2008年04月29日

KAADA / PATTON

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Live / KAADA / PATTON

ノルウェー出身の音楽家KAADAとPATTONのコラボレーションアルバムROMANCESリリース後にデンマークのロスキルデフェスで1度だけ行われたライブ映像を収録したライブDVD。

ROMANCESの音楽性は、簡単に言えばメロトロンやテルミンのような音色によって奏でられるもの悲しい旋律にパットンがハミングや歌を乗せて、不気味でありながらも美しい独特のノスタルジーを感じさせる映画音楽のような雰囲気がナイスでしたが、このDVDはその音楽の雰囲気に合わせて全編モノクロ映像で統一され、非常にお芸術性の高い映像作品になっております。

バンドメンバーはスタイリッシュなスーツに身を固め、パットンもその雰囲気を壊さぬダンディ・パットンを演じているので彼のキレキレっぷりを期待すると多分途中で爆睡してしまいますが、アルバムで聞けた独特の世界を楽しめた人なら、浮遊感や幻想感にライブならではの生々しさやダイナミズムも加わったこの作品はたまらんと思います。FAITH NO MORE以降、パットンのライブ映像はTOMAHAWKのライブが雑誌の付録DVDに入ってた以外なかったからなあ。

FANTOMASやMR.BUNGLEは高品質なブート映像が出回っているからいいとして、2002年のDILLINGER ESCAPE PLANNとのコラボライブとか、FANTOMASMELVINS BIG BANDのライブ映像とかはきちんと撮影してないのかしら。やっぱ激しい音楽やってるパットンの映像作品も観たい。

そうそう、FANTOMASやTOMAHAWKの日本盤をリリースしてくれていたDAYMARE RECORDがこのたび正式にIPECAC RECORDSと契約したらしく、今後のIPECAC作品はDAYMAREが扱ってくれるらしい。このDVDも日本盤が出るらしいので興味ある人は是非買ってみてくらさい。んでもってTOMAHAWKでもなんでもいいから来日してけろ。

リハーサル映像も入ってて、一応英語字幕も付いてるんだけど、あんまよくわからん。日本盤は日本語字幕つくんかな。こういう人たちが音楽について話す内容はきちんと聞いてみたい。

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2007年06月21日

Anonymous / TOMAHAWK

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Anonymous / TOMAHAWK

4年ぶりの3作目。1st2ndはJESUS LIZARDとFAITH NO MOREを髣髴とさせるストレートな作風だったけど、この3rdはかなり毛色が違う。トライバルなドラムと呪術的なヴォーカルが印象的で、こないだ出たBATTLESの新作に近い雰囲気を感じたりも。ハードロックとしては、かなりとっつきにくい感じ。サウンドの方向性から今作はドラムのジョン・ステイニアーが主導権を握って作られたのかと思いきや、さにあらず。ギターのデュエイン・デニソンの描いたコンセプトによるものらしい。

今回のアルバムコンセプトについてはライナーで平野和祥タンがライナーで書いてくれております。保護政策下にある居留地で演奏されているネイティヴ・アメリカンの音楽が陳腐なブルースやカントリー、ニューエイジ風なものばかりであることに違和感を感じたデニソンが、「もっとアグレッシヴで不気味なもんじゃねーのか」とリサーチしてみたところ出会った文献の記述を元にして再構築したネイティヴ・アメリカンの音楽集と言うのがこのアルバムのコンセプト。それらはどれも作者不詳の民俗音楽ということで、アルバムタイトルがANONYMOUSとなっているらしい。なるほろ。

1stこそ「地味だな」っつー感想が先行しちゃったけどその地味な雰囲気だからこそ織り込むことができる不穏な感覚、不気味さこそがTOMAHAWKの持ち味であるってことを感じさせてくれた2ndの出来が素晴らしかった。そのTOMAHAWK流ハードロックサウンドでさらに素晴らしいものを、って期待しちゃってたもんで、最初にこのアルバムを聴いたときはちょっぴりガッカリしちゃったんだけど、鳴らされる音そのものだけでなくその音が響いている空間に満ちる不穏で不気味な空気は紛れもなくTOMAHAWK。その空気がネイティブ・アメリカンの民俗音楽というコンセプトと見事にマッチしてると思う。バンドの音自体は音圧がすごいとかすんげーラウドってわけじゃないんだけど、鳴らされた音によって生まれる空気の密度が濃い。

っつーことで作品自体は存在感があって素晴らしいと思うんだけど、でもやっぱ不穏なハードロックで歌うパットンを堪能できる作品も聴きたくもあったりして。俺にとっては肝心のマイク・パットンの存在感がなんつーか薄い感じがするし、もうちっとスカっとわかりやすいカタルシスも欲しいなあ、と思ってしまうわけで。まあパットンはそういう俺みたいなベタロックファンの期待っつーのの数歩先を常にいっちゃう人だからしょうがねーか。

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2007年03月24日

Six Litanies for Heliogabalus / JOHN ZORN

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Six Litanies for Heliogabalus / JOHN ZORN

ジョン・ゾーン指揮のもとにマイク・パットン、トレヴァー・ダン、ジョーイ・バロンという強烈トリオが凄まじい演奏するプロジェクトの第三弾。リリースペースはえー。

前作はロックオペラってことだったけど今回は全6曲、カリギュラとかネロと言った悪名高いローマ皇帝みたいなのの酒宴とかそういうのにインスパイアされたらしい。よくわからんけど・・・と思っていたらそうではないみたい。mixiのジョン・ゾーンコミュで「ヘリオガバルスの妖美な倒錯世界を、音で再現したのがこの
"Six Litanies for Heliogabalus"」という書き込みをしてくれた人がいて、いやはや納得。いやこのヘリオガバルスってのはまさにジョン・ゾーンがこの面子を集めてアルバムを作るにふさわしいだけの変態皇帝だ。詳しくはコチラで。付加情報で音楽の価値が高まるとかそういうわけではないけれど、このテーマを踏まえた上で聞くこの作品はさらに凄みを増して聞こえるのは確か。

そんな稀代の変態皇帝をテーマにして作られている今回、ジェイミー・サフト(オルガン)、イクエ・モリ(Electronics)の二人と女性コーラス3人が参加し、さらに3作目にしてついにジョン・ゾーン御大もサックスで狂乱の宴を盛り上げております。

基本的にはMOONCHILDやASTRONOMEの音楽性と大きく変化があるわけじゃなくて歪んだベースが縦横無尽なドラムと合間ってバキバキとうなりをあげ(トレヴァーのベースは作を重ねるごとにカッコよさを増している気がする)、パットンがビキュバギャー!アイッ!グベアー!だのブチュッ、ウゴガァァ!ボソボソ・・・ンフフフ・・・と意味不明な言語を駆使する中で阿鼻叫喚の世界が作り上げられていくんだけど、そのゲスト陣の存在のおかげで今回はかなりサウンドの色彩が豊かになっていて、スリルも増している感じ。パットンの絶叫三昧はさすがに3作続くと飽きてきたなあと思ったりもするけど女性コーラスが入ってくると急に冷たく厳かな空気になったり、イクエ・モリのキュラキュラした電子音やオルガンが入ってくることでサウンドに奥行きができたりと、前2作とはまた違う感覚で聴くことができる。オペラだった前作よりもある意味シアトリカルな印象。

そういう意味でこれまでの作品の中では一番カラフルだし起伏もあるしでとっつきやすい作品かもしれない。まさに大量の薔薇の花びらで客を窒息死させたというエピソードがある宴会のイメージにふさわしい美しく、豪奢で、イカれた音楽。時折切り込んでくるジョンのサックスもかっちょいいし。2曲目でのパットンとの掛け合いは生で観たらさぞ強烈だろうなあ。

ただ、4曲目はパットンのヴォカリゼーションが8分強にわたって繰り広げられるんですが、これって別にココでやらんでもいいんじゃないかっつー気もします。

いやでもこの制作ペースの速さもさることながら、どれもそれなりに違った魅力を打ち出しているところがこのプロジェクトの凄いところだ。頼むから来日して欲しい。もちろんこのメンツで。

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2007年02月08日

John Zorn's ASTRONOME

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John Zorn's ASTRONOME

昨年5月にリリースされたMoonchildに続くジョン・ゾーン指揮のもとにマイク・パットン、トレヴァー・ダン、ジョーイ・バロンという強烈トリオが凄まじい演奏するプロジェクトの第二弾。去年速攻で買ってたんだけど書くの忘れてました。

相変わらずアートワーク凝りまくりでジョン・ゾーン自身による解説もついている。けど英語だからよくわからんのですが、そもそもこのプロジェクトのきっかけはニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活躍する劇作家・演出家であるリチャード・フォアマンに「オペラを書いてくれ」と言われたところからスタートしたらしい。オペラというものはすでに200年前に役目を終えた表現だとジョンは考えていたみたいだけど、フォアマンのためならば一般的なオペラとは違う形のオペラを作ってみようと思ったみたい。それがついにAstronomeという作品となって完成したわけだ。

そんなわけでこの作品は3幕、計7シーンから構成されるポケットオペラらしい。内容はよくわからんが、アレハンドロ・ホドロフスキーとかアントナン・アルトー、ヴァレーゼなんかにインスパイアされてるのかな?いやブックレットに名前が出てきてるだけなんでわからんすけど。アレハンドロ・ホドロフスキーとは映画エル・トポの監督であり、アントナン・アルトーとは前衛芸術・思想に大きな影響を与えた人らしい。ジョン・ゾーンっぽいよね、このへんのチョイス、と知ったかぶってみる。

で、肝心の音なんですが、不穏なトレヴァーのベースに縦横無尽なバロンのドラム、阿鼻叫喚のパットンヴォイスが凄まじいエネルギーでぶつかり、爆発すると言うMoonchildとほぼ同じ聴感なんだけど、Astronomeはもっとフリーな形式の中でぶつかり合っているような印象。フリーとは言っても実際は細かくコンポーズされた上で各人が暴れているんだと思うんだけど、普通に聞いてたらそういうのはわからん。

ただ、やはり集中して聴くとその激烈さと共に展開というかストーリー運びに引き込まれて楽しんでいる自分に気づいたりもするので、その辺は確かにMoonchildのような「曲の集まりとしてのアルバム」とは違う「オペラ」なところだと思う。ゾーンが言うように、ヘッドフォンをして暗い部屋の中で集中して聞くことによって逆に視覚的にもすげー体験ができそうな作品だ。

どちらにせよゾーン節満点ではあるので前作を気に入った人なら今回もその強烈さにやられると思います。是非是非。去年のベストには第一弾のインパクトが大きかったということでMoonchildを入れたけど、この作品も内容的にはまた違った凄みがある。

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2006年08月28日

ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男 

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観てまいりました。ストーンズにはまったく興味ないしブライアン・ジョーンズに関しては「ウィレム・デフォーに似てる人」ぐらいしか知らなかったんだけども。

ブライアンに使用人(家の建築?)として雇われたフランク・ソログッドが死に際に告白した内容をベースに当時のマネージャーであるトム・キーロックに協力してもらってブライアン・ジョーンズの死とそのロックライフを映画化したといった感じ。

前半は映画関係なく眠くてまともに観れてなかったんですが、ストーンズのかっこよさとか破天荒さが描かれているわけでもブライアンの音楽的貢献が描かれていたり彼の存在が美化されているわけでもなく、徹頭徹尾ブライアンのダメ人間っぷりが描かれています。インドにバンドで行ったときにキース・リチャーズと女のことでトラブって一人インドに置いてけぼりにされたエピソードとか本当なのかしら。まあ要は麻薬と女です。アニタ役のモネット・メイザーのロケッティなおっぱいがいい感じでした。

ストーンズの音楽よりも印象に残ったのは、劇中に流れるBOB DYLANのBalladd Of A Thin Man。おまえの知らないところで何かが起こってるんだぞ、Mr.Jones、という歌詞を聴いてボブ・ディランの大ファンだった当時のブライアンはかなり情緒不安定になったといういわくつきの曲なんですが、この曲がミックとキースに解雇を言い渡されるという重要な場面ですげー効果的に使われてました。かっちょよかった。

ちなみに、というかここからが本題。アヴァンギャルドな音楽といえばのTzadikレーベルからリリースされているRadical Jewish Caltureシリーズ、最新作はJamie Saftによるボブ・ディランのカバー集なんですが、このBallad Of A Thin Manも収録されています。で、俺がわざわざそれを書くと言うことでもうバレてるかもしれないですが、この曲でヴォーカルをとっているのがマイク・パットンなんです。

どこでも叫んでないし、ワキャワキャ言ってないし、最初っから最後までマジ歌唱。PEEPING TOMを聞いて「普通に歌われるだけだとなんか物足りない」と思ったのが嘘のよう。音節の一つ一つの「音」にこだわりを感じる低音での語るような歌唱、凄まじいドラマ性を感じさせる歌い上げパートなど、ファンなら一聴の価値あり。1曲だけなんだけどね、パットンが歌ってるのは。

他の曲は原曲知らんのでなんとも言えないんですがJamie Saftのピアノ、Greg Cohenのコントラバス、Ben Perowskyのドラムスによるジャズアレンジでディランナンバーが演奏されてます。

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Trouble / The Jamie Saft Trio Plays Bob Dylan

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2006年05月30日

PEEPING TOM

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Peeping Tom / PEEPING TOM

パットンに「最も完成させるのが困難だった」と言わしめたPEEPING TOMのアルバムがついにリリース。今作では「自分なりのポップアルバムを目指した」という言葉どおり、歌モノアルバムです。まずはCDの装丁の豪華さにウットリ。アメリカで一社しかこのケースを作ることはできなかったとのことだけど、通常のCDの価格でこんなに手の込んだものを作りこんでくれるのは嬉しい限り。プロジェクト名どおり、「覗き」をテーマにしたこのアートワークは相変わらずパットン作品ならではのオシャレさだと思う。でも日本盤にはついてると期待した歌詞・対訳がついてないのね。どんなこと歌ってるかすげー知りたかった。どっかに歌詞載ってないかな。

バックトラックはゲストの人選が反映されてかヒップホップ色が強く、全体的な雰囲気としてはGENERAL PATTON VS, X-ECUTIONER、LOVAGEあたりをミックスした感じ。ALBUM OF THE YEAR的な雰囲気もあるけれど、そこまでの業の深さは感じないし、あまり毒はない。

Mojo、 Don't Even Tripあたりで聞ける起伏の激しいメロディーは最近表に出てこなかったポップ・メロディーメイカー・パットンの大きな魅力。ここ数年の彼の作品を聴いているとキャッチーな歌メロの曲は沢山あったけど、FAITH NO MORE時代に聞けたようなドラマティックなメロディーはTOMAHAWKのCpat. Midnightで一瞬披露したにすぎず(あえて一瞬にとどめていたところが最高にカッコよかったんだけど)、このアルバムで久々にこういうメロを歌うパットンに再会できた喜びは大きい。

ただ、こういう歌を熱唱するパットンの声を聴いて思うのは、確かに彼の活動は多岐に渡っているものの、その声の密度というか強さみたいのはやはりロック声なんだなあ、ということ。こういうヒップホップ・エレクトロニカな感触のバックトラックで歌って魅力的かというと、魅力がないわけじゃないけどそこまですごいとも思わないというか、正直なところ期待したほどいいと思えなかったりもする。曲も前述の2曲やNorah Jonesに下品なこと歌わせるために作ったの?って感じのSuckerあたりは魅力的だけど他の曲にはあまりハマれず。2001年の頃からプロジェクトを開始して、ちょっと長い時間かかりすぎたってのが音楽の鮮度を落としてしまったのかもしれない。このアルバムとこないだのMOONCHILDを足したような音楽だったらすげーよかったかも。

いやそれでもすげー好きだけどさ。もうちっと好きな曲以外のも聞き込んでみます。

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2006年05月25日

Songs Without Words / MOONCHILD

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Songs Without Words / MOONCHILD

発売直前になるまで全然知らなかったんですが、ミクシィで「ジョン・ゾーンの新バンドにマイク・パットンが参加しているらしい」という情報があり、速攻でアマゾンで予約したはいいけど発売日を過ぎ、出荷予定日を過ぎてもなんの音沙汰もなくなってしまってました。そうこうしてるうちに日本に入ってきたと教えてもらったのでソッコー買ってきた。

ジョン・ゾーン曰く"combining the hypnotic intensity of ritual(composiotion) with the spontaneity of magick(improvisation) in a modern musical format(rock) "とのこと。いやよくわかんねーんだけど。とにかくロックのフォーマットでインプロ主体の強烈なのかまします、ってことだよね。多分。違うかな。国家の主権の発動としての戦争と個人レベルの殺人や生き物を殺すことを同じ論理的枠組みで語っているかのような海辺のカフカはどうなの、ということかなξ( *´▽`)ξ♪从゜▽゜*从

で、参加メンバーはヴォーカルにマイク・パットン、ベースにトレヴァー・ダン、そしてドラムにジョーイ・バロン。あれ?ジョン・ゾーンは?って感じですけどジョンは演奏には参加してないです。ジョンはconceive, composed, arranged & conductedだってさ。この3人のインプロスキル、演奏力を熟知したジョン・ゾーンが彼らを使って頭の中の音楽を具現化したロックプロジェクトがこのMOONCHILDということになるのでしょうか。

そんなことをシタリ顔して書いてる俺なんですが、全然ジョン・ゾーンのアルバムは持ってないしミックス担当のビル・ラズウェルもほとんど知らなかったりするのです。えへへ!

という前説的なことはともかく、音楽的には確かにロック色は強い。ギターもなければジョン・ゾーンのサックスもないけれど、この3人で十分MOONCHILD流の猛烈なロックンロールが展開されている。トレヴァーのぶっといベース(FANTOMASでもMr. BUNGLEでもトレヴァーのベースってあんま気にしたことないんだけど、この人のフレージングって結構独特というか、こうやって聴いてみるとトレヴァーらしさってのが結構あるんだね)と変拍子だらけのドラム。そしてパットンのヴォーカルはいつになく攻撃的。もちろん叫んでいるだけじゃなくていつものように不気味なハミングや得体の知れない音を出してはいるんだけど、ココ最近のパットン作品の中ではもっとも邪悪でユーモア色の薄いヴォカリゼーションになってる気がする。4曲目の声とかちょーかっこいいっす。

で、飽くまでパットンファンとしての感想になってしまうんですが、音楽全体にはあまりパットン色は強くないように思う。パットン特有のキャッチーさも少なくてジョン・ゾーン色が強いんだけど、その分最近のパットン参加作品にはないヨコシマな感じが強く、緊張感もすごい。その瞬間、3人がジョンの脳、筋肉、思考にチャンネルを合わせ、3人のテンションが極限まで高められている感じ。いやかっちょいいです。これ生で観たらすげー迫力だろうなあ、観たいなあ・・・。

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2005年04月13日

Suspended Animation / FANTOMAS

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Suspended Animation / FANTOMAS

現在パットンが手がけているプロジェクト・バンドで一番実体が伴っている感じがするのがこのFANTOMASだと思う。「外科手術のサウンドトラック」というコンセプトだった前作はやや上級パットンで、わけわからんながらも聞き手の集中力を極限まで高めて作品を聞かせてしまうという点ではすごかったがやはり正直「すいませんわかりません」とも思ってしまっただけに、今作こそ!という期待が高まってしまう。

パットンが大好きな奈良美智にコンタクトしてFANTOMASのアルバムを贈ったら奈良が気に入ってくれてアルバムのアートワークを手がけることになり、1枚だけかと思ったら30枚も作品を描いてくれたもんだからそれならってことで「30枚の絵を30日のカレンダー」っていうコンセプトにして作られた作品。その作品を生かすためにアートワークは日めくりカレンダー風の豪華すぎる装丁。奈良美智って普通に「なんかこわかわいいー」って女の子ウケもしそうな感じで正直パットンとはどうなんだろ?と思ったんだけどこうしてきちんと作品を見るとやっぱドロドロと不気味なものも渦巻いてる感じがしてFANTOMASサウンドと違和感無く溶け合ってる気もしてきた。

今回のサウンドについて、パットンは「休日のための音楽っていうイメージ」と言ってるけどそこはFANTOMAS。休日がこんなイメージになっちゃったら大変だよ!っつー激烈サウンドと奇声が飛び交う相変わらずのサウンドになっております。奈良美智の絵のイメージからか、子ども番組で聴かれるようなキュートなファンシーサウンドのサンプルを多用しているけどもちろんそれをそのままかわいい雰囲気の演出のために使うわけはなく、どれも途中でテープの回転を遅くしたり早めたりエフェクトをかけたりすることによって、どこか歪んだムードを醸し出させる小道具に使われている。ラストも皮肉の効いたセリフで終わっているし。

全体的なサウンドは1stで提示されたFANTOMASサウンドの延長上だけど、1stよりもややポップでキャッチーになってるような気がする。もちろんポップでキャッチーっつってもマイク・パットンのFANTOMASですからBACKSTREET BOYSみたいになったとかそんなわけはなく、例によって「ダイナミズム」とかそういう言葉では形容しきれないようなふり幅の大きさで地獄と桃源郷を行ったり来たり。

厳粛な図書館と急性期の統合失調症患者が運転する超高性能猛スピードブルドーザーが合体したと思ったら思い出したように夜中にロマンチックなラヴレターを書き始めたり、という雰囲気とか
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な雰囲気で鼻から脳みそが出てるようなパートがあったかと思えば一転してアタマから湯気を出して怒り狂うジャイアンにバラバラに破壊されていくドラえもんを目の当たりにするかのような場面展開の連続だとか、とにかく形容の方法はいろいろあると思うけど、まあそんな感じ。

と、どうしてもFANTOMASについて語るときはそのサウンドの奇怪さや変態さを強調するに終始してしまうんですが、今回はその変態さに呆気にとられる前に素直にかっこいい!と思えるパートが満載で、IQ300の変態とかそういうエクスキューズなしでも単純に「猛烈にかっこい激烈音楽」として楽しめる気がする。そういう意味ではやっぱキャッチーになったんだと思う。最初に前作がああだったからこそ今作には期待してしまうって書いたけど、その期待は「こういうのを頼むぜ」という具体的なことじゃなくて、「とにかく今度は俺にもすごさが伝わるわかりやすいのをお願いします」みたいな抽象的な期待だった。で、この作品がどうだったかっていうと、まさにその期待通り。いやもちろん初めてこれ聴いたらその変態性にまず圧倒されて「なんじゃこりゃー」になってたかもしれないんだけど、今までの3枚のアルバムとの連続性の中でこのサウンドを叩きつけられると、もう見事にこちらの感覚的期待通り。かっこよい。

パットンパットン言ってるけれどこのカッコよさはバゾのアングラ臭プンプンのギター、デイヴ・ロンバードじゃなきゃ叩けないっつー高速激重ドラミング、トレヴァーならではの・・・えーとベースはよくわからんのでなんも思いつかないんだけどとにかくこの3人だからこそのものってことが体にしっかり響いてくるのもFANTOMASというバンドである必然性を強く感じさせてくれて嬉しい限り。パットンのアタマの中で隅々まで構築された音楽にそれぞれの持ち味をこれでもかと加えて初めてこういう奇跡的にカッコイイ音楽になってるわけでさ。いやあやっぱマイク・パットンはすげーっすよ。

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2005年04月04日

GENERAL PATTON VS. THE X-ECUTIONERS

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General Patton vs. the X-Ecutioners

我等がマイク・パットンとターンテーブル集団X-ECUTIONERSのコラボレート作品。ラーゼルをはじめ、ブラック・ミュージックとのコラボレーションにも果敢に挑んでいくパットンの創作意欲はすげえ。

ということで聞く前から絶賛体制になってたりするんだけど、正直なこと書いていいですか。俺こういうターンテーブルを主役とする音楽をあまり聞いてないのでぶっちゃけ「どこがすごいか」ってのがよくわかんなかったりするんですよね。パットンてターンテーブルじゃないけどサンプリングは多用するじゃん?で、スクラッチだとか音の切り替え(と言うのかしら)を駆使してるところはまあターンテーブルでプレイしてるんだってわかるんだけども、「これはパットンのサンプル?それともターンテーブルのプレイ?」とわかんないとこの方が多いんすよね。

まあそういう「やってることのすごさがわかるかわからないか」と作品を聞いて「好きと思うか嫌いと思うか」というのはまた別の話ですからね。いや技術を否定するわけじゃなくて、ドラムソロで「これをやってたからすごい」と言われてもそれを聞いて楽しいかどうかはまた別のとこだよね、ってこと。

コラボレーションを「パットン将軍対処刑人」の戦争に見立て、アートワークまで凝りに凝ったこのアルバムは、パットン作品の中では非常に聞きやすい作品です。X-ECUTIONERSの作り出すキャッチーなバックトラックにパットンならではのキャッチーなヴォカリゼーションとわかりやすい歌が乗る。音楽性は一言で言ってしまうとヒップホップ色の強い作風。こういう音楽でのパットンを聞くと、彼の歌唱・ヴォカリゼーションは変態的に叫ぶとか人声とは思えない音をひねり出すとかそういうこと以前に非常にリズミックでパーカッシヴな魅力にあふれていてそこからキャッチーさみたいのが出てるんだなあということに気づかされる。

もちろんわかりやすいと言っても彼の作品ですから全編わかりやすいわけでもなく、パットンらしいアヴァンギャル度の高い展開と「この得体の知れない音はきっとパットンが出してる音なんだろうな・・・」というサンプル(声?)を組み合わせたトラックだとかもあり、そこらへんに関しては"HIP HOP FANTOMAS"といった雰囲気でもあったりするんだけど、そこらへんも含めてすべてリズミックであり、難解な雰囲気は皆無。

そしてこれが重要だと思うんですが、「不穏な雰囲気」とか「イカれた感じ」がパットン作品にしてはかなり薄め。飽くまで「彼の作品にしては」という注釈がつきますが、あまり変態な感じがないです。なんか最近の彼へのオーヴァーグラウンドでの評価の高まりやTHE WIRE誌の写真1.2.3.4.5.6.7あたりを見ると、やけにオシャレに取り上げられているようでなんとなく違和感を感じたりするし、この作品の(しつこいようだけどあくまでも彼にしては、な)健康的な雰囲気についてもやや物足りなさも感じたりするんだけど、珍しく気軽に気持ちよく聞ける作品だったりもしてこれはこれで好き。

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2005年03月02日

Irony Is A Dead Scene / THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON (2002)

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Irony Is a Dead Scene / THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON

現在のアメリカケオティックハードコアシーンを代表するバンド(知ったかぶり)の4曲入りEPです。

見てください。アーティスト名に燦然と輝く”with MIKE PATTON”という文字列。きゃー!!そうなのです、このEPにはあたしのヒーローであるマイク・パットンが参加してるんでございます。もうたまりません。音のほうもまさにそのアーティスト名が示すとおり、「D.E.P.にパットンが参加した」というよりは「D.E.P.とマイク・パットンのコラボレート」とも言うべきガチンコ勝負。

D.E.P.によってIQのめっちゃ高い狂人が暴走を始めたかのようなカオティックでありながら知性的という矛盾した激音がぶちまけられれば、その凄まじさと対等どころかさらに上を行くブチ切れっぷりと変態性を示しながらもどこかダンディで堂々としているというこれまた矛盾した双極性の魅力を持つパットンがそのカオスも、狂人の暴走をも手のひらの上でコントロールする。この両者の激突によって生まれる筆舌に尽くしがたいカッコよさ。こりゃもうすげーよ。たまんねー!IPECACから出てるパットン作品ってどこか音がこもっていると言うか鋭角性よりも丸みと重みを感じる音作りなんだけど、このEPにはしっかりとその鋭角性もあるのが嬉しい。

APHEX TWINのCome To Daddyのカヴァーは思っていたよりも普通だったけど他の曲に関しては文句なし。文句なしとか言うレベルじゃなくて期待していた以上のものをかましてくれました。Mr. BUNGLEでやってたケチャっぽいこともあればFANTOMASっぽい声とサウンドエフェクト、TOMAHAWKのような妖しい雰囲気もあり。他アーティストとのコラボながら、パットンのこれまでの活動の集大成的でもあり。勿論それだけに留まらず、ここまでカッコイイ作品になってしいるのはTHE DILLINGER ESCAPE PLANというそれを受け止めるだけではなく、1+1を3にも4にもしてしまう素晴らしい器があるから。

正直言えばD.E.P.の他の作品はすげーと思いつつもハマりきれなかったりするんですが、この作品だけは例外。楽曲そのものはD.E.P.スタイルで彼等の他の作品と特に大きな違いがあるわけじゃないんだけど、他の作品との差を決定的にしてるのはこの作品のキャッチーさ。歌唱がとか絶叫がとかいう以前にこの「わかりやすさ」こそがパットンの最大の貢献だと思う。「変態的」でありながら同時に「キャッチーに仕上げちゃう」っていうのがパットンの本当の凄さだし、そのパットンの個性を最大に活かす事ができたコラボレーションとしてホントこの作品は奇跡的にすげえ。すげーばっか言っててアホみたいですが、ほんとすげーのよ。たった一つの欠点は、4曲しかないってことぐらい。

3曲どれも甲乙付けがたいほど好きなんですけどPig Latinでの「ピンガッ!!山田!!ピンガッ!!山田!!ピンガッ!!ジャバダグボゲバドガ!!」ってのがたまらなく好き。

歴代パットン参加作品の中で一番俺がすげーと思う作品はこのEPです。FAITH NO MOREであればANGEL DUST、FANTOMASであればFANTOMASMELVINS、Mr.BUNGLEならCALIFORNIA、とそれぞれオススメはあるけれど、そういうバンドごとの枠を取っ払って「マイク・パットン」で最初に聞くのであれば、このEPを聞いて欲しい。すげーから、ほんと。

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2005年02月27日

Mit Gas / TOMAHAWK (2003)

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Mit Gas / TOMAHAWK

マイク・パットンは2000年代前半、Mr. BUNGLE、FANTOMAS、TOMAHAWKと3つのプロジェクトで継続的に活動していたんだけど、しっかりと3つのバンドの色というものがあって、きちんと「それぞれのバンドならでは」の魅力を備えた納得のいく作品を作ってくれているところ。他にも色々参加しているのに決して器用貧乏になってないんだよね。そのあふれ出る創作意欲をそれぞれのプロジェクトに参加しているメンバーならではの個性とぶつけつつ(ここ重要)素晴らしい作品をリリースし続ける。いやーもう天才としか言いようが無いっていうか、けなすところが見つかりません。彼が世に出たFAITH NO MOREのTHE REAL THINGからこうしてずーっとリアルタイムで活動を追ってこれたことに感謝です。

炭酸ガス、というタイトルが付けられたこの2ndアルバムも1stと基本的な方向性というか、こういう音楽形態を用いてどのような風景を描き出そうとしているかという点に置いては前作と大きな変化はない。パットン作品にしてはストレートなハードロックだが、パットン以外のメンツが元JESUS LIZARDのDuane Denison、元MELVINSのKevin Rutmanis、元HELMETのJohn Stanierという一癖も二癖もあるメンツによって構成されていることからも伺えるように相変わらずどこか不気味でよじれを感じる淀んだ空気が漂いまくっている。1stはDuane DenisonのギターによるJESUS LIZARDっぽさというのがパットンの魅力と同じぐらい表出していたと思うんだけど、今作にはそれに加えてダイナミズムというか緩急の起伏が新たに加わっている。キャッチーさという点ではやや落ちた感はあるが、スピード感のある曲や跳ねるリズムを使った曲、さらにはブレイクビーツ的なリズムアプローチを用いた曲もあったりしてスリリングな展開が増えた。

そんな今作で印象に残っているのはまず6曲目のCapt. Midnight。ブレイクビーツ的なリズムの上に妖しく浮遊するパットンのヴォーカルが乗るこの曲には、曲の真ん中に1パートだけシリアスで叙情的、エモーショナルな部分があるんだよね。ひとしきりそのパートが終わるとまた浮遊パートに戻り、後半またその印象的なパートが出てくるのかと思いきや唐突に曲が終わってしまう。物足りなくもあるんだけど、パットンに入れ込んでる人間としては「さすが」と思ってしまうあばたもえくぼ。

あともう1曲すごく好きな曲はラストのAktion F1413。繰り返されるリズムとクリーンなトーンで怪しいコードをストロークするギターの上にパットンがコンピューターヴォイスの如き怪しい語りと浮遊する歌を乗せる前半。一瞬フェイドアウトしたかと思わせたところですべてを歪ませた阿鼻叫喚の世界が爆発する。その曲が終わって10数秒待つと、怪しげなギターの上に隣の部屋の人のうめき声のような不気味なパットンの歌(声)が乗った曲が始まり、そのままアルバムが幕を閉じる。これこそパットニズムだよなあ、と思わず汗をかいてしまいます。

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Millennium Monsterwork / FANTOMAS & MELVINS BIGBAND (2002)

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Millennium Monsterwork / FANTOMAS & MELVINS BIG BAND

2000年の12月31日、サンフランシスコのSlim'sで収録されたライブアルバム。タイトルからもわかるかもしれないけどFANTOMASとMELVINSが一つのBIG BANDに融合し、それぞれの曲をプレイするというなんとも贅沢っつーか夢のようなイベント。と言いつつMELVINSはCRYBABYとビアフラメルヴィンズしかCDで持ってないんです。

そんなわけでMELVINSの曲がFANTOMASによってどう原曲の雰囲気に変化を加えられているのかとか全然わかんないんですが、とーにーかーくーかっちょよい!!音自体はパットンの好みなのかFANTOMASのアルバムと同じようなどこかこもった丸い音像で好き嫌いは分かれるかもしれないけど、ギター×2、ベース×2、ドラム×2で音の圧力は抜群。ドラムとベースが二人いるからなのかカチっとした感じはないんだけど、重い重い。
MELVINSの曲でのヴォーカルはバゾも歌ってるんだけどほとんどパットン。元の歌メロ以外にも絶叫とかヴォカリゼーションを入れたりするんだけどパットンが歌ったり合いの手みたいな絶叫が入れることでMELVINSの曲のキャッチー度が格段に上がってる気がする。いや元々Night GoatもThe Bitもキャッチーだとは思うんだけど元曲のカッコよさにさらなるフックが増えたって感じで。まあ細かいことはともかく、かっこいいんすよ。MELVINSの暗黒重量感とは逆方向に突き抜けた感じのパットン狂気が加わったせいで音楽そのものが双極のカッコよさを纏った感じ。

FANTOMASのなんたるかもわかるしMELVINSのかっこよさも同時に味わえてお得なので、FANTOMAS入門編として買ってみてもいいかもしんない。いや買え。

残念なのは収録時間が40分強しかないってとこ。おそらくライブは70分ぐらいだったと思うのでフル収録してほしかった。

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Tomahawk / TOMAHAWK (2001)

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Tomahawk / TOMAHAWK

Mr.BUNGLEとFANTOMASでアルバム制作&ツアーと精力的に活動していたパットンがさらに新バンドを結成。メンバーは元JESUS LIZARDのDuane Denison、元MELVINSのKevin Rutmanis、元HELMET、現BATTLESのJohn Stanierという豪華オルタナ人脈。

並行して活動していたBUNGLEとFANTOMASがある意味両極端で派手な音楽性だったのに対し、このTOMAHAWKは後期FAITH NO MOREにJESUS LIZARDテイストをまぶしたようなやや地味目な作風。しかしながら地味=つまらないというわけではなく、このオルタナティブ人脈の持ち味を存分に活かしたさすがの作品。楽曲的にはFAITH NOMORE以降のパットン作品の中ではもっとも普遍的なロック形態をとっているんですが、参加しているメンツがメンツですからなーんか不気味なムードが全編を通して感じられる。そしてそこにまぶされているマイク・パットンならではの性格の悪さっつーかシニカルさっつーかが痛快。うわあこんなの聞いてる俺もきっと性格悪いんだろうな!とか言う妙な選民意識が満たされます。

とか言いながら正直最初はやっぱその地味っぷりに肩透かしを食らったりもしたんだけど。聞き込むごとにその地味の隙間から沁み出す歪み汁に体と心が侵食されていくような、スルメスメルな作品です。

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Direcrotr's Cut / FANTOMAS (2001)

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The Director's Cut / FANTOMAS

1stアルバムがFANTOMASのスタイルってのはこういう感じだぜ!的な作品だったと思うんだけど、今作はそのFANTOMASスタイルでこんなこともできちゃうぜ!という応用編的アルバム。料理の材料は映画音楽。というわけで映画のサントラのカヴァー集です。

当初はフラッシュダンスのWhat A Feelingも収録予定だったみたいですが、早々に消えたみたい。うあー、聴きたかったなあー。まあそれはしょうがないとして、このアルバムはカヴァー集と言っても、上に書いたように完全にFANTOMASのスタイル。すげーよマジで。1曲目のGodfatherからして物悲しいメロディオン(だっけ?)から一気に爆発してパットンが絶叫し、バンドが疾走しまくるというまさにFANTOMAS。実のところ全部の曲を原曲と聞き比べているわけではないので偉そうな事は言えないのですが、すべてのアレンジはパットンによって手がけられており、1stで提示されていた静と動のコントラスト、不気味さを演出するモンドちっくなアレンジと音色、楽器の使い方、そして有無を言わさぬ圧倒的な爆発力、っていうFANTOMASスタイルのカッコ良さに、元曲に備わってる魅力的なメロディーってのが伴ってしまって筆舌に尽くし難い半端じゃないカッコ良さになってしまっています。原曲が持つ普遍的な魅力もあいまって普段アヴァンギャルドな音楽に慣れていない俺みたいなリスナーにもわかりやすくてグー。

今作ではパットンの「音」だけではなく「歌」も楽しめる。表現力の凄まじさは相変わらずで、その歌唱力にはほれぼれしてしまう。勿論絶叫や音なんかでもパットンらしさが存分に味わえるわけですが、やっぱ歌好きだもんな、俺。

俺のお気に入りは、静と動のコントラスト、そして物悲しいメロディーが素晴らしいThe Godfather、ヘヴィかつ神秘的なCape Fear、パットンの妖しい声とドラマチックなメロディー、展開が胸を打つRosemary's Baby、パットンの芝居がかった語りと機械的なサウンドがカッコ良いSpider Baby、来日公演でも披露されていたゴシックホラー的な荘厳さとFANTOMAS的な爆裂の対比がたまらないThe Omen、サビた有刺鉄線のようなバゾのギターとパットンの熱唱(?)にやられてしまうHenry:Portrait Of A Serial Killer、へんちくりんだけど妙な哀愁が漂っているVendetta等々。ラストのCharadeもパットンのヴォカリゼーションと歌、そしてドラマチックな演奏が楽しめるし、もうアルバム通して大好き。

聴きやすさと前衛的なカッコ良さが絶妙のブレンドで溶け合った逸品。

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California / Mr. BUNGLE (2000)

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California / Mr. BUNGLE

ああ、やられました。思いっきり「歌モノ」です。この裏切り方はさすがとしか言いようがないっす。この作品がリリースされる前に出たFANTOMASのアルバムが歌の一切ない声のパットン作品だったけにMr. BUNGLEでどんなのを出してくるかと思ってたんですが、まさかこんなわかりやすいアルバム作ってくるとは、とビックリ&脱力。

勿論「歌モノ」と言っても普通のバンドみたいになったわけでもないです。タイトル通りのウェストコーストビーチでのんびりトロピカルドリンクって感じのムードがそこかしこにあふれているんですが、急にメロディー展開が怪しい雰囲気全開になったり変態ムードで突っ走ったりMr.BUNGLEらしさが織り込まれてる。壮大なバラードも、エンディングはいきなり「ピーーーー!!!!」でぶつ切りになってたりするし、らしさは満載です。前作が前衛タイプでパットンも「歌」よりも「音」重視って感じだったのが今回はまったく逆。パットン朗々と唄いまくり。

各曲それぞれコンパクトな作りで、聴きやすすぎる事この上ナシ。Retrovertigo、Pink Cigaretteと言った曲はベタで美しいバラード。パットンの朗々と歌い上げるヴォーカルがたまりません。不穏なロカビリームードとBUNGLE風味が絶妙なNone Of Them Knew They Were Robotsは名曲だし、のってけサーフィンなトロピカルムードがやはりBUNGLE流にアレンジされているThe Air-Conditioned NightmareもBEACH BOYSだとかVENTURESのようなパートにMr. BUNGLEらしい不気味なコード進行、メロディーが絡むかっこいい曲。変態オリエンタルなムード&フラメンコ&サーフィンな感じが漂うArs Moriendi、ケチャを取り入れたチベット密教の寺院をほうふつとさせるGoodbye Soberdayあたりもたまりません。

今回も相変わらずありとあらゆる音楽性が織り込まれているんだけど、とにかくその展開がすごくわかりやすいってのが特徴。同時期にFANTOMASの1STを制作していて、そちらは歌よりも音重視、曲もぶつぎりな感じだっただけに、その反動でCALIFORNIAが歌モノ中心になったのかも。

前作の奥深さとは一転してわかりやすさを打ち出してきた今作もやはり名作。BUNGLEの最初はこれをオススメします。

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Fantomas / FANTOMAS (1999)

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Fantomas / FANTOMAS

1998年のポルトガルでのライブを最後に解散したFAITH NO MOREの後、すぐに行動を開始したマイク・パットン。早速新バンド結成!ということで報じられたのがFANTOMAS。で、メンバー観てビックリ。ギターにMELVINSのバズ!ベースにMr. BUNGLEのトレヴァー!極めつけがドラムに元SLAYERのデイヴ・ロンバード!この年の7月ぐらいからはライブ活動を始めており、ほぼこの1stを完全再現していたようです。このアルバムが発売されたのは1999年4月だから録音はツアーの後なのかな?ちなみに「MELVINSのバズ!」とか興奮したフリしましたが、当時は「カート・コバーンの師匠らしい」ってことぐらいしか知らない人でした。

また、このアルバムはパットン自身のレーベル、IPECAC RECORDINGSから発売された記念すべき第一作。パットンの活動の広がりに拍車がかかります。

買ってきてワクワクしながらCDプレイヤーで聞いたものの、最初は「やべ、わかんねーパットンモードだ」って思った。当時すでにパットンは2枚のソロアルバムをリリースしていたんですが、それらは俺にはアヴァンギャル度があまりに高く、わけわからんで終わってました。このアルバムも基本的に「曲」「歌」はないし、「きっついなこれ」って思ったの覚えてます。結局リリース後しばらく聞いたんだけどよくわからないまま奇跡的に実現した来日に2回足を運び、そこで始めてこのアルバムの音楽の凄さに打ちのめされてアルバムも聞けるようになったって感じ。

次から次へとめまぐるしく場面が変わり、アングラ臭漂う破壊的なパートと不穏で不気味でモンドなパートが入り乱れて展開する。パットンは「歌」ではなく、ソロアルバムに近いアプローチで飽くまで「音」を絞り出す。叫んだり囁いたりうめいたり泣いたりわめいたりスッ転んだり空飛んだり。

とにかく複雑でわけわからんこのアルバムの音楽は、パットン1人によって細かく緻密に組み立てられたものらしい。それをデイヴ、バゾ、トレヴァーのそれぞれの持ち味を存分に活かしながら形あるものに仕上げていったという感じ。パットンが音楽的には主導を握っていながらも、各人の個性が色濃く出ており、1STアルバムで「これがFANTOMASのスタイルだ」と言うのがはっきりと提示されている。

ライブでも全曲ではないものの完全再現に近い形で演奏していたが、アルバムと違ったのはその緊張感の凄まじさ。確かに緻密に組み立てられてはいるのかもしれないが、ライブではそれがまるで完全に即興であるかのような緊張感を持って演奏される。家でCD聴くのはつらいな、と思っていた俺もライブを観て目からウロコ、鼻からエラ呼吸。ヨダレを飛び散らし、目をむいて絶叫するパットンの鬼気迫るパフォーマンスと、ライブならではの緊張感で爆裂ドラムをたたき出すデイヴ。いやーカッコ良かったっす。

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Album Of The Year / FAITH NO MORE (1997)

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Album of the Year / FAITH NO MORE

前作完成後、トレイ・スプルアンスはツアーに出ることを拒み、後任にはもとDUHのディーン・メンタ(Dean Menta)が加入。しかし結局このディーンともツアーはこなしたが曲は一緒に書けず、またもや脱退。後任にジョン・ハドソン(John Hudson)を迎える。「俺たちはギタリストとは合わないのさ」と自嘲的なジョークをかましていた彼らだが、対ギタリストというだけではなく、バンド全体の雰囲気もあまり良くなかったようだ。パットンは後に他メンバーがこのアルバムのために書いてきた曲を「クソだと思った」と発言したりしており、すでにこのバンドから心が離れかけていたことが伺える。

というわけで悲しいことに彼らのラストアルバムになってしまった6th。上記したようにあまり良い環境で制作されたとは思えないが、内容自体は彼ららしいシニカルなアルバムタイトルに負けずに充実している。

例によって前作とは違った雰囲気を纏っており、前作にあったコア的な部分がやや減退、「粘り気のある美しいメロディー」を前面に押し出している感がある。動で狂気を発散し、カタルシスを得るのではなく、静謐な世界の中でだからこそ感じられる歪んだ狂気を表現した味わい深い曲が多い。

そのような「静の狂気」は、トリップホップ的なアプローチにパットンならではのポップで美しいメロ、エンディング間際のドラマチックな展開を織り込んだ名曲Stripsearch、絶望によって引き起こされた諦観にまとわりつく狂気のようなHelpless、洞窟の奥深くで蠢く醜く愚鈍な生物のようなPaths Of Glory、終末思想的なPristinaあたりで特に放出されている。これらの曲での静かな雰囲気から漏れ出る歪んだ空気は本当に凄まじい。

勿論それ以外の曲も魅力的。拡散性はやや薄れ、意外と統一された作風に感じるこのアルバムだが、やはり1曲1曲が深みを持っている。オープニングを飾るCollisionは静と動のコントラストがカッコよく、Last Cup Of Sorrow、Ashes To Ashesは粘りのある美しいメロディの裏にある彼等独特の不穏なムードが印象的な名曲だ。よじれたポップソングMouth To Mouthといった曲も独特の魅力を持っている。

FAITH NO MOREのアルバムで一番メロディアスなアルバム。一番地味なアルバムでもあるかもしれないけれど、その味わい深さには一片の翳りも見られない。やっぱり素晴らしいです。名盤(FNMは4th以降全部名盤)。買おう。

投稿者 trouble : 17:07 | コメント (3) | トラックバック

Disco Volante / Mr. BUNGLE

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Disco Volante / Mr. BUNGLE

FAITH NO MOREとしてツアーしているさなかにリリースされた2ndアルバム。どういうペースでレコーディングしたりしてたのかさっぱり知らないんだけど、ビッグなバンドに在籍しながらも自分の創作活動を自由奔放にくりひろげてくパットン先生です。ってこのアルバムを音楽的に引っ張ってるのはトレヴァー・ダン(ベース)とトレイ・スプルアンス(ギター)の二人みたい。このアルバム聴くと二人の凄さがわかるぜー。

1stと比べるとわかりやすいミクスチャーロック的な要素が減退して、ちょっとアヴァンギャルド系の色合いが強まった。パットンのヴォーカルも、歌だけではなく、さらに発展させて「声」を使った表現の面白さを追求しているような印象。気狂いサーカスで変態ピエロ大暴れ!な感じも随分弱まっているので一聴する限りやや地味な感じがするんだけど今作のキモはまさにその落ち着いた中に見せる狂気。もちろんはっちゃけてドコドコグジャグジャやってるとこも多いんだけど、それ以外のパートでの静かな中で感じられる不穏さ、不気味さ、緊張感みたいのが随分と魅力的。その不穏な予感どおり徐々に世界が崩壊していくような展開もあってすげーいい。1stはやんちゃな子どもっぽい雰囲気もあったんだけど今作はぐっと落ち着いたアダルトな変態ムード。正装の紳士にみえて、実はチャックが開いててチンポ出てますよ、みたいな。アコーディオンやキーボードのアナログな音色選びが妖しくモンドなムード醸し出していてかっこいい。

俺としては全パットン作品の中でもベスト3に入るほど好きな作品です。アヴァンギャルドで激しいパートからパットンの「つっつっつー」というムーディーなスキャット(?)、おじいちゃんの切ない歌、モンドなキーボードに乗った素っ頓狂なポップメロディーへと移り変わっていくCarry Stress In The Jaw、テクノとエキゾチックな民族音楽にBUNGLE的変態センスが加わったDesert Search For Techno Allah、ノスタルジックなアコーディオン、キーボードサウンドによるムーディーな曲にイタリア語の発音フェチにはたまらないツバが飛んできそうな語りが乗るViolenza Domesticaと言った曲が並ぶ前半は特にたまりません。後半は正直アヴァンギャル度がかなり高まってついていけないパートのほうが多かったりもするんですが、ラストに収録されたMerry Go Bye Byeはウェストコースト風のすっとぼけたポップソングから一転してデスメタルになるという超名曲。

アートワークもいいよね。名盤です。

投稿者 trouble : 16:34 | コメント (5) | トラックバック

King For A Day, Fool For A Lifetime / FAITH NO MORE (1995)

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King for a Day, Fool for a Lifetime / FAITH NO MORE

前作の制作中からこじれたジムと4人の仲はツアーに出た後も悪化の一途を辿る。ジムのギターソロを他メンバーが邪魔をしたり、完全に「いじめ」の状態である。そんな状態でよくツアーを終えることができたなという感じだが、結局ツアー終了後にジムは脱退。後任にMr. BUNGLEのトレイ・スプルアンスを迎え、アルバムの制作に入る。

「新作は醜さを伴ったヘヴィなものになる」という発売前のビルのインタビューでの発言通り、コンパクトにまとまってはいるがヘヴィかつアグレッシヴ。前作のゴージャスな部分はストレートでハードコア、シンプルでコンパクトに置き換えられた。キーボードも少ないが、これは当時ロディがプライベートで問題を抱えており、あまりアルバム制作に関われなかったと言うことも大きいらしい。ということで削られたもの無くなったものが多いアルバムである。しかしそれが魅力の減退という意味ではまったくないところがさすがである。

装飾が減ったということと相反して音楽的な拡散、深化(この2語が並列できるところがすごい)は留まるところを知らず、各曲がFAITH NO MORE印に彩られながらも独立した魅力を放っている。

Evidence, Caralho Voador, Take This Bottleのようなスローかつムーディーな曲をセクシーで怪しく不穏にカッコ良く決めたかと思えばDigging The Grave, The Gentle Art Of Making Enemies, Get Out, What A Dayのようなキャッチーなハードコアチューンで圧倒的なカタルシスを放出。Ricochetではコアっぽいんだけど叙情的…みたいな不思議な雰囲気が味わえるし、パットンが朗々と歌い上げるJust A Manではゴスペルコーラスまでもフューチャー。バリバリにホーンをフューチャーしたファンキーチューンStar A.D.もたまらなくカッコイイし、Cuckoo For Caca, Ugly In The MourningではKORN以降のヘヴィロックの雛形とも言える醜いヘヴィネスを体現している。実際Ugly In The Mourningの後半ではジョナサン・デイヴィス顔負けのあのうなりが聴けたりして。そしてこれらすべての楽曲のクォリティーは、当たり前のように、鬼のように、高い。

FAITH NO MOREはジム・マーティンが脱退して終わった、みたいなことを言う人がいるけれど、それは多分メタル的な要素が減退したことへの寂しさからそう感じてしまうんだろう。でも、メタル的要素はなくなっても、他のカッコ良さがどんどん曲にとりこまれていて、それはパワーダウンじゃなくて俺にとってはパワーアップなんだよね。これもやっぱすげーアルバム。

投稿者 trouble : 16:21 | コメント (4) | トラックバック

Angel Dust / FAITH NO MORE (1992)

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Angel Dust / FAITH NO MORE

大ヒットアルバムの次というプレッシャーがかかる中で制作された4thアルバム。Mr. BUNGLEもレコーディング・ツアーを行っていながらきちんとこちらも仕上げていたっていうのは驚き。現在のパットンのワーカホリックぶりはこの頃もしっかりと発揮されていたってことかな。

FAITH NO MOREファンの中ではこのアルバムを最高傑作とする人も多い。前作をはるかにしのぐ雑食ぶりを見せながらも、それぞれがFAITH NO MOREとしての個性を猛烈に主張しており、大ヒット作品の後のプレッシャーはまったく感じられない。ギターは相変わらずガリガリとしたリフを刻むことでメタルを主張しているが、音は小さく前作ほど前面に押し出されていない。これはジムと他の4人との確執が表面化してきたことの表れでもあり、それ故ヘヴィネスが足りないと感じたりもするのだが音楽的にこれだけの説得力を持つ作品を前にしてはそれも些末なことだ。ギターが後ろに下がった分今回はキーボードの装飾がシンフォニックと言えるほど増えており、十二分に補っている。メロディーはさらなる冴えをみせ、彼らの専売特許である「キャッチーなヨジレポップソング」のオンパレード。コンパクトにまとめあげられた各曲のクォリティーは本当に高い。捨て曲なし、素晴らしいアルバム。最高でーす。

Midlife Crisis, A Small Victoryのようなほんとにポップでキャッチーな曲もあればCaffeinのようにヘヴィーにうねる曲もあり、のんきで素っ頓狂な裏にとんでもない妄想がうずまいているようなRV、パットンがMr. BUNGLEから持ち込んだアヴァンギャルドな側面を打ち出したMalpractice, Kindergartenのような曲、さらにコモドアーズのカヴァーであるEasyと鬼のようにバラエティに富んでいながらもそれぞれが違和感なくこのアルバムに収まってしまっているというのがすごい。

豪華な遊園地のような華々しさと、どこかのネジ狂不ったような穏さが絶妙なバランスで。めっちゃカラフルで楽しいんだけど、その裏には猛烈な狂気と恐怖がうずまいている。マイクのヴォーカルは前作とは打って変わって現在に近いオペラティックな歌唱を随所に織り込むようになっており、耳あたりが大分良くなったし深みが格段に増した。勿論耳当たりがよくなったといってもそれはクリーンに歌い上げるところだけであり、シャウトに纏わりついている狂気はさらにダイレクトにこちらに伝わるようになった。また、Caffeinの中間部やRVで聞かれるような「低音を強調した声での語り部としての魅力」みたいのも出てきた。Mr. BUNGLEのアルバム制作に身に着けたことをこのアルバムでさらに発展させたと言った感じだ。

FAITH NO MOREで最初に買うならコレ。

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Mr. Bungle / Mr. BUNGLE (1991)

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Mr. Bungle / Mr. BUNGLE

はじめてこのアルバムを聴いた時、俺は「単なるFAITH NO MORE好きの高校生」で、他に聴くのはメタルばっかだったもんで「さっぱりわからん」って感じだった。それでも「マイクのバンドだから好きにならねば」という幼稚な忠誠心から、何度も一生懸命聞いた気がする。

FAITH NO MOREの加入時にマイクが要求したのが「MR.BUNGLEでの活動も認めること」という条件だったらしい。大ヒットアルバムTHE REAL THING後という非常に大切な時期でありながらこのサイドプロジェクト(マイクにとってはむしろこちらが本業?)がレコーディング、ツアーを行ったのはその契約によるところが大きいんだろうか。FNMで一躍大ブレイクしたパットンが在籍しているバンドと言う事でCDデビュー前から話題になっていたんだけどその音楽性については全然情報がないというか「デスメタル」って言われてた。でも聴いてみれば一聴瞭然、実際のところは全然デスメタルじゃない。それにしてもいくらFAITH NO MOREのヒットがあったとは言え、まだメジャーデビューして一枚しかアルバムを出してない若造のバンド、しかもジョン・ゾーンプロデュースっつー作品がメジャーレーベルからポイっと出てくるって凄いよね。もともとパットン以外のメンバーのポテンシャルというか、バンドとしてもかなり買われていたからなんだろうけど。

このアルバムを買った当時はさっぱりわからんかったと書いたけれど、その後のパットン作品に触れ、こちらも当時より音楽キャパシティが幾分広がった今聴くと、このアルバムはすっげーわかりやすいのな。まあわかりやすいとは言ってもジャケットの不気味なピエロオヤジから受ける印象そのままの、変態的な曲展開が多いのは確かで、血まみれで爆笑してみたり糞まみれで号泣してみたりというアグレッションもありながら、ジャジーというかムーディーにしっとりとチンポ丸出しで歌い上げたりレッチリよろしく陽性ファンクでヨダレ垂らしながら跳ねたりもする。そしてそれらのパートが目まぐるしく入れ替わるという気狂いサーカス。

しかしながら重要なのはその目まぐるしさも含めてどれもすごくキャッチーだということ。むちゃくちゃなんだけど全体を通してポップさまでを感じてしまう。とにかくありとあらゆる食材(中には食材でないものも)を鍋にぶち込み、すべてがドロドロに溶けてからではなくてどれも形を失わずゴロゴロしている状態でいきなり皿に盛られて「食え!」と脅されて食べてみたら意外とうまかった、そんな不思議な雰囲気。

パットン先生は高校時代からの気心の知れた変態ミュージシャンたちとリラックスかつ気合満点でこの作品に取り組んだのだろう。THE REAL THINGとは比べ物にならない幅広い声と歌唱を披露していて「パットンの魅力」が花開いたのはこの作品があったからこそと言っても過言ではないと思う。

投稿者 trouble : 15:36 | コメント (3) | トラックバック

The Real Thing / FAITH NO MORE (1989)

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The Real Thing / FAITH NO MORE

彼らが世界的規模でブレイクするきっかけとなった、そしてマイク・パットンのメジャーデビュー作となったFAITH NO MORE3rdアルバム。ジム・マーティンのガリガリとしたメタルギターが前面に押し出されていたり、サウンドプロダクションも硬質であったりすることなどから当時のメインストリームだったヘヴィメタルな感触が非常に強い。曲調も現在と比べてストレートなものが多く、メタル全盛であった80年代後半ならではの作品と言えるかもしれない。よってクロスオーヴァー/ミクスチャーブームの旗手と呼ばれるきっかけとなったこの作品であるが、現在ほどの雑食性は感じられない。しかし、1曲1曲のクォリティーは現在と同じく非常に高い。

ストレートに突っ走るFrom Out Of Nowhereで幕を開けるこのアルバムに収録されているラップとキャッチーなメロ、そしてメタル的な音像&曲展開が絶妙のマッチングを見せるEpicは大ヒットしただけあって今聴いても変わらずカッコイイ。ミクスチャー云々というよりもたまたまヴァースがラップ(今聴くとラップって感じじゃないんだけどね)なだけであってギターソロのドラマチックさ、その構成は完全にヘヴィメタルである。また、Surprise! You're Dead!でもまさにスラッシュメタルといえるギターリフが織り込まれており、ジム・マーティンの貢献度の大きさが印象的だ。

他にもZombie Eatersにおける悲哀と怒りのコントラストが素晴らしい展開を見せる曲や8分の大作であるタイトルトラックThe Real Thingなどにもメタル色が色濃く出ている。ドラマチックなWoodpecker From Marsもカッコよい。チョッパーベースとザクザクと刻まれるギター、硬質なマイク・ボーディンのリズムに中近東風のまか不思議なメロディーがのるインスト。

10曲目にはBLACK SABBATHのWar Pigsのカヴァーが収録されている。メンバー曰く「ジョークでやっただけ」とのことだが、お遊びではすまない気合である。この曲の肝はとにかくボーディンのドラム。かっこよい。

マイク・パットンのヴォーカルは現在と違ってあまりオペラティックな印象はなく、声質も今よりピッチが高く、鼻のつまる一歩手前のような不思議なひらべったい声…という印象だ。しかしその表現力はすでにその後の凄まじさの片鱗を見せている。スラッシーなSurprise! You're Deadにおいて思いっきりヘヴィーな歌唱を披露したかと思えば、一転Zombie Eatersのイントロにおける囁くような歌を聴かせている。INTRODUCE YOURSELFまでのF.N.M.も独特の魅力があったが彼の加入で一皮むけたような感じ。一気にメジャー感が出た。

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2005年01月26日

Romances / PATTON & KAADA

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Romances / PATTON & KAADA

マイク・パットンとノルウェー出身のキーボーディストKAADAのコラボ作品。パットンってのはアホみたいに活動領域が多岐に渡っていて中には(というか数多く)俺がついていけない作品もあったりするんですが、このKAADAとのアルバムはどちらかというと聴きやすい雰囲気。いやね、実はこれ買ってからしばらくはその淡々とした空気になじめずに放置してたんだよね。それを最近改めて聞き直したら手のひら返しにハマってしまった。

マイク・パットンが誰なのかってのはおいといて、まずこのKAADAさんというのはどちらの方なのかしらん、と思って調べてみると、どうやらノルウェーの権威ある映画祭において音楽賞を受賞するような方らしい。映画音楽ってぐらいだから派手なオーケストレーションなのかな、と思ったんだけどどうやらノスタルジックなムード漂う音楽を得意としているようだ。パットンもMR. BUNGLEやFANTOMASにおいて60年代の映画で聞けるような独特の雰囲気を持った妖しい音楽をやってたりもしたことだしその辺でつながったのかな。

そういう先入観で聴いてみるとこの作品はまさにドンピシャというか。KAADAによるノスタルジックな薫り漂うキーボードサウンド(それはアコーディオンであったりピアノであったりエレピであったり、テルミンであったり)の上にパットンの唸り、ファルセット、叫びなど相変わらずどこまでがサンプリングでどこまでが本当の声なのかわからなくなるような多様な「人の口から出る音」によって表現されるハミングや歌が乗る。その両者の鬩ぎ合いによって生まれるのは、やはりこの両者にしか生み出せないであろう独特な世界。ジャケ(相変わらずIPECACのパットン作品はジャケがすてき)では美しさと不気味さと物悲しさの共存した生き物クラゲを暗い色彩で描いているが、中身も本当にそういう雰囲気。

瞬間的にはほのぼのと暖かい空気だったりすることもあるんだけど、それはすぐ不穏なコード進行や奇怪な効果音にかき消され、色はひたすら暗く混濁したまま流れている。しっとりとムーディーでありながらひたすら不気味で、美しく、悲しく、おかしく、よじれた世界。

淡々としているようで、その実その瞬間瞬間における緊張感はただ事ではない。起伏が激しいわけじゃないんだけど、一度聴き始めてしまうと展開というかこの音楽世界の進み方から目が(耳が)離せなくなってしまう。そういう意味ではFANTOMASに大きく共通したスリルも感じられる。音圧的には高いものではないが、聴いてて感じる圧迫感がなんだか妙に強いんだよな。

ということでやっぱマイク・パットンは偉大でした(KAADAも!)。

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2005年01月15日

MIKE PATTON & RAHZEL

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おはよう!昨日のウタゲのおかげで今日は夕方に起きて夜に朝ごはんを食べた感じだよ!

で、届きました。ブートDVD。

MIKE PATTON & RAHZEL LIVE 10/03/04

そのタイトルの通り、マイク・パットンとラーゼルのコラボレーションライブ。マイク・パットンが誰なのかはここを読んでる人ならわかると思いますがっていうかわかれよこのやろう!って感じですが、ラーゼルってのはヒューマン・ビートボックス(っていうの?)の人で、BJORKのアルバムにも参加してる人。

ライブは完全にこの二人だけ。ラーゼルがビートを繰り出し、パットンがそこに人声による効果音(叫びであるとかうなりであるとか)を入れる、といった趣で、時折Men In Blackみたいなベタなヒット曲をパットンがラーゼルのビートに乗せる。綿密に準備されたものというよりは「こういうのやってみようぜー」みたいな感じで軽い雰囲気で、なんかのイベントの中で行われたライブっぽいんだけど、なかなかおもろいです。即興ならではの緊張感つーか。

このコラボライブはBJORKのアルバムでの共演がきっかけだと思うんだけど、ほんとパットンってどんどん人脈を広げていくからすげーよな(訂正:後でBJORKのメダラ制作ドキュメント観たらラーゼルの参加はパットンの紹介って言ってたから両者の交流は別にここで始まったわけではないらしい)。きちんとリリースされた作品以外にもこういうコラボライブ結構やってるし。トレーダー間ではそれなりにそういうコラボライブのブート音源もあるんだけど、正直把握しきれない。音源として残す予定のプロジェクトだけですらどんぐらいそれぞれ進行してるのかすら把握しにくくなってしまいましたが、やっぱ細かく追いたいなあ。正直なところ聴いて「これいいなあ!」って俺にもわかるのってなかなか無かったりもするんだけど、このラザールとのは映像を伴っていることもあって楽しめました。次はGeneral PATTON V.S. X-Ecutionersだね。これ楽しみ。パットン将軍ですからね。

どうでもいいけどFANTOMAS以来、パットンっていつも同じかっこだな・・・Tシャツの上にブルーで裏地がちょい紫っぽいやつ。なぜ?

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