2003年08月12日

ALBUMS

というわけで2002年ベスト、アルバム編。

1. IRONY IS A DEAD SCENE / THE DILLINGER ESCAPE PLAN
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アルバムじゃなくてEPなんすけど、そんな細かいことはいいじゃないですか。超絶技巧を操るケオティックハードコア軍団D.E.P.と鬼才マイク・パットンという最強タッグが生み出したのは、予想通りの音でありながら期待を大きく上回るという離れ業。ここしばらく「徹底的に歌」か、「徹底的に音」のどちらかの作品が多かったパットンが久々にその両方を操っているのも嬉しい。

ケオティックな激音がぶちまけられているにも関わらず、すべてが緻密にコントロールされていてしかも衝動の強さも残っている。その上パットンが持ち込んだキャッチーさも全開という奇跡の音楽。

2. BOUNCE / BON JOVI
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前作の方向性そのままと言っても差し支えないけれど、もう少し深みのある曲が増えたのが嬉しい。前作にはIT’S MY LIFE1曲だった緊張感のあるHRチューンが今回はUNDIVIDED、EVERYDAY、BOUNCEと3曲に増え、またそのどれもがらしさ満点のかっこいい曲に仕上がっているところが嬉しい。
脇を固めるTHE DISTANCE、ALL ABOUT LOVIN’ YOUと言った楽曲も素晴らしい。

3. START HERE / GLORIA RECORD
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美しく、エモーショナル。そういう陳腐な言葉をどうしても使ってしまう。RADIOHEADが失ってしまったというか捨ててしまったナイーヴな青臭さを「それこそが僕たちの目指すところ」と言わんばかりに前面に押し出し、俺がつい普段かっこつけて隠してしまっている心の弱いところを刺激してくる。

4. A SONG FOR DEAF / QUEENS OF THE STONE AGE
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ブチ切れているのに、知的で妖しく、どこかポップ。そんな摩訶不思議なサウンドを操るQOTSAの躍進作。ジョシュのまったりヴォーカルとニックの絶叫にマーク・ラネガンの死神ヴォーカルまで加わり不穏なこと極まりない。デイヴ・グロールがたたくドッカンドッカンしたドラムも硬質でかっこよく、アレンジを含めて「こうやったらかっこいいだろうな」というのがすべて見事に機能しちゃったという感じ。

一般リスナーにも訴えるわかりやすさと未だ漂うアンダーグラウンドな臭いがドンピシャリって感じ。

5.SHADOWLAND / NOCTURNAL RITES
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ひたすらクサイメロのクサメタルを追求していた彼らが前作からアグレッションも前面に押し出し始めた。そしてそれが素晴らしい形で結実したのがこのアルバム。メロデス通過組ならではのアグレッションがたまらなくかっこいい。かといってメロディーが減退したわけではなく、ジョニー・リングヴィストという素晴らしいヴォーカルによって「クサい」を「勇壮」というレベルにまで昇華しているところも見事。
メタルのカッコよさを痛烈に叩きつける、ストロングで硬派なアルバム。

6. THE MUSIC / THE MUSIC
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初来日のライブがあまりにもかっこよすぎて果たしてアルバムはどうなっちゃうのかしら、と思っていたんだけれどそんな心配をふっとばす内容。プロデューサーの力量もあるんだろうけどここまでのものを作ってくるとは驚いた・・・ってそれまでシングルリリースされたキラーチューンも再収録されてるんだから当たり前なんだけど、それ以外のTHE DANCE、GETAWAY等もライブと同等にかっこよくて。

また、こいつらのすごいところはTHE PEOPLE等の一撃必殺ダンスチューンだけじゃなくてHUMANのような徐々に盛り上がるサイケなムードの曲もすーんげーかっこよく決めてしまうところ。エフェクターオタクになってプログレ化しちゃったりするんじゃないの?みたいな心配半分期待半分の可能性を感じさせてくれるんだもん。すごいよ。

7. SECOND YOU SLEEP / SAYBIA
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ノルウェーのCOLDPLAYという売り文句でひっそりとリリースされていたアルバム。こちらは北欧だけあってあっさりしているようでその実はものすごく叙情的。もうなんでそんなコテコテに来ちゃうんだよ!泣けてくるじゃねえか!と言いたくなるほどの泣きの世界。ツボに来たよ。ジャケット通りのしっとりと美しい世界が繰り広げられます。
こんな繊細な歌なのに、ヴォーカルは結構デヴだというところもポイント高い。

8. BY THE WAY / RED HOT CHILI PEPPERS
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最初に聞いたときは「枯れたというよりは単にポップになったなあ」と感じてあまりいい印象じゃなかったんですが、フジロックでライブを観てからもう激ハマり。素晴らしいアルバムだよ。今更俺が言わなくても皆さんご存知でしょうけど。人間として成長した彼らの感じていること、表現したいことが生々しく、ストレートに伝わってくる。

9. TOMORROW / SR-71
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逞しく骨太になり、ファンの間では賛否両論となったが、俺は全面的に支持。勿論骨太になったといってもそのポップセンスやいい曲を生み出していこうという真摯な姿勢にはまったく変化がなく、誠実さを感じることができる。
ヘヴィな体験を通して音楽を通じて「表現すること」に目覚めた感のある一枚。

10. BY THE GRACE OF GOD / THE HELLACOPTERS
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前作よりもさらに哀メロを押し出してきた彼らの最高傑作。メロディーを強調しながらもそこに描かれる世界観は男臭く、酒臭い。決して自分たちを見失うことなく、少しずつ成長してきたということがわかる素晴らしいアルバム。

11. TIME REQUIEM / TIME REQUIEM
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なんていうか、夢を見せてくれた作品とでもいいましょうか。マジで、アタマ3曲までは「うおー!やっぱまだまだこういう音楽にも可能性はあるぜ!!」と本気で興奮しました。でも、やはりそこはリチャード・アンダーソン。4曲目がCRYING meets VOODOO NIGHTSだったりするところに始まり(いやその前にも小ネタはあるんだけどね)、7曲目でついに「究極のパッチワークソング」を完成させてしまう。なんていうか、日本酒片手に「結局さ、素直に信じてた俺が馬鹿だったんだよね・・・」と涙ぐみながら微笑んでしまいたくなるあの感じです。

というのは冗談半分。本当は「パクリがあってもかっこいいから許す!!」みたいに思ってます。一撃必殺の歌メロとスリリングなインストのせめぎ合い。キーボードが多すぎる?多いからかっこいいんじゃん。バランス取れたロックなんてかっこよくないぜ。歪んでて、偏ってるからこそいいの。

その他
他にもいいアルバムはたくさんあって、「入り口になれるアルバム」を作ってくれたFINCHTHE USEDGLASSJAWといったスクリーモ勢、アンドレ・マトスならではの土着的なアレンジと深みを感じさせるクラシック・オーケストラアレンジで、本家ANGRAに引けをとらない素晴らしい作品をたたきつけてきてくれたSHAMAN、やっぱメタルは最高だぜ!と血を滾らしてくれたDREAM EVIL、FIREWIND等の欧州メタル勢。でかい泥ダンゴみたいなずっしりとしたへヴィネスをぶつけてくれたRAGING SPEEDHORN、アメリカンロックの素晴らしさを再確認させてくれたMATHBOX TWENTYBLISS 66DISHWALLA。UKならではの繊細さと美しさが染みたHAVENCOLDPLAY

その一方でやや期待はずれだったのがENUFF Z’NUFF、SPEEDEALER、AUDIOSLAVE、YNGWIE、WEEZER、SPIRITUAL BEGGERS。特にズナフとイングヴェイは鬼のように期待していただけにガッカリ度大きかった。まあ人生そんなうまくいかないってことですね。

投稿者 trouble : 14:17 | コメント (1) | トラックバック

SONGS

んでもって楽曲編。

1. UNDIVIDED / BON JOVI
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BOUNCEのオープニングを飾る久々のハードロックチューン。テロへの悲しみは1番の歌詞まで。そこから立ち上がって団結していくんだ、という力強いアンセム。こういう「アメリカ的」なのは日本に住んでいると正直共感しにくいし、最近のジョンの「俺たちがアメリカの声だ」という姿勢にはちょっと抵抗を覚えたりもするんだけれど、この曲でのジョンの昔と変わらぬ熱さには単純にこちらも熱くなってしまう。

バンドメンバーが全員40歳を超えているのに昔に通ずる熱いハードロックチューンをかっこよく決めてくれたってのもうれしかったな。

2. BY THE WAY / RED HOT CHILI PEPPERS
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大傑作のビデオクリップは何度見ても飽きなかったなあ。ビデオだけじゃなくて、曲ももちろん素晴らしい。マッチョなはっちゃけっぷりとジョンの持ち込んだハーモニーが・・・とかそういう細かいことを言うのはヤボだね。
ライブでこの曲が始まった時の大歓声は忘れられない。

3. BURIED MYSELF ALIVE / THE USED
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「産業スクリーモ」の先鋒となった感のあるTHE USEDのこの曲、何度も聞いていくうちにズッポリはまりました。こういう歌で何かを伝えようという一生懸命な気持ちを感じることができる曲に弱いんだよなあ。美しいメロディラインとそこにからみつくゲロまみれの激情。ライブでの大合唱も感動的でした。

4. MY WORLD / SR-71
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最初はブッチ・ウォーカーとの共作であるGOODBYEを気に入っていたんですが、気がついたらこの曲を大好きになってました。(おそらく)フラれた女に未練タラタラで相手の男に嫉妬する、みたいなヘタレソングだと思うんですが、ヘタレだからこそこちらの胸を打つ歌を作れる。非の打ち所がない人間にすばらしい音楽なんて作れるわけがない。スケールが大きいサビが感動的。3分8秒ぐらいからのフェイクがすげー好き。

5. SHADOWLAND / NOCTURNAL RITES
形式的にはオーセンティックな欧州メタル。しかしながらメロデス通過後ならではのアグレッションと欧州のメタルバンドならではの勇壮なメロディーと疾走感のバランスがドンピシャ。いやーかっちょいい曲っすよこれは。メタラー必聴。

6. SOMEWHERE IN THE MIDDLE / DISHWALLA
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比較的ゆったりとした曲調が多く、ひたすら美しいメロディーを追求したかのような素晴らしい楽曲が多数含まれていたOPALINEの中でも特に気に入ってる曲を。前作は、佳曲は多いけど1ST収録のCOUNTING BLUE CARSのような必殺チューンがなかった記憶があるんだけれど、今回は必殺チューンの連続。中でもソフトで優しいながらもその中に一本芯が通っているJR RICHARDSの歌声が、ほんのり切なくも希望的なメロディーを歌い上げるこの曲にやられた。

7. CLOUD CONNECTED / IN FLAMES
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MELODIC DEATH METALというくくりから一歩抜け出してさらなる飛躍を遂げたアルバムの中でも特にメロデス臭の薄い曲。リフの醸し出すグルーヴ感、そして冷たい宇宙空間を想起させるキーボードの味付けがたまりません。

8. BLURRY / PUDDLE OF MADD
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フレッド・ダースト絡みであることとか、他の曲がまさに形骸化したグランジであったことなどからかなり斜にかまえていたんですけれど、この曲はいいです。何度聞いても。イントロから名曲の予感を感じさせるし。この曲は、というかこいつらは本質的にグランジの精神性だとかとは無縁な、グランジ通過後のメインストリームロックで、単純にいい歌を追求してるんだよね。斜に構えてフンッとか鼻で笑ってた僕が馬鹿でした。いい曲だよ。心にしみる。カラオケで歌ってて気持ちいい曲。

9. SECOND YOU SLEEP / SAYBIA
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他にも彼らのアルバムにはキラーチューンが入ってるんですが、最初にハマったこの曲を。ノルウェーというイメージどおりの美しく、どこか物悲しい素敵な曲。一人で夜の森を彷徨っているような深緑の雰囲気。
I STAY TO WATCH YOU FADE AWAY. I DREAM OF YOU TONIGHT. TOMORROW YOU’LL BE GONEっていう歌詞が、サウンドを伴うとなんとなく神秘的に響いてくる。

10. EVERYDAY / BON JOVI
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ジョン・ボン・ジョヴィ曰く、「モンスターだと思った」ということだったが、実際はコケ気味だったBOUNCEからの1STシングル。「昔の俺じゃない。これからは毎日を生きていくぜ」といういかにもジョンらしいポジティヴ全開ソング。俺もこの曲は大好きです。一緒に歌っているととにかく高揚してくる。IT’S MY LIFEより好き。

ジョンの書く詞は、以前は激情的なラヴソングや貧しいながらも頑張っていく二人をストーリーテリングっぽく描くものが中心だったと思うんだけど、KEEP THE FAITH以降「一人の人間としてどう生きるか」というテーマが増えてきた。I BELIEVEしかり、IT’S MY LIFEしかり。この曲もそんな「一人の男としての自分を見つめる機会の増えたジョン」だからこその臭く前向きな名曲なのです。えーびーでーい。

11. SAY SOMETHING / HAVEN
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もう弱いんです、こういうのにカノン進行のベタベタなラヴソング。これから音楽に深みが伴ってくるのかはわからないけれど、少なくともこの1曲で彼らは俺にとって重要なバンドになった。アンニュイな声で切々と歌うイギリスっぽいナヨっとした美しいメロディー。それだけでいいんです。臭くて速ければいいんだ、っていうメロスピファンの気持ちが俺にはすごくよくわかります。

12. YOU KNOW YOU’RE RIGHT / NIRVANA
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特にバンドに思い入れがあったわけでもないのに色んなとこでこれでもかと組まれる特集に煽られて買ってしまったベスト盤。したらいいのな、この曲が。かなりクサめのメロディーラインが俺にもわかりやすくヒット。

番外:GRAND OPUS / TIME REQUIEM
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ミュージシャン・アーティストとしての表現欲求、エゴを徹底的に廃し、究極までに機能性を追及したネオクラシカルチューン。機能性を追及する際には、俺ごときの卑小なアイディアなぞ挟んではいかん!飽くまで先人の築き上げたものの中から素晴らしいところを抽出し、それを結合すれば良いのだ。そんな控えめなリチャード・アンダーソンの悲痛な叫びが聞こえてくるかのようなこの曲。涙無しには聴くことができないのです。

ってか実際オリジナリティとか、ネタとかそういうのをまったく無視すればYNGWIEのWIELD MY SWORDよりもはるかにかっこよかったりする。

他に印象に残った曲は、
THE WATCHER / NOCTURNAL RITES
NOW YOUR TURN / KELLY SIMONZ’S BLIND FAITH
WORLD’S END SUPERNOVA / くるり
SILENT SIGH / BADLY DRAWN BOY
LITTLE BY LITTLE / OASIS
WATCHING THE TOWER OF SKIES / TIME REQUIEM
MILAGROS CHARM / TIME REQUIEM
VENICE QUEEN / RED HOT CHILI PEPPERS

等々。今年はスカパーにも加入したのでいろんなジャンルの音楽が耳に入るようになってきたんですけど、何気にMISSY ELLIOTのWORK IT OUTとJUSTIN TIMBERLAKEの曲、アギレラのDIRRTYはやけにアタマに残ってます。TIME REQUIEMの2曲は、両方ともベスト10に入れたいぐらい好きなんだけど、なんか入れるのが悔しくて。いや悔しくないけど番外に入れたから外しちゃった。

こうしてみると、俺はやっぱり「歌」が好きなんだなあ、と思う。「かっこよかった曲」よりも「しみた曲」を選んでしまう。

投稿者 trouble : 14:13 | コメント (0) | トラックバック

PLAYERS

BEST ARTIST / DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON
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YNGWIEが不甲斐ない作品を残してしまったので
この座は文句ナシにパットン先生とデリンジャーに。
奇跡のコラボレーションだよなあ。またやってくんないかなあ。

BEST VOCALIST / MIKE PATTON
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これも文句なし。THE DILLINGER ESCAPE PLANで聞かせてくれた
凄絶な歌唱はヴォーカリストパットンの魅力がすべて凝縮されている
と言っても過言ではないべや。すんごい人です、ほんとに。

BEST GUITARIST / YNGWIE MALMSTEEN
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アルバムはいまいちだったけれど、ライブでの彼のプレイは
過去最高だったと思う。コンチェルト以降、ピッキングタッチが明らかに
それまでよりも正確かつ柔らかくなり、飛翔感が増したように感じる。
また、アコースティックでのペキペキした音も、ギターが変わったからか
だいぶ気にならなくなり、ミスタッチも無くなった。ライブでの彼はやはり
そこらへんのプレイヤーとはまったく違った次元にいるかっこよいロックギタリストだった。

BEST BASSIST / FLEA
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レッチリがエモーショナルになってもフリーの存在感は変わらない。
勿論メロウな曲ならではのベース良さもあるんだけど、やっぱライブでの
ブリバリした存在感、わけの分からないMCは孤高。

BEST DRUMMER / ANDERS JOHANSSON
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HAMMERFALLのシングルに収録されたRISING FORCEでのプレイが
あまりにもかっこよすぎて。JENS JOHANSSONも参加したそのカヴァーは、
ドラムとキーボードだけが突出して凄まじい。ファンなら一聴の義務あり。
写真は1993年。若すぎる。

BEST KEYBOARDIST / RICHARD ANDERSSON
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色んな意味で神。

投稿者 trouble : 14:11 | コメント (20) | トラックバック