、強い思い入れを持てるのは「大きな物語幻想を感じさせてくれる作品」なのである。音楽から感じ取れる強い衝動性は俺にとって大きな物語へのアクセスするために必要不可欠なものだ。そしてイングヴェイの存在、作品には質は伴っていなくとも今でも強くそれがあるし、だから今でも冷めることなく彼の音楽を好きでいられるんだと思う。

ってのはね。本当にイングヴェイがそうかってことが問題ではなくて、単に俺が「イングヴェイを好きな自分を肯定したい」ってことだけなんすよね。この文章は多分来週読み返したらグッっと恥ずかしい文章なんだろうな!来週の俺、頑張れ。

まあ「だから新作のPERPETUAL FLAMEもそういうのが感じられる素晴らしい作品だし、大好きだよ」ということなんですけど、それだけで終わるのも悔しいのでアルバム聞きながらまた続き書きます。(続く)

投稿者 trouble : 00:18 | コメント (256)

2008年08月17日

BIRTH OF THE SUN / RISING FORCE

birthofthesun.jpg

BIRTH OF THE SUN / RISING FORCE

Powerline Recordsから突如リリースされたイングヴェイのアマチュア時代の音源。しかも当事者Marcel Jacobがリミックス&リマスターを手がけるというそりゃイングヴェイはブチ切れて当然、な1枚。発売当時はビックリしたもんです。

イングヴェイのブートLPの中でも入手困難かつ中身の価値が高いと言われていた通称「白ジャケブート」に収録されていた4曲にSpeed and Action(イングヴェイ自身がリリースしたTHE GENESISではPlug In Lucifer's Mindというタイトル)、Voodoo Nightsを加えた6曲入り。今から15年ほど前まではこの音源は82年にスウェーデンのCBSのためにレコーディングしたものでは?と言われていたが、マルセルのライナーによればBIRTH OF THE SUNに収録されている音源は80年に録音されていたものらしい。ちなみにCBSのためにレコーディングした3曲というのは、Soldier Without Faith, You're Gonna Break Them All, Horiszonsの3曲とのこと(GOLD WAX誌のスパーク・ジャガー氏の記事より)。

さらに余談を重ねると、イングヴェイのアマチュア時代の音源としてはこの他にBLACK STARというブートLPが有名で、そちらもなかなか音質がいい上にMerlin's Castle、Dying Man, Suite Opus:3すべてBIRTH OF THE SUNとは別音源が使われている(Black Star, Magic Mirror, As Above, So Below, Anguish & Fearも収録)。と言っても今LPが聞けないのでそれが「別録音」かそれとも「別編集」かは確認でけん。裏ジャケには80年から81年に録音されたものと書かれているんだけど、詳細はわからん。レコードプレイヤー出したら聞き比べてみよう。

ともかく、BIRTH OF THE SUNのレコーディングメンバーはイングヴェイがヴォーカル&ギター、Marcel Jacobがベース、Zepp Urgardがドラムの3人編成。プロデューサーもいない状況だったのでヴォーカルとギターのオーバーダブ以外はほぼライブで録音せざるを得なかったらしい。HEAVY LOADのRagne Wahlquistが所有するストックホルムのThunderload Studiosでレコーディング。

POWERHOUSEでの録音の2年後だが、イングヴェイのギターは「ホントこいつ学校とか行かずにギターばっか弾いてたんだろうなあ」という勢いで進化しており、ほぼ現在の「ネオクラシカルスタイル」を完成させていると言っていい。ペンタトニック以上にハーモニックマイナーを使った速弾きが印象的。曲自体の方向性はPOWERHOUSE時代とほぼ変わらないダークな北欧ヘヴィメタルだが、全体的にレベルがアップしているというか「完全にプロの作品」になっている。地下室でドロドロと閉じこもっていたかのようなPOWERHOUSEより随分と垢抜けた。

個人的にはZepp Urgardのドラミングが気持ちいい。EUROPEに在籍していたトニー・レノに共通する雰囲気が好き。ていうかイングヴェイ17歳、マルセルとZeppが16歳のときにこんだけの作品てすげーな。POWERHOUSEには稚拙さがあったけど、こっちはあんまないもん。イングヴェイのギターはもちろんそれを支える二人が16歳ってのが信じられん。

マルセルのライナーによれば、「ろくなシンガーが回りにいなかったからしょうがなく」歌ったイングヴェイのヴォーカルはやはりきっついもんで、テープの回転数間違えたかのような低音でモッタリ歌っている。Merlin's CaslteはRAINBOWのStargazerを稚拙にした感じの歌詞でファンタジックだが、Birth Of The Sun、Dying Manはその後のイングヴェイの「てめーらは俺を倒せないぜ」的強がりソングの原型のような歌詞。

イングヴェイのマヌケなヴォーカルのおかげで北欧ならでは田舎っぽさ満点で、聞いてて楽しい。Zepp Urgardはその後ポルノ男優になったということですが、どなたか見たことある人はいませんか?

投稿者 trouble : 22:24 | コメント (52)

Yngiw Malmsteen's POWERHOUSE

powerhouse.jpg

イングヴェイの新作発売予定日がまた延期になってしまった。今月末に発売されるメタリオンは「完成したアルバムを聞いてのインタビュー」という触れ込みだったけど、果たして大丈夫なんだろうか。録音された素材の音の悪さにミックスのロイ・Zがアタマを抱えているとか、ロイ・Zがミックスした「まともな音のアルバム」に納得のいかないイングヴェイが「悪い音のアルバム」に作り直しているんじゃないかとか不安は尽きません。

そんな不安を紛らわすために彼の過去の作品を改めて聞きなおしていこうと思い立ち、まずはこのアルバムから。Hit 'n Run Recordingsというレーベルから突如リリースされたアルバム。裏ジャケにはThe very first recordings by a 15 year old Yngwie Malmsteenと謳われているとおり、イングヴェイが1976年に結成したというPOWERHOUSEのアルバム。非常に怪しい商品ではあるが、収録されているHuntedはその後Music For Nation盤のINSPIRATIONのボーナスディスクに「15歳時にレコーディングした曲」として収録されているのと同じ。イングヴェイのマネージメントも「許可なくリリースされたブートレグ同然の商品」と言ってるので限りなくグレーな商品ではあるが、中身に関しては間違いなく本物である。

イングヴェイの15歳当時といえば学校の廊下をバイクで走るというスクールウォーズのオープニングのようなエピソードをかまして退学するとかそういう生活だったらしいが、それでも母親はイングヴェイの音楽的才能を尊重し、音楽三昧の生活を許していたらしい。バイクで廊下を走るのは音楽的才能の尊重とはまたちょっと違う気がしないでもないが、とにかくそんな恵まれた環境でひたすらギタープレイに没頭していたようだ。

ではそんな問題児が当時どのような音楽を作っていたのかということだが、さすが天才と言わざるを得ない音楽だ。おばあちゃんちの2trackのレコーディング機材で録音したらしいこのアルバムで、すでに独特のネオクラシカルメタルとしてかなりのレベルを達成している。1曲目のVoodoo NightsのリフはODYSSEY収録のRising Forceのリフだし、後にMotherless Childで使われるパーツも組み込まれているなど、その後のイングヴェイの名曲の源泉が随所にちりばめられている。アマチュア時代の曲の中でも名曲の誉れ高いMerlin's Castleはこの時点ですでにほぼ完成。Rising Forceのキメパートもすでに組み込まれている。曲名に関しては、正しいかどうかは微妙。Last JourneyとViking Battle(Suite)はトラック分けされて2曲として収録されているが、この2曲でSuite Opus:3とする可能性もある。実際マルセル・ヤコブがリリースしたBIRTH OF THE SUN、イングヴェイがリリースしたTHE GENESISでは1曲扱いだ。

テクニックはまだまだ未完成で所謂「速弾き」を感じさせるところは少ない。まだまだ「リッチー・ブラックモア的なファストプレイ」で、ハーモニック・マイナーよりもペンタトニックを多用している印象。ただ、チョーキングやヴィヴラートはすでに一級品で、15歳が演奏してるとはなかなか想像し得ない。リズム隊は誰が演奏しているかは不明でドラムに関しては稚拙と思われる箇所は多いが、音楽の雰囲気を損なうものではない。

恵まれているっつってもレコーディング機材はチープだっただろうし78年に自主制作した作品なわけで音質は劣悪。ただ、その劣悪さがまた独特のヘヴィネスや邪悪さの源にもなっていて、クラシックを基盤としたメタルというお行儀の良さではなく、北欧暗黒ドゥームメタルと言った趣がある。CANDLEMASSやKRUXのリーフ・エドリングと親友っつーのがこのヘンで納得できたりもする。後にODYSSEYに収録される美しい小曲Memories(このアルバムではLast Journey)のような曲もなぜか静かというよりも陰鬱な雰囲気が漂い、GOD SPEED YOU! BLACK EMPERORを想起させたりも。続くViking Battle(Suite)(後のKrakatau)のドゥームっぷりはかなりのもの。ちなみにこの曲20分もあります。トータルでは9曲で77分以上。長尺な曲が多い。

1978年すなわち昭和53年、ガンダムすらまだ放映されていない時代にスウェーデンでこんだけヘヴィなことをやっていたアーティストはそう多くはないはず。15歳という年齢もあいまってイングヴェイの言うとおり現地では「相当な変わり者」として見られていたんだろうなあと思う。ヴォーカルナシのインスト曲を9曲収録したこのアルバムは、天才イングヴェイ・マルムスティーンの貴重な黎明期を知ることができると資料であると同時に、スウェーデンのヘヴィロックのルーツとしても非常に価値のある作品である。

なーんてスウェーデンのヘヴィロックに詳しくないのに勝手にそっちに話を広げちゃいました!いやでもイングヴェイの歴代の作品の中でも一番ヘヴィなアルバムって感じがするよこれ。

投稿者 trouble : 20:11 | コメント (23)

2005年02月24日

Unleash The Fury / YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE

unleashthefury.jpg

Unleash The Fury / YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE

長文です。超長文。

どうも「イングヴェイはクラシックの影響を受けていて高尚だ!」とか「イングヴェイの魅力はクラシックに影響を受けた美しいメロディーだ!」とか言いたがる耳の腐った人が多いんですが、そういうこと言ってる奴は信用してはいけません。

イングヴェイの「クラシカル」っていうのにみんなどんだけ気品とかを感じてるかはわからんけど、俺が聞く限り彼のクラシックは本当の意味でのクラシック感覚というよりは、田舎の金持ちが「これがロレックスだべ!」「シャネルってのは高級なんだべ!」「本当の金持ちはゲージツを学ばないとな!」ってアピールしているようなのに近い気がするんだよね。いやイングヴェイは本気で好きなんだろうけどさ、その根っこにある人格的なとこにそういう下品さがあるというか。

とは言うものの、最初からイングヴェイが下品全開だったかというと、そういうわけでもない。20代の頃の彼の音楽には、中学生が権威に向かって自分の力を誇示しようとするような甘ったれたトゲトゲしさと、その裏側にある思春期的ナイーヴフィーリングが随分と表れていて、それが彼の音楽を北欧的ダークでアグレッシヴなヘヴィメタルの中に繊細な美しさを共存させるという「ネオクラシカルヘヴィメタル」たらしめていた。

今聞き返すと20代の頃の彼の作品は本当にナイーヴで彼自身の自己顕示欲と繊細なパーソナリティが強く表れており、ROCKIN' ON的な視点でも十分に語ることができるだけの文系ロック感覚があったと思う。もちろんそれに留まらないメタメタしいアグレッションも満載だったけど。

しかし、この若者ならではのナイーヴさを維持し続けるのは難しい。イングヴェイもそのナイーヴさを美しさと繊細に昇華させていたのは20代の間までだった。30歳を過ぎた頃からそのナイーヴさは大人の世界で身に着けた傲慢さに置き換わり、それと同時にナイーヴな感性から生み出されていた美しさと繊細さは傲慢さから放出される下品な雰囲気と野太いグルーヴに取って代わった。

よくイングヴェイの作品を語る際、交通事故前と交通事故後、もしくはポリドール時代とそれ以降というように分けることがあるが、俺にとってイングヴェイが変わったのは30歳っていうのが大きな分岐点になっていると思う。最近の作品に否定的な人は押しなべてそのナイーヴだった頃のイングヴェイを求めているんだと思うけど、それはぶっちゃけ40の男に「なんでお前ヒゲ生えてんだよ生やすんじゃねーよ!」と難癖付けてるようなもんで、何をいまさらって感じ。

で、何が言いたいかっていうとイングヴェイの魅力っていうのは下品なカッコよさにあるわけであって、クラシカルなフィーリングってのは後付けの装飾にすぎないってこと。

今回のアルバムは、イングヴェイ自身が初めてそのことを自覚して表現したような感じがある。今までは自分でもどっちが自分の魅力か決めあぐねているところがあって、そのせいで最近の作品にはやや中途半端なもどかしさを感じるものが多かった。特にATTACK!!はそんな気がする。でもUNLEASH THE FURYには「俺の魅力はこういうヘヴィで下品なグルーヴだろ!これがロックなんだよバーカ」っつーステートメントが込められているような感じがして個人的には痛快だった。

もちろん歌メロの弱さに関してはいかんともしがたいところがあるしギターソロのコード進行っつーか展開はマンネリを超えて「そういう展開にすると決めてある」ぐらいワンパターン。音質だって例によって悪い。このアルバム聴いたあとに聴く他のバンドのどのアルバムもまず「うわ、音いいな!」って思うぐらいだし。しかし、今回はそういうのってどうでもよくね?って思えるだけの勢いとエネルギーがあると思うんだよね。リフの音はファットで、ドラムもバタバタやかましい。ベースは大人げないし、手癖だらけであってもギターソロはピロピロっていうのとはまた違う鋭さで切り込んでくる。音の汚さも今回は別にマイナスに作用してないと思う。曲数にしてはやっぱ省けばもっと締まっただろうなとは思うしCrown Of Thorns, Beauty & A Beast, Revelation, The Huntあたりはカットしてもよかったかもしれない。まあもっといらないのはクラシックのカヴァーなんだけど、この恒例のカヴァーがあるとイングヴェイの大阪のブランドおばはんみたいな下品さが強調されるから残しておこう。でも、意外と冗長さを感じなくね?

今までのイングヴェイの作品で「曲がいい」って思えた瞬間は何度もあったけど、「カッコイイ」って思えたアルバムはあまりない。そういう意味では完成度はともかくとしてイングヴェイ史上もっともカッコイイアルバムが今作であると思う。Locked & Loaded, Cracking The Whip(ノイズがかっちょいい)あたりの「美しいメロよりもカッコよさが重要だ!」みたいなのはかなりいい。まあそれだけにこのヴォーカルのショボさがもったいないんだけどさ。全曲イングヴェイがダミ声で歌ったほうが良かったんじゃねーかな。

あとね、そもそもSEVENTH SIGN以降のイングヴェイは「ネオクラシカル」ではないわけで、だからこそ「ネオクラシカル」という視点でフォロワーの完成度と比較するのは90年代初期ならまだしも、今となっては完全に無意味だと思うんだわ。イングヴェイは「クラシカル」という装飾を用いての「ロック」作品を作る中で、そのフォロワーたちとはまったく違う次元のカッコよさを追求しているわけだし今回そのカッコよさという点ではかなり実現できていると思う。音楽に機能性しか求めない人にはそういう感覚はおそらく理解できないと思うけど。まあ表面的なキレイキレイ音楽を聴きたいならひたすらママに選んでもらって聞いてればいいと思うし、どっちにしてもお上品な音楽で表現できる美なんて麻生久美子のアゴのラインの美しさと比べたらウンコみたいなもんだ。こうなったら音楽に何を求めようが人の勝手だみたいな意見は無視だぜ!いぇーい!

そういうわけで、俺はこのアルバム好き。オタクっぽいフレーズの積み重ねでオタク向けの機能性オンリーのネオクラしか作れないフォロワーたちの中でイングヴェイのように「かっこいい」と思える音楽を作ったアーティストなんかいないわけで、そもそもの格の違いをまざまざと見せ付けたアルバムだと思うよ。いや別にフォロワーと比べてる人に対してこうして理論武装したりするなんてのも無意味なんだけどさ。理論武装しなきゃ聞けないアルバムでもなくて、単純に熱くて下品でかっこいいアルバム。

と、書いておきながら実はこのUnleash The Furyがそこまで素晴らしい作品だとも思ってないんだけど、どうも「最近のイングヴェイのかっこいいとこ」をきちんと理解してる人って少ないよなあ、というもどかしさで長々と書いてきたわけです。ここ数年思ってたんだけど、イングヴェイが比較される対象はザック・ワイルドとかMORTORHEADのレミーみたいなキャラのアーティストだと思うんだけどどうだろう。音楽性はまったく違うが表現しようとしていたロックのカッコよさについてはこの両者のベクトルに近いものがあると思うんだよな。

ということで発売後3日間聞きまくっている最中の感想でした。今後また変わったら「YNGWIE」カテゴリーでちょろちょろ追加していこうと思います。

投稿者 trouble : 18:16 | コメント (58) | トラックバック