2008年11月24日

Chinese Democracy / GUNS N' ROSES

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Chinese Democracy / GUNS N' ROSES

ドクターペッパーがあんなこと言ったから出たのかも。

アクセルしかいないってのはもう皆知ってるし、例えば落ちぶれたとは言えメタリカに対しての「でもどっかで期待してる」ってのともまたちょっと違うスタンスでみんな待ってたんじゃねーかと思う。GUNSっつーよりアクセルのソロアルバムでしょ?みたいな。まあそれでもどんな内容でリリースされたとしても「永遠にリリースされない方が良かったアルバム」と評されるのは間違いないんだけど、とりあえずなんとなく聴き始めてみたら、あれ?いいじゃん。

そりゃAPPETITE FOR DESTRUCTIONのような「ロックでメタルでパンク」なアルバムなはずもなく、衝動性を感じる音楽ではない。アクセル・ローズという稀代のヴォーカリストの歌を映えさせるために徹底的に作りこまれたゴージャスなアルバムなのでその時点でアウトという人も多いと思うけれど、ソングライター、ヴォーカリストとしてのアクセル・ローズを見た場合にきちんと17年分の成長を感じさせるし、17年間かけたことがなんとなく納得できてしまうぐらいに曲が練りこまれてる。「曲がいい」ってのともまた違うんだよな。ライブで聴く限りは特に可もなく不可もなく、な感じの曲ばっかだったはずなのに、徹底的に練りこむことで全曲聴き応えがあるものに仕立てあげてしまった感じ。 カッコいいギターリフで引っ張る曲はないし、原型はどれもつまんねー曲だったんだろうな。

ただ、俺にとっては別にそれはネガティブなことではなく、純粋にすげーなあって感じることができた。装飾は凄いのに、過多にはなっていないというか。MAROON 5 meets KING FOR A DAYの頃のFAITH NO MOREみたいな雰囲気の曲もあれば90年代中期のなんだか古臭いインダストリアル風味の曲もあり、もちろん壮大なピアノバラードもある。色んな方向にとっちらかってるのにアクセル・ローズというソングライターの色が見事なまでにそれらをまとめあげてしまっているというか。で、バケットヘッドのシュレッドでさえも見事にそこに組み込まれて浮くことがない。うーむ。

10代の頃に受けたような衝撃なんてここには存在しないし、GUNSの名の下に出るアルバムに期待するものとはまた違うけれど、アクセルの才能を期待して聞く分には十分納得できるアルバムだと思う。

投稿者 trouble : 21:03 | コメント (179)

2008年11月19日

Tinnitus Sanctus / EDGUY

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Tinnitus Sanctus / EDGUY

Rocket Ride~Avantasia路線をそのまま継承した感じで相変わらず良く出来てはいるんだけど、痒いところに手が届かないもどかしさ満点。リフで引っ張る80年代メタルってのをやりたいのはわかるし、1,2曲目はそのリフもなかなかかっちょいいのに曲の中でそのリフのグルーヴを発展できないところがトビアスの限界か。ベースがブゥーンってうなってくれたらカッコいいのに。

この手のアンセムっぽいミドルテンポの曲に関してはスキルはあるけどセンスが足りないって感じちゃうんだよなあ。

とか悪態をつきつつも、後半はちょい持ち直す。TRIXTERのOne In A Millionをちろっと思い出す(のは多分俺だけ)9-2-9とSpeedhovenは、アリだと思います。特に後者は長ったらしいけどなかなかいい。素直にこういう路線にしぼった方が得意なことを活かせると思うんだけどな。

DragonflyのCallin' you, Callin' youっつーとこ聴くとStars聞きたくなるし、そっからBONFIREのSword And Stoneを聞きたくなります。こういうのやりたいんだろうね。

っつーことでダメじゃないけど惜しい、そういう印象のアルバムでした。HELLFIRE CLUBは良かったけどその後はAVANTASIAも含めてそういう中途半端なアルバムばっか。

投稿者 trouble : 20:22 | コメント (214)

2008年11月10日

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN その2

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Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN

■ようやく新作PERPETUAL FLAMEについて、の作文
イングヴェイの秘密主義によって焦らしに焦らされた結果リリースされた新作。ジャケットからして期待通り。これを買うのが恥ずかしいとか言うやつは、まず鏡を見ろ。そしてそのツラで表を歩いている自分こそを恥じるべきだ。いやーほんと実際恥ずかしいジャケ。だからこそイングヴェイであり、だからこそいい(さらに繰り返されるイングヴェイファンの屈折自己肯定)。

何はともあれリッパーが加入したことがもっとも大きなトピック。ATTACK!!を除けばALCHEMY以降ヘヴィ志向を強めていたイングヴェイだが、マーク・ボールズ、ドゥギー・ホワイトともにその路線に合っていたとは言えない。イングヴェイもインタビューで「極端さ」をアピールし、新作はヘヴィでアグレッシヴであることを強調していたし(まあこれは毎回そうだが)、ようやくイングヴェイの志向に合ったヴォーカリストが加入してのヘヴィ志向ということで、かなり期待していた。

そしてもう1点今回大きく注目していたのがミキサーとしてROY Z.を起用したこと。ROB ROCKのアルバム等で現代的なヘヴィネスも取り入れた音作りをしていたので、それをイングヴェイのアルバムでもうまく取り入れてくれたらすげーカッコよくなるんじゃない!?と一人興奮しておりました。

が。当初7月発売予定とインフォメーションされたのに、いつまで経っても発売日が確定しない。ロイ・Zによってミックスされたカッコいい音質のアルバムを、イングヴェイが聞いて「なんだこりゃダメだ!」とまた自分でやり直してるせいで発売が遅れている、なんつーネタが冗談に感じないのがイングヴェイなので、不安は募るばかりでした。

まあ実際は身内で固めたマネージメントが日本を軽視してるからか情報が入ってこなかったってだけで、イングヴェイからしてみたら最初から10月発売の予定だったらしい。

まあ事情はともかく焦らしに焦らされて期待と不安が今までになく膨らんでいた今回のアルバムであったわけですが、もちろんやっぱりイングヴェイ全開で、今までと大きく変わったところはなし。ただ、リッパー加入は俺はアリだと思う。やっぱイントロでさ、「イャーーーー!!」ってシャウト入ると燃えるじゃないすか。それがあるだけで、ドゥギーよりリッパーでよかった、と思う。オープニングを飾るDeath Dealerはシャウトのインパクトがあってテンションが上がる曲だ。最近のアルバムからはなかなかライブの定番として生き残る曲が少ないが、この曲は今後もセットリストに残って欲しいって思えるカッコいい曲だ。サビの後niリッパーが低音で唸る”Death dealer is on the hunt!"がカッコいい。そういやWAR TO END ALL WARSのジャケってDeath Dealerっつータイトルだったよね。

リッパーの歌のスタイルってイングヴェイのメロを歌うのにはフィットしないかな、というのも実際感じるところで、すでに出回っているリッパー加入後のライブ音源を聴く限り過去の曲とリッパーの相性はあまり良くない。そういう意味ではかなり不安も大きかったんだけどこの曲の唸るパートのように、今のイングヴェイの志向とリッパーの(歌唱ではなく)攻撃的な声質は合ってると思う。シャウトがさらなる攻撃性を音楽に加えるのはもちろん、彼の中・低音域は非常に邪悪な雰囲気があるので、Live To Fight (Another Day)のようなドロップDチューニングのヘヴィな楽曲はリッパーだからこその魅力が出ていると思う。まあ全部が全部リッパー最高ってわけじゃなくてところどころ「やっぱあんま合ってないな」ってとこもあったりするんだけど、まあ俺はこれはこれでアリ。

ROY Z.効果はあまりないようだけど今回は低音、特にベースの音が硬質でカッコいい。これは今までのイングヴェイの作品にはあまりない質感で嬉しいところです。

ギタープレイについてはコンチェルトを境にまた一段階アップしたなと思ってたんだけど、今回もさすが。ただのピロピロではないと思う。Damnation Gameのソロ前半のように「圧倒しよう」というだけでなく「聴かせよう」というタッチが感じられたりするし、Priest Of The Unholyのエンディングはまさに圧巻。例によって「フンガー、ムハァ」、とフランケン&毒息全開のイングヴェイヴォーカルが聴ける(そして嬉しくない)Magic Cityでの泣き全開のプレイと並んでいつまでも聞いていたい素晴らしいギタープレイです。Magic Cityは後半の転調が新鮮。

Caprici Di Diablo~Lamentで使われてる6弦スウィープに関しては技術的には凄いのかもしれんが聴感的には特に印象に残らず。Disciples Of Hellの決めフレーズみたいだなって思ったぐらい。でも今回は全体的にソロパートのコード進行が多少練られていたり、バックの演奏にちょっとしたオカズが入ってたりもしてソロパートについては好印象。

っつーことで俺が書くと好き好き全開になってしまうんだけど、スローテンポな曲が続く後半の流れはちょっとキツい。あと、Death Dealer以外のスピードチューン2曲がどちらも悪くはないけどすごいいいってほどでもないっつー感じなので、そのあたりがこのアルバムの印象をちょっと物足りなくさせてるかもしれん。今回のアルバムはアタマ4曲のファスト→ノリのいい曲→ヘヴィ→ポップって並びがMAGNUM OPUSに似てなかなかいい並びだなんだけど、それこそ後半にFire In The Sky級のインパクトある曲がないので前半のテンションと後半のテンションにかなり差が出ちゃってる。ポップなRed Devilもフェラーリかっとばすぜ!な曲の割りになんかモッタリしてて間抜けな感じがするし、もう少し魅力的な歌メロにならんかったのかなーとか思ってしまう。

まあでもそのRed Devilがいいアクセントになってるのも確かだし、前半は聞き応えがある。後半もMagic Cityみたいな聴きどころもあるし今回はギタープレイの冴えっぷりもあって、キャリアの中でもそこそこ存在感があるアルバムになってると思います。

投稿者 trouble : 00:38 | コメント (318)

Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN その1

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Perpetual Flame / YNGWIE MALMSTEEN

書いてたら長文になりすぎたので分割しました。まず前半。

■今のイングヴェイを好きな自分をムリヤリ肯定する作文
90年代中盤以降の正統派とかメロディック・パワーメタル、そして所謂メロハーというのは、言ってしまえばデータベース化された要素を組み合わせての同人誌みたいなもんである。メロハーはJOURNEYの同人誌だし、欧州のメロディックパワーメタルの多くはHELLOWEENとSTRATOVARIUSの同人誌である。

「美旋律」「哀愁」「疾走感」「ドラマ性」そのどれもがいまや新しく生み出されるというよりは先人たちが築き上げたデータベースの中から検索され、組み合わせの妙を楽しむというのがメロハー、もしくはメロスピである。

で、こういう流れはメロハーなら80年代中期以降、メロスピならHELLOWEENのTIME OF THE OATHあたりから顕著になってきたような気がする。もちろんメロハーやメロスピだけの問題じゃなくて、最近だと「やりたいことをやった」のではなく、明らかに過去の自分たちの音楽を分析してデータベース化し、そこから必要な要素を組み立てて作った感アリアリのMETALLICAの新作もわかりやすい例だと思う。このへんの是非を問うつもりはないし、そもそも俺もそういう東浩紀言うところのシミュラークル的な作品を普段から愛聴しているのは言うまでも無い。

で、イングヴェイだ。

彼がひたすら同じような音楽をひたすらやっている思っている人は多いだろうし、実際フレーズの使いまわしはかなり多い。そういう意味では「データベースを活用しての自己パロディーばっか」だと思う人も多いのではないだろうか。しかし、俺が思うに毎回同じようなことをやっているようでありながら実はシミュラークルになりえていないのがイングヴェイの凄い(そして悲しく切ない)ところだと思う。

イングヴェイの築き上げたネオクラシカルメタルというジャンルの音楽はどちらかというと要素に分解しやすい、言い換えればデータベース化されやすい音楽性だ。だからこそファンの期待するものはかなり具体的になるし、ある意味そのデータベースに対して意識的になれば、簡単に(というと語弊はあるかもしれないが)ファンの求める要素を組み合わせての高機能なシミュラークルになり得るはずなのである。NATIONとかMAJESTICとか。

しかしながら、その大元イングヴェイの音楽性というのは、実はその「こてこてネオクラシカル」とはややズレている。彼本人の音楽志向は「もっとヘヴィに!」であり、ファンが期待する「クラシカルで美旋律志向」ではない。北欧キラキラ路線の傑作ECLIPSEの時でさえFaultlineを人に聞かせて「どうだ!ヘヴィメタルしてるだろ!」と威張っちゃうぐらいなのである。彼のそういう下品にロックでありたいヘヴィ志向はいまだにECLIPSE以前の音楽性を求める多くのファンの志向とは大きくズレている。欧米では再評価されていると言われているが、彼の存在のLEGENDARYっぷりが評価されてるのであって、彼の最近の作品が評価されているわけではない。

まあ問題なのは志向の問題だけじゃない。ヘヴィ志向はそれはそれでいいんだけど、この人それを具現化するだけのスキルがないのである。だからWAR TO END ALL WARSのようにやりたいことはいいのに音質で失敗してみたり、ATTACK!!みたいな中途半端な作品を作ったりしちゃうのだ。UNLEASHE THE FURYはそういう意味ではここで書いたように痛快な作品ではあったが、ヴォーカリストのチョイスを間違えた感は否めない。

彼の使いまわしは「陥っている」だけであって「データベースの活用」とはやや違う。彼はいつも同じようなことをやっている印象があるにも関わらず、彼はファンの求めるものとか市場にウけるもの、自分の音楽のおいしいところ、ってのをデータベースから引っ張り出してきて作品を作ってるわけではない。飽くまでそのとき湧き上がってきた衝動を音楽にしているだけなのだ。前に使ったかどうかとか考えてないから似たフレーズが出てきてるだけなのだ。それを才能の枯渇と言ってしまえばそれまでなのだが、その計算の無さ、衝動性に委ねた創作スタイルがあるこそ「シミュラークルとして機能しきれない微妙に外れた作品」を出し続けることになるし、痒いところになかなか手が届かないもどかしさを感じるアーティストである。

青臭いことを承知で書かせてもらうが、俺がスリルを感じることが出来る音楽というのはデータベースを活用してる部分とその衝動によって作られた部分の比が後者に傾いている音楽である。言い換えれば「機能性を追及するシミュラークル」も大好きだが、強い思い入れを持てるのは「大きな物語幻想を感じさせてくれる作品」なのである。音楽から感じ取れる強い衝動性は俺にとって大きな物語へのアクセスするために必要不可欠なものだ。そしてイングヴェイの存在、作品には質は伴っていなくとも今でも強くそれがあるし、だから今でも冷めることなく彼の音楽を好きでいられるんだと思う。

ってのはね。本当にイングヴェイがそうかってことが問題ではなくて、単に俺が「イングヴェイを好きな自分を肯定したい」ってことだけなんすよね。この文章は多分来週読み返したらグッっと恥ずかしい文章なんだろうな!来週の俺、頑張れ。

まあ「だから新作のPERPETUAL FLAMEもそういうのが感じられる素晴らしい作品だし、大好きだよ」ということなんですけど、それだけで終わるのも悔しいのでアルバム聞きながらまた続き書きます。(続く)

投稿者 trouble : 00:18 | コメント (269)

2008年08月17日

BIRTH OF THE SUN / RISING FORCE

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BIRTH OF THE SUN / RISING FORCE

Powerline Recordsから突如リリースされたイングヴェイのアマチュア時代の音源。しかも当事者Marcel Jacobがリミックス&リマスターを手がけるというそりゃイングヴェイはブチ切れて当然、な1枚。発売当時はビックリしたもんです。

イングヴェイのブートLPの中でも入手困難かつ中身の価値が高いと言われていた通称「白ジャケブート」に収録されていた4曲にSpeed and Action(イングヴェイ自身がリリースしたTHE GENESISではPlug In Lucifer's Mindというタイトル)、Voodoo Nightsを加えた6曲入り。今から15年ほど前まではこの音源は82年にスウェーデンのCBSのためにレコーディングしたものでは?と言われていたが、マルセルのライナーによればBIRTH OF THE SUNに収録されている音源は80年に録音されていたものらしい。ちなみにCBSのためにレコーディングした3曲というのは、Soldier Without Faith, You're Gonna Break Them All, Horiszonsの3曲とのこと(GOLD WAX誌のスパーク・ジャガー氏の記事より)。

さらに余談を重ねると、イングヴェイのアマチュア時代の音源としてはこの他にBLACK STARというブートLPが有名で、そちらもなかなか音質がいい上にMerlin's Castle、Dying Man, Suite Opus:3すべてBIRTH OF THE SUNとは別音源が使われている(Black Star, Magic Mirror, As Above, So Below, Anguish & Fearも収録)。と言っても今LPが聞けないのでそれが「別録音」かそれとも「別編集」かは確認でけん。裏ジャケには80年から81年に録音されたものと書かれているんだけど、詳細はわからん。レコードプレイヤー出したら聞き比べてみよう。

ともかく、BIRTH OF THE SUNのレコーディングメンバーはイングヴェイがヴォーカル&ギター、Marcel Jacobがベース、Zepp Urgardがドラムの3人編成。プロデューサーもいない状況だったのでヴォーカルとギターのオーバーダブ以外はほぼライブで録音せざるを得なかったらしい。HEAVY LOADのRagne Wahlquistが所有するストックホルムのThunderload Studiosでレコーディング。

POWERHOUSEでの録音の2年後だが、イングヴェイのギターは「ホントこいつ学校とか行かずにギターばっか弾いてたんだろうなあ」という勢いで進化しており、ほぼ現在の「ネオクラシカルスタイル」を完成させていると言っていい。ペンタトニック以上にハーモニックマイナーを使った速弾きが印象的。曲自体の方向性はPOWERHOUSE時代とほぼ変わらないダークな北欧ヘヴィメタルだが、全体的にレベルがアップしているというか「完全にプロの作品」になっている。地下室でドロドロと閉じこもっていたかのようなPOWERHOUSEより随分と垢抜けた。

個人的にはZepp Urgardのドラミングが気持ちいい。EUROPEに在籍していたトニー・レノに共通する雰囲気が好き。ていうかイングヴェイ17歳、マルセルとZeppが16歳のときにこんだけの作品てすげーな。POWERHOUSEには稚拙さがあったけど、こっちはあんまないもん。イングヴェイのギターはもちろんそれを支える二人が16歳ってのが信じられん。

マルセルのライナーによれば、「ろくなシンガーが回りにいなかったからしょうがなく」歌ったイングヴェイのヴォーカルはやはりきっついもんで、テープの回転数間違えたかのような低音でモッタリ歌っている。Merlin's CaslteはRAINBOWのStargazerを稚拙にした感じの歌詞でファンタジックだが、Birth Of The Sun、Dying Manはその後のイングヴェイの「てめーらは俺を倒せないぜ」的強がりソングの原型のような歌詞。

イングヴェイのマヌケなヴォーカルのおかげで北欧ならでは田舎っぽさ満点で、聞いてて楽しい。Zepp Urgardはその後ポルノ男優になったということですが、どなたか見たことある人はいませんか?

投稿者 trouble : 22:24 | コメント (53)

Yngiw Malmsteen's POWERHOUSE

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イングヴェイの新作発売予定日がまた延期になってしまった。今月末に発売されるメタリオンは「完成したアルバムを聞いてのインタビュー」という触れ込みだったけど、果たして大丈夫なんだろうか。録音された素材の音の悪さにミックスのロイ・Zがアタマを抱えているとか、ロイ・Zがミックスした「まともな音のアルバム」に納得のいかないイングヴェイが「悪い音のアルバム」に作り直しているんじゃないかとか不安は尽きません。

そんな不安を紛らわすために彼の過去の作品を改めて聞きなおしていこうと思い立ち、まずはこのアルバムから。Hit 'n Run Recordingsというレーベルから突如リリースされたアルバム。裏ジャケにはThe very first recordings by a 15 year old Yngwie Malmsteenと謳われているとおり、イングヴェイが1976年に結成したというPOWERHOUSEのアルバム。非常に怪しい商品ではあるが、収録されているHuntedはその後Music For Nation盤のINSPIRATIONのボーナスディスクに「15歳時にレコーディングした曲」として収録されているのと同じ。イングヴェイのマネージメントも「許可なくリリースされたブートレグ同然の商品」と言ってるので限りなくグレーな商品ではあるが、中身に関しては間違いなく本物である。

イングヴェイの15歳当時といえば学校の廊下をバイクで走るというスクールウォーズのオープニングのようなエピソードをかまして退学するとかそういう生活だったらしいが、それでも母親はイングヴェイの音楽的才能を尊重し、音楽三昧の生活を許していたらしい。バイクで廊下を走るのは音楽的才能の尊重とはまたちょっと違う気がしないでもないが、とにかくそんな恵まれた環境でひたすらギタープレイに没頭していたようだ。

ではそんな問題児が当時どのような音楽を作っていたのかということだが、さすが天才と言わざるを得ない音楽だ。おばあちゃんちの2trackのレコーディング機材で録音したらしいこのアルバムで、すでに独特のネオクラシカルメタルとしてかなりのレベルを達成している。1曲目のVoodoo NightsのリフはODYSSEY収録のRising Forceのリフだし、後にMotherless Childで使われるパーツも組み込まれているなど、その後のイングヴェイの名曲の源泉が随所にちりばめられている。アマチュア時代の曲の中でも名曲の誉れ高いMerlin's Castleはこの時点ですでにほぼ完成。Rising Forceのキメパートもすでに組み込まれている。曲名に関しては、正しいかどうかは微妙。Last JourneyとViking Battle(Suite)はトラック分けされて2曲として収録されているが、この2曲でSuite Opus:3とする可能性もある。実際マルセル・ヤコブがリリースしたBIRTH OF THE SUN、イングヴェイがリリースしたTHE GENESISでは1曲扱いだ。

テクニックはまだまだ未完成で所謂「速弾き」を感じさせるところは少ない。まだまだ「リッチー・ブラックモア的なファストプレイ」で、ハーモニック・マイナーよりもペンタトニックを多用している印象。ただ、チョーキングやヴィヴラートはすでに一級品で、15歳が演奏してるとはなかなか想像し得ない。リズム隊は誰が演奏しているかは不明でドラムに関しては稚拙と思われる箇所は多いが、音楽の雰囲気を損なうものではない。

恵まれているっつってもレコーディング機材はチープだっただろうし78年に自主制作した作品なわけで音質は劣悪。ただ、その劣悪さがまた独特のヘヴィネスや邪悪さの源にもなっていて、クラシックを基盤としたメタルというお行儀の良さではなく、北欧暗黒ドゥームメタルと言った趣がある。CANDLEMASSやKRUXのリーフ・エドリングと親友っつーのがこのヘンで納得できたりもする。後にODYSSEYに収録される美しい小曲Memories(このアルバムではLast Journey)のような曲もなぜか静かというよりも陰鬱な雰囲気が漂い、GOD SPEED YOU! BLACK EMPERORを想起させたりも。続くViking Battle(Suite)(後のKrakatau)のドゥームっぷりはかなりのもの。ちなみにこの曲20分もあります。トータルでは9曲で77分以上。長尺な曲が多い。

1978年すなわち昭和53年、ガンダムすらまだ放映されていない時代にスウェーデンでこんだけヘヴィなことをやっていたアーティストはそう多くはないはず。15歳という年齢もあいまってイングヴェイの言うとおり現地では「相当な変わり者」として見られていたんだろうなあと思う。ヴォーカルナシのインスト曲を9曲収録したこのアルバムは、天才イングヴェイ・マルムスティーンの貴重な黎明期を知ることができると資料であると同時に、スウェーデンのヘヴィロックのルーツとしても非常に価値のある作品である。

なーんてスウェーデンのヘヴィロックに詳しくないのに勝手にそっちに話を広げちゃいました!いやでもイングヴェイの歴代の作品の中でも一番ヘヴィなアルバムって感じがするよこれ。

投稿者 trouble : 20:11 | コメント (23)

2008年04月29日

KAADA / PATTON

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Live / KAADA / PATTON

ノルウェー出身の音楽家KAADAとPATTONのコラボレーションアルバムROMANCESリリース後にデンマークのロスキルデフェスで1度だけ行われたライブ映像を収録したライブDVD。

ROMANCESの音楽性は、簡単に言えばメロトロンやテルミンのような音色によって奏でられるもの悲しい旋律にパットンがハミングや歌を乗せて、不気味でありながらも美しい独特のノスタルジーを感じさせる映画音楽のような雰囲気がナイスでしたが、このDVDはその音楽の雰囲気に合わせて全編モノクロ映像で統一され、非常にお芸術性の高い映像作品になっております。

バンドメンバーはスタイリッシュなスーツに身を固め、パットンもその雰囲気を壊さぬダンディ・パットンを演じているので彼のキレキレっぷりを期待すると多分途中で爆睡してしまいますが、アルバムで聞けた独特の世界を楽しめた人なら、浮遊感や幻想感にライブならではの生々しさやダイナミズムも加わったこの作品はたまらんと思います。FAITH NO MORE以降、パットンのライブ映像はTOMAHAWKのライブが雑誌の付録DVDに入ってた以外なかったからなあ。

FANTOMASやMR.BUNGLEは高品質なブート映像が出回っているからいいとして、2002年のDILLINGER ESCAPE PLANNとのコラボライブとか、FANTOMASMELVINS BIG BANDのライブ映像とかはきちんと撮影してないのかしら。やっぱ激しい音楽やってるパットンの映像作品も観たい。

そうそう、FANTOMASやTOMAHAWKの日本盤をリリースしてくれていたDAYMARE RECORDがこのたび正式にIPECAC RECORDSと契約したらしく、今後のIPECAC作品はDAYMAREが扱ってくれるらしい。このDVDも日本盤が出るらしいので興味ある人は是非買ってみてくらさい。んでもってTOMAHAWKでもなんでもいいから来日してけろ。

リハーサル映像も入ってて、一応英語字幕も付いてるんだけど、あんまよくわからん。日本盤は日本語字幕つくんかな。こういう人たちが音楽について話す内容はきちんと聞いてみたい。

投稿者 trouble : 17:22 | コメント (5)

2008年01月29日

Fortress / PROTEST THE HERO

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Fortress / PROTEST THE HERO

一昨年リリースされた1stアルバムはまだ彼らが高校生だったころに制作されたものだったというヤングバンドの2年ぶりの2nd。

「あれもこれも全部やって自分たちのアイディアの豊富さと楽器のテクをアピールしたいんだ!」っつー自己顕示欲求がうまく表現衝動に結びついていた前作と比べるとやや自分たちの強みを自覚した上での自信のようなものが感じられる音になっているけれど、おとなしくなったとかそういうことはまったくない。自覚した上でさらにテクニカルに、さらに忙しなく、さらにメロディアスにパワーアップした感じ。

相変わらず全力疾走で突っ走ったりぶつかったりテクニカルになったりの忙しない展開の中、唐突にエモというよりもすでにミュージカルの、それもエンディングで歌われるような仰々しいメロが挿入される。楽曲内での場面展開の落差は大きく、起伏に富みまくっているんだけど、その目まぐるしい忙しなさはアルバム通して同じスピードなもんだから楽曲ごとの区別がつくようになるまでにかなりの時間がかかるし、何よりアルバムの印象が「ゴチャゴチャしてる間に終わった」みたいな感じだったりもする。

凄まじい竜巻に巻き込まれて何がなんだかわかんなくなってたんだけど目の前を大好物のハンバーグや好きなアイドルが全裸でM字開脚して通り過ぎたり、ケンカして仲直りできないまま死んでしまった親友がいたりもしたんだけど気がついたら竜巻の外に放り出されていた。なんかエモーショナルな出来事もその中では経験したんだけど「どうだった?」と聴かれると「なんだかよくわからん」みたいな。うわーこういう例えしちゃう俺ってカオティック!やべーすげー目パチパチしたくなるよ、頬まで動くぐらい全力で!ってそれは顔チック。

実際はそんなにカオティックなわけではなく悪い意味でカナダのバンドらしい小奇麗さを感じたりもするんだけど(偏見?)、そこらへんはスクリームも歌い上げも素晴らしいヴォーカルの表現力とドラムの突貫力で十分カバーできているし、わかりにくいと言ってもやっぱこの焦燥感は魅力的。メロパートも「とりあえず入れてみました」っつー感じじゃないスケールの大きさだし。ヘタにしっかりメリハリをつけて楽曲ごとの個性を出していこう、みたいな方向に行くより衝動にまかせて詰め込みまくる作風の方が今は功を奏していると思う。いやいいっすよ。前作よりさらに好きだ。俺も衝動にまかせて思ったことを書きまくり、その合間に「彼らの音楽が僕に救いをくれた。生きていく、その気持ちはこのアルバムとともにある」とか「今日の朝、飼っていた金魚が死んだ。去年の同じ日に、父が死んだ。来年は僕の番なのかと思う」みたいな痛エモフレーズを挟んでいこう。

曲の区別がつきにくいと言いつつも1曲目のBloodmeatは前作のBlindfolds Asideと同じく、テクニカルで忙しない展開に大仰なメロっつー彼らの魅力が凝縮された名曲(曲の作り自体は全部そういう曲ばっかですけどね)。去年のパンクスプリングで演奏されたときは劣悪な音響とバンドがアンサンブルとして機能してない感じで何やってるのかまったくわからんかったけど、こうして聴くと前作を受けての期待を見事に満たしてくれる曲だ。ダッダッダラッ!の後のグヴォォゥ!!ッゥゥゥァァ・・・が好きだ。

他の曲も聴けば聴くほど良くなってきた。後はライブでどんだけアンサンブルとしての成長が見られるか、楽しみ。

投稿者 trouble : 20:36 | コメント (20)

2007年06月24日

Lost Highway / BON JOVI

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Lost Highway / BON JOVI

BON JOVIナイトのお手伝いをするってことになったんで改めて聴いてみました。

前作のWho Says You Can't Go Homeがカントリーマーケットでウケたから今回は(カントリーアルバムではないということだけど)ナッシュヴィルの影響を打ち出したアルバムですか。音楽の路線自体は思ったほどカントリーカントリーしてなくて楽曲そのものというよりもスライドギターとかスティールペダルみたいな楽器を使ってるってとこにカントリーを感じる。Someday I'll Be Saturday Nightとかそういうアーシーで軽快なBON JOVIスタイルの楽曲が多い。

こういうアルバムを作っちゃうってとこが商魂たくましすぎるというか節操がないというかそれでいいのかっつー感じですけど、こういうマーケティング先にありきみたいなあざとい手法ってのはSLIPPERY WHEN WETでも「ファンに曲聞かせて収録曲を決定する」ってことやってたわけだし今に始まったわけじゃない。

俺がジョンの魅力だと思っていた焦燥感だとかイラ立ち、激情みたいのが皆無になり、大物感バリバリ、セレビーな臭いが鼻について鬱陶しい・・・っていうのも21世紀に入った頃から顕著だったわけでそれこそ今更そんなこと言ってもしょうがない。

でも、このアルバムってそういう「今更言うべきことじゃないけどさあ」ってとこがすごく強調されて聞こえる。自分たちのやることに自信を持って、のびのびと作った安定感抜群のアルバムでそれ自体はいいんだけど、なんかやっぱどうにもそののびのびっぷりがイヤなのよね。I Love This Townみたいなヌルーい曲をライブで観客が「楽しいね!」って笑顔で手を振ってノッてそうな雰囲気とか、もう絵を想像だけでウザい。

と俺は「ロックが好きなんだ」的な痛い視点で文句のつけてるのに、「思い出作り、したいよね」という対訳にシビれるMake A Memory、爽やかな空気の中にも一瞬だけ翳りを感じることができるようなAny Other Dayをはじめ、後半のTill We Ain't A Stranger、Seat Next To You, The Last Nightというシミる曲のオンパレードに「うーむ、やっぱ職人じゃのう」と意味もなくオッサンぽく唸ってしまったりします。いや実際オッサンですね。

各アルバムにあるようなインパクトのある曲はないけど、「俺ら感じたことを歌にするってことを生業にしてんだよ」と言う雰囲気が伝わってくるだけの説得力があって、なんだかんだで聴けてしまうショボい僕でした。普通のアルバムとして聴いたらガッカリだけど、ボツ曲集だと思って聞いたら結構いいじゃん、て感じというか。でも「ボツ曲集にしてはいい」って程度のアルバムを本気で欲しいと思えるかってなるとやっぱ「今更いらない」ってのが正直な気持ちだなあ。

投稿者 trouble : 17:23 | コメント (3) | トラックバック

2007年06月21日

Anonymous / TOMAHAWK

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Anonymous / TOMAHAWK

4年ぶりの3作目。1st2ndはJESUS LIZARDとFAITH NO MOREを髣髴とさせるストレートな作風だったけど、この3rdはかなり毛色が違う。トライバルなドラムと呪術的なヴォーカルが印象的で、こないだ出たBATTLESの新作に近い雰囲気を感じたりも。ハードロックとしては、かなりとっつきにくい感じ。サウンドの方向性から今作はドラムのジョン・ステイニアーが主導権を握って作られたのかと思いきや、さにあらず。ギターのデュエイン・デニソンの描いたコンセプトによるものらしい。

今回のアルバムコンセプトについてはライナーで平野和祥タンがライナーで書いてくれております。保護政策下にある居留地で演奏されているネイティヴ・アメリカンの音楽が陳腐なブルースやカントリー、ニューエイジ風なものばかりであることに違和感を感じたデニソンが、「もっとアグレッシヴで不気味なもんじゃねーのか」とリサーチしてみたところ出会った文献の記述を元にして再構築したネイティヴ・アメリカンの音楽集と言うのがこのアルバムのコンセプト。それらはどれも作者不詳の民俗音楽ということで、アルバムタイトルがANONYMOUSとなっているらしい。なるほろ。

1stこそ「地味だな」っつー感想が先行しちゃったけどその地味な雰囲気だからこそ織り込むことができる不穏な感覚、不気味さこそがTOMAHAWKの持ち味であるってことを感じさせてくれた2ndの出来が素晴らしかった。そのTOMAHAWK流ハードロックサウンドでさらに素晴らしいものを、って期待しちゃってたもんで、最初にこのアルバムを聴いたときはちょっぴりガッカリしちゃったんだけど、鳴らされる音そのものだけでなくその音が響いている空間に満ちる不穏で不気味な空気は紛れもなくTOMAHAWK。その空気がネイティブ・アメリカンの民俗音楽というコンセプトと見事にマッチしてると思う。バンドの音自体は音圧がすごいとかすんげーラウドってわけじゃないんだけど、鳴らされた音によって生まれる空気の密度が濃い。

っつーことで作品自体は存在感があって素晴らしいと思うんだけど、でもやっぱ不穏なハードロックで歌うパットンを堪能できる作品も聴きたくもあったりして。俺にとっては肝心のマイク・パットンの存在感がなんつーか薄い感じがするし、もうちっとスカっとわかりやすいカタルシスも欲しいなあ、と思ってしまうわけで。まあパットンはそういう俺みたいなベタロックファンの期待っつーのの数歩先を常にいっちゃう人だからしょうがねーか。

投稿者 trouble : 16:44 | コメント (3) | トラックバック

Ghost Opera / KAMELOT

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Ghost Opera / KAMELOT

地味だ地味だ言われてるアルバム。確かに前作のMarch Of MephistやSoul Societyみたいな強烈なインパクトのある曲がない。脇を固めるという意味では名脇役になりうる楽曲がそろっているんだけど、主役級の存在が足りないというか。

ということで俺も地味だと思います。

ただ、それで切って捨てにくいとこもこのアルバムにはあったりして。それは、今だにCONCEPTIONにこだわり続けるオタク心をくすぐる2曲があるから。The Human StrainとLove You To Deathがねえ、なんかCONCEPTIONの4th、FLOWに収録されてそうなムードの曲なんすよ。いやもっとゴージャスなアレンジになってるけどメロの盛り上がりとかがなんかそんな気がすんの。そこらへんが30を過ぎたオッサンの心にズキューンと響くのです。

あと、アンドレ・マトスのSHAMANぽいエキゾチックな雰囲気のヴァイオリンに導かれて始まるRule The Worldも躍動感あふれるリズムとKAMELOTらしいシアトリカルなメロがうまく組み合わさったナイスな曲だし、切羽詰った緊張感とドラマ性、スピード感がそろったGhost OPeraもやっぱいい曲で、前半は今までのアルバムと比べて遜色ないと思う。

ただ、後半にもう一つクライマックスが欲しかったなあ。後半だってシンフォニックでありながらアメリカ産ならではのパワーも備えた欧州メタルとしてそりゃさすがの出来で、演奏も歌もプロダクションも一級品なんだけど、強烈なインパクトを残す曲がないので全体の印象としてはTHE FOURTH LEGACY以降のアルバムとしては初めて翳りが見えたような、そんな小粒感を感じてしまうアルバムになってしまった。大きなドラマを感じさせる曲よりもやや淡白な小品て感じの曲が多いのもそう感じてしまう一因かも。ハデさよりも練り込みを狙ったのはわかるしまだまだ上を目指していくぜっていう気概を感じることはできるんだけど。ライブで観たら「なんだ、いい曲多いじゃねーか」ってなることを期待しています。

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2007年04月26日

The Destruction Of Small Ideas / 65daysofstatic

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The Destruction Of Small Ideas / 65daysofstatic

なんかポストロック界のBIG IN JAPANになるんじゃないかっつー雰囲気になってまいりましたが、新作が出ました。

MOGWAI meets APHEX TWINていう表現が一人歩きしてしまったけれど、今作に対してそういう表現はさすがに出てこなそう。依然としてサンプリングを多用しつつもバンドの生々しさを前面に押し出した感がある。前作まではダンサブルという表現が可能なリズムの煽情力が高い曲もあったが今回はそういう雰囲気の曲があまりない。辛うじてトランスっぽいサンプリングが印象的な The Distant & Mechanised Glow Of Eastern European Dance Parties(なげーよ)にそういう側面があるぐらい。

だからパッと聴くと肉体性に訴えかけるという意味では地味になったように感じるかもしれない。しかし、ダンサブルな攻撃性を抑え目にすることでジックリ風景を描写した分得たものも大きいというか、1st2ndに比べてこの3rdでは曲の出来のムラが小さくなっただけじゃなくて各楽曲のドラマ性がさらに高まり、聴き手をその世界に引きずり込む力がさらに強まったと思う。全体的にぐっと底上げされた感じがする。中盤からドラマチックに加速するDon't Go Down To Sorrowは素晴らしいし、These Things You Can't Unlearnに代表されるような、曇天の暗い空の下で空爆を受けて街が破壊されていく際の諦めと悲しみに満ちた嘆きのBGMというか、破壊的かつ絶望的な状況下での絶叫を描いたかのような曲が素晴らしい。ラスト2曲のWhite Peak/Dark PeakからThe Conspiracy Of Seedsの流れもかなりカタストロフってていい。後者には絶叫と歌が入ってるんだけどどちらも妙に素朴で迫力がなくて、それが逆に生々しさを感じさせる。

様式化してしまったボレロ型ポストロックとはちょっと違うというか、特に焦らしもタメもなく躊躇無く激情を叩きつけてくるので即効性が高く、ポストロック云々というよりも暗黒プログレメタル的とも言えるかも。その即効性の高さからクチうるさ方には子ども向けと思われるかもしれないけれど、俺はやっぱこういうわかりやすさ好きだな。子ども向けバンザイ、LORDIバンザイ!

それだけに、今回残念なのがこの音像。なんかこじんまりとしちゃってる感じがするんだよなあ。デモテープを128kbpsのMP3にしたような音だ。もっとスケールの大きさを感じられるプロダクションでやって欲しかった。特にドラム。なんかボスボスした音にも違和感あるし。音楽そのものの説得力はさらに高まっているだけに、すごくもったいなく感じてしまう。なんでこんな音なんだべ。

まあライブで聴くとそのモヤモヤは払拭されるので(と言いつつこのバンドのライブって結構ムラが大きい)早く再来日して欲しい。前回聴けなかったWax FuturesとThe Conspiracy Of Seedsを生で聴きたい。

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2007年04月04日

Take To The Skies / ENTER SHIKARI

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Take To The Skies / ENTER SHIKARI

アルバムが発売されるかなり前からスカパーの音楽チャンネルではヘヴィローテーションで、俺もそのビデオを観て興味を持ったクチです。レイヴ meets メタルっつーサウンドで騒がれていますが実際はメタルというよりもスクリーモ。そこにアイノリのBGMみたいなピコピコキラキラしたシンセサウンドが乗る。

もともと「こういうのとこういうのをわかりやすく混ぜちゃおう」っつー音楽は大好きなのでビデオで最初に見たSorry You're Not A Winner、Anything Can Happen In The Next Half An hourあたりには一発で煽られました。ただ、こうしてアルバムとして聞いてみると上記2曲以外はどうにも中途半端な印象がぬぐえないというか、もともとスクリーモとしてイマイチな楽曲に無理やりトランスサウンド乗せることでちょっと面白くはなったけれども結局基盤がまだできてないんじゃな、みたいなさ。歌詞も含めて「これやったら新しいんじゃねーの?」とアタマで考えてやってはみたもののそれが実を結ぶにはまだ時間がかかるかな・・・と言う感じでPROTEST THE HEROとはちょっと逆の印象。なんかイギリスのバンドらしい「アタマ先行になって肉体がついてきませんでした」みたいな雰囲気。

また、ケガ人続出なほど過激に盛り上がるライブについてもアルバムについてくるDVDだけ観るかぎりは演奏ショボいしあまりその凄さは伝わってこない。

でもまだ1stだからな。今後もっと経験が反映されて、自分たちの強みをうまく使えるようになったら急にすげーアルバム作っちゃうかもしれない。とりあえずサマソニでライブは観てみたいし今後に期待はしたいです。

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2007年04月03日

Kezia / PROTEST THE HERO

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Kezia / PROTEST THE HERO

一昨日のパンクスプリングではやや不完全燃焼なライブだったんだけど、やっぱアルバムはいいなあ、と思ったのできちんと感想をアップします。

海外でのリリースは昨年、レコーディングは一昨年とかなり時間が経ってから日本盤がリリース。夏ぐらいにタワレコでちらっと試聴して「気になるバンドリスト」に入れてあったんだけどビビリの僕はネット上で評判がいいことを知った秋になってようやく購入、しかもしばらくほったらかしにしといてきちんと聴いたのは11月も末ぐらいっつー正しきオブジェメタラー。で、年末年始に自分のヲタ心と自己顕示欲と向き合う行為である「2006年のベスト選び」でいろいろ聞き返してようやく「うわこれ好きかも」となったのでした。

そのベストにチョイスしたとき「MARS VOLTAとINTO ETERNITYが衝突してスクリーモ風味の強いテクニカルでちょっとケオティックなハードコアメタルやってますみたいなサウンド」て書いたんだけど、他にもSYSTEM OF A DOWNとかDILLINGER ESCAPE PLANだとか果てはDREAM THEATERまで様々なバンドが例えに使われてるのもうなずけるごった煮サウンド。でもまあそういう変態系なサウンドを標榜しているバンドは今の時代いっぱいあって別に珍しくなくなってきてる。そんな中で俺がこのバンドに惹かれたのは歌メロの魅力によるところが大きい。

最初はどちらかというと若さにあふれたツッコミ気味の勢いでバタバタとめまぐるしく変わる展開とピロピロとしたギターや突進力のあるドラムのインパクトなどによるメタル的重量感・スピード感の融合っつーどちらかと言えば激烈なパートの印象に押し流されがちなんだけども、その情報過多とも言える音楽のところどころに織り込まれたメロディーが非常に俺好みってとこがたまらなく魅力的なんだよなあ。

この手のバンドの中では(っていうほど色んなの聴いてるわけじゃないんだけど)結構典型的なスクリーモ声による歌メロのキャッチーさ、叙情性と激パートからメロウなパートへの場面転換における煽情力が際立ってると思う。そのへんが一番如実に表れているのがビデオクリップにもなった6曲目のBlindfolds Asideだと思う。緊張感あふれるパートから強引に救いを感じさせるギターソロに展開するところなんかも僕のハートにドンズバです。

全体的にはアタマで考えて「ここでこういう展開するなんてすげーだろ!」と言いたくて仕方のないってところも確かにあって、沢山の要素を詰め込みすぎて「俺たちはすべての音楽に対してオープンなんだ」っつー気負いが押し付けがましく感じられることもある。インタビューやライブでのMCなんかを聴いてもかなりそういうこと意識してるような雰囲気だし。ただ、このアルバムの音の印象は「だからアタマでっかちなだけ」にはなってなくて、その意気込みの過剰さがうまく表現衝動と結びついているように聞こえる。そのへんも素直にこのバンド好きだなあって思える所以かもしれない。

このアルバムを制作したときはまだ高校生ぐらいだったという彼らにとってはまだ「自分はこんなこともできる」ということをすべて出さないと気がすまなかったんだろうし実際それは実を結んでると思うけれど、今後彼らが人間的成長の過程の中で「そんなに力まなくていいんだ」と学ぶことでどのような変化を遂げていくかも楽しみ。いや、やっぱいつまでもこの過剰な表現衝動をもち続けていて欲しいってのが本音かも。という「それはオマエが勝手にそう思ってるだけだろ的ロキノン・スヌーザポエティックミュージシャン内面妄想と私小説化」ジメ。

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Good Morning Revival / GOOD CHARLOTTE

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Good Morning Revival / GOOD CHARLOTTE

2ndの頃の彼らのイメージもあってどうにも聞かず嫌いしてたバンドなんですが、スカパーでKeep Your Hands Off My Girlを観たらニューウェーヴ、ゴスっぽいのがなんか妙に気持ちよく、さらにThe Riverがアップテンポで哀愁漂うメロが印象的な好きなタイプの曲だったんで今更聞いてみようという気が起きて、新作を買っちゃいました。

で。ちょっとパンキッシュな彼らのサウンドが好きだった人たちには今作はイマイチ受けが悪いのかもしれないんですが、このバンドに思い入れなんぞカケラもなく、パンクよりも哀メロポップロックを愛する僕りんにはど真ん中のサウンドでした。クラブでDJ活動してるっつー影響なのかパンクっぽいビートというよりももう少し踊りやすいリズムというかでキーボードによる味付けも随所に効果的に使われててナイス。

昨年のPINKとか今年のFALL OUT BOYとか、ロックだとかパンクだとか関係なく、とにかくポップアルバムとして完成度が高い作品だったと思うんですが、今作もまさにそんな感じ。とにかく曲のよさに尽きる。特に前半のテンションの高さはすげえ。ビデオクリップになった2曲だけじゃなくて他の曲もどれも職人芸と言いたくなるような出来のよさ。

MiseryのイントロはLINKIN PARKっぽいしTHE KILLERSの2ndよりもTHE KILLERSらしいDance Floor Anthemとかt.a.t.u.みたいなVictims Of Love、トドメはまんまCOLDPLAYなWhere Would Be Nowと、ここ数年の(ビミョーに古いのも混ざってますけど)ポップシーンおいしいどころドリ集大成て感じですが、そんなネタを含めていいアルバムだなあと思います。とことん商品として質の高い作品で、逆に言えばロックとしての存在感は非常に希薄かもしれないけども、ここまでしっかり作りこまれているのであればそこに文句つけるよりも、素直に楽しめるアルバムとして大事にしたいなと思います。

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2007年03月24日

Six Litanies for Heliogabalus / JOHN ZORN

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Six Litanies for Heliogabalus / JOHN ZORN

ジョン・ゾーン指揮のもとにマイク・パットン、トレヴァー・ダン、ジョーイ・バロンという強烈トリオが凄まじい演奏するプロジェクトの第三弾。リリースペースはえー。

前作はロックオペラってことだったけど今回は全6曲、カリギュラとかネロと言った悪名高いローマ皇帝みたいなのの酒宴とかそういうのにインスパイアされたらしい。よくわからんけど・・・と思っていたらそうではないみたい。mixiのジョン・ゾーンコミュで「ヘリオガバルスの妖美な倒錯世界を、音で再現したのがこの
"Six Litanies for Heliogabalus"」という書き込みをしてくれた人がいて、いやはや納得。いやこのヘリオガバルスってのはまさにジョン・ゾーンがこの面子を集めてアルバムを作るにふさわしいだけの変態皇帝だ。詳しくはコチラで。付加情報で音楽の価値が高まるとかそういうわけではないけれど、このテーマを踏まえた上で聞くこの作品はさらに凄みを増して聞こえるのは確か。

そんな稀代の変態皇帝をテーマにして作られている今回、ジェイミー・サフト(オルガン)、イクエ・モリ(Electronics)の二人と女性コーラス3人が参加し、さらに3作目にしてついにジョン・ゾーン御大もサックスで狂乱の宴を盛り上げております。

基本的にはMOONCHILDやASTRONOMEの音楽性と大きく変化があるわけじゃなくて歪んだベースが縦横無尽なドラムと合間ってバキバキとうなりをあげ(トレヴァーのベースは作を重ねるごとにカッコよさを増している気がする)、パットンがビキュバギャー!アイッ!グベアー!だのブチュッ、ウゴガァァ!ボソボソ・・・ンフフフ・・・と意味不明な言語を駆使する中で阿鼻叫喚の世界が作り上げられていくんだけど、そのゲスト陣の存在のおかげで今回はかなりサウンドの色彩が豊かになっていて、スリルも増している感じ。パットンの絶叫三昧はさすがに3作続くと飽きてきたなあと思ったりもするけど女性コーラスが入ってくると急に冷たく厳かな空気になったり、イクエ・モリのキュラキュラした電子音やオルガンが入ってくることでサウンドに奥行きができたりと、前2作とはまた違う感覚で聴くことができる。オペラだった前作よりもある意味シアトリカルな印象。

そういう意味でこれまでの作品の中では一番カラフルだし起伏もあるしでとっつきやすい作品かもしれない。まさに大量の薔薇の花びらで客を窒息死させたというエピソードがある宴会のイメージにふさわしい美しく、豪奢で、イカれた音楽。時折切り込んでくるジョンのサックスもかっちょいいし。2曲目でのパットンとの掛け合いは生で観たらさぞ強烈だろうなあ。

ただ、4曲目はパットンのヴォカリゼーションが8分強にわたって繰り広げられるんですが、これって別にココでやらんでもいいんじゃないかっつー気もします。

いやでもこの制作ペースの速さもさることながら、どれもそれなりに違った魅力を打ち出しているところがこのプロジェクトの凄いところだ。頼むから来日して欲しい。もちろんこのメンツで。

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Here Come The Waterworks / BIG BUSINESS

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Here Come The Waterworks / BIG BUSINESS
昨年出たMELVINSのA Senile Animalに参加していたコーディ・ウィリス(ドラム・ヴォーカル)とジャレッド・ウォーレン(ベース・ヴォーカル)は、元々このBIG BUSINESSというバンドで活動していた二人。この二人がMELVINSのツアーの合間に書き溜めた曲をレコーディングして、新作としてリリースしたらしい。レーベルはISISのアーロン・ターナー主宰のHYDRA HEAD、日本ではDAYMARE。

そのMELVINSのアルバムもツインドラムによるグルーヴとジャレッドが持ち込んだポップなメロディが素晴らしかったが、こちらのBIG BUSINESSもそれに負けず劣らず、いや個人的にはさらにかっこいいと思えるアルバムになっている。

MELVINS等に参加していたデヴィッド・スコット・ストーンがギター・その他ノイズで参加しているけれど、とにかくジャレッドとコーディが生み出すサウンドは大迫力で、1曲目からそのぶっといウネリにやられてしまう。音楽性は全然違うけれどもそのウネリが生み出すドロドロとした混沌の色合いは、CONVERGEに共通するものがあるような気がする。CONVERGEのリズム隊がスラッジ寄りのロックンロールをプレイするとこうなるのでは、というのは乱暴な表現かもしれないけど、どこかサイケなムードもあってホントかっこいいのでヘヴィでウネリのあるロックが好きな人には是非聞いてもらいたいアルバムです。

んでもってまたその混沌の上に乗るのがジャレッドのポップなメロディーで、これがまた俺にはちょうどいい塩梅。MELVINSのアルバムでもそのポップ性を如何なく発揮していたジャレッドだけども、こちらではさらに堂々とした歌を聞かせてくれる。

ちなみに日本盤にはTour II EPがまんま収録されていて、アルバム収録曲のデモヴァージョンが聴けるんだけど、アルバムヴァージョンよりさらにプリミティヴなベースのブリブリっぷりがかっこいいです。

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2007年02月08日

John Zorn's ASTRONOME

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John Zorn's ASTRONOME

昨年5月にリリースされたMoonchildに続くジョン・ゾーン指揮のもとにマイク・パットン、トレヴァー・ダン、ジョーイ・バロンという強烈トリオが凄まじい演奏するプロジェクトの第二弾。去年速攻で買ってたんだけど書くの忘れてました。

相変わらずアートワーク凝りまくりでジョン・ゾーン自身による解説もついている。けど英語だからよくわからんのですが、そもそもこのプロジェクトのきっかけはニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活躍する劇作家・演出家であるリチャード・フォアマンに「オペラを書いてくれ」と言われたところからスタートしたらしい。オペラというものはすでに200年前に役目を終えた表現だとジョンは考えていたみたいだけど、フォアマンのためならば一般的なオペラとは違う形のオペラを作ってみようと思ったみたい。それがついにAstronomeという作品となって完成したわけだ。

そんなわけでこの作品は3幕、計7シーンから構成されるポケットオペラらしい。内容はよくわからんが、アレハンドロ・ホドロフスキーとかアントナン・アルトー、ヴァレーゼなんかにインスパイアされてるのかな?いやブックレットに名前が出てきてるだけなんでわからんすけど。アレハンドロ・ホドロフスキーとは映画エル・トポの監督であり、アントナン・アルトーとは前衛芸術・思想に大きな影響を与えた人らしい。ジョン・ゾーンっぽいよね、このへんのチョイス、と知ったかぶってみる。

で、肝心の音なんですが、不穏なトレヴァーのベースに縦横無尽なバロンのドラム、阿鼻叫喚のパットンヴォイスが凄まじいエネルギーでぶつかり、爆発すると言うMoonchildとほぼ同じ聴感なんだけど、Astronomeはもっとフリーな形式の中でぶつかり合っているような印象。フリーとは言っても実際は細かくコンポーズされた上で各人が暴れているんだと思うんだけど、普通に聞いてたらそういうのはわからん。

ただ、やはり集中して聴くとその激烈さと共に展開というかストーリー運びに引き込まれて楽しんでいる自分に気づいたりもするので、その辺は確かにMoonchildのような「曲の集まりとしてのアルバム」とは違う「オペラ」なところだと思う。ゾーンが言うように、ヘッドフォンをして暗い部屋の中で集中して聞くことによって逆に視覚的にもすげー体験ができそうな作品だ。

どちらにせよゾーン節満点ではあるので前作を気に入った人なら今回もその強烈さにやられると思います。是非是非。去年のベストには第一弾のインパクトが大きかったということでMoonchildを入れたけど、この作品も内容的にはまた違った凄みがある。

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2006年10月29日

Far Beyond The Sun / YNGWIE J. MALMSTEEN

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発売前から怪しさプンプンだったDVDです。とりあえず詳細はこちらで。ここ日本では12月6日にCHASING YNGWIEもLIVE IN LENINGRADも単体でDVDとして発売されるので、ぶっちゃけこういう抜粋版は不必要なんですが、そこはほら、ヲタクですから。インタビューが収録されてるなら、とか理由をつけて買ってしまうのです。

でもレーベル名も怪しいし、ライブ映像は市販のビデオテープから、インタビューは94年の武道館のを転用、みたいなよくある南米モノと同じくブートすれすれの代物じゃねーかと一応警戒(警戒してても買うなら警戒じゃねーわな)。

と思いつつ家で関西限定宇治抹茶コロンを食べながら観てみたんですが、ビデオテープ起こしじゃなくてきちんとマスターテープからのDVD化・・・っぽい。一応Universalのロゴも出てる。すでにDVDでリリースされているYNGWIE MALMSTEEN COLLECTIONよりも音、映像共にキレイな気はする。編集もブツギレつなぎ合わせじゃないし、I'll See The LightからFar Beyond The Sunへのつなぎはなかなかカッチョよかったりします。インタビューも今年に入ってからこのDVD用に取られたものらしい。

んでもってさらにヲタク的なディテールを書いておくと、85年の来日公演の映像は12月にリリースされるCHASING YNGWIEではなく、最初に発売されたLIVE IN JAPANの映像を使っているので、全盛期のイングヴェイがかっこいいフレーズを弾いてるのに急に映像が回転したり反転したり、イェンスの後姿やピンクのレザーシャツに青のレザーパンツ、アタマはアフロというブルータルなアピアランスのジェフ・スコット・ソートが映ってたりするストレスがたまるアレです。でもまあ12月にCHASING YNGWIEがリリースされるんだし別ヴァージョンが収録されているってほうが(ムダに)商品価値も出るってもんです。

それぞれのライブの内容については12月のDVDリリース時に改めて細かくしつこく鬱陶しく書くとして、その他のオマケについて。インタビューは30分近く入っていて、子どものころにどういうきっかけで音楽にハマったかとか彼の音楽哲学みたいのが語られています。日本語字幕は入ってないので英語字幕で見たんですが、30分近く英語字幕を追っていくのは僕りんにはキツかったです。目回ったよ。

んでもってTAB譜。ただ単にTAB譜がだーっと出てくるだけかと思ったら、PV(I'll See The LightはCHASING YNGWIEのライブ)をバックにTAB譜が出る、カラオケ的な作りになってました。

結構しっかりとした作りだし、12月までのツナギとして買いたい人、そして俺と同じようなYNGWIEオタクは買ってもいいかもしんない。

ちなみに、俺はCHASING YNGWIEを23ぐらいまでCHANGING YNGWIEだと思い込んでました。

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2006年05月30日

PEEPING TOM

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Peeping Tom / PEEPING TOM

パットンに「最も完成させるのが困難だった」と言わしめたPEEPING TOMのアルバムがついにリリース。今作では「自分なりのポップアルバムを目指した」という言葉どおり、歌モノアルバムです。まずはCDの装丁の豪華さにウットリ。アメリカで一社しかこのケースを作ることはできなかったとのことだけど、通常のCDの価格でこんなに手の込んだものを作りこんでくれるのは嬉しい限り。プロジェクト名どおり、「覗き」をテーマにしたこのアートワークは相変わらずパットン作品ならではのオシャレさだと思う。でも日本盤にはついてると期待した歌詞・対訳がついてないのね。どんなこと歌ってるかすげー知りたかった。どっかに歌詞載ってないかな。

バックトラックはゲストの人選が反映されてかヒップホップ色が強く、全体的な雰囲気としてはGENERAL PATTON VS, X-ECUTIONER、LOVAGEあたりをミックスした感じ。ALBUM OF THE YEAR的な雰囲気もあるけれど、そこまでの業の深さは感じないし、あまり毒はない。

Mojo、 Don't Even Tripあたりで聞ける起伏の激しいメロディーは最近表に出てこなかったポップ・メロディーメイカー・パットンの大きな魅力。ここ数年の彼の作品を聴いているとキャッチーな歌メロの曲は沢山あったけど、FAITH NO MORE時代に聞けたようなドラマティックなメロディーはTOMAHAWKのCpat. Midnightで一瞬披露したにすぎず(あえて一瞬にとどめていたところが最高にカッコよかったんだけど)、このアルバムで久々にこういうメロを歌うパットンに再会できた喜びは大きい。

ただ、こういう歌を熱唱するパットンの声を聴いて思うのは、確かに彼の活動は多岐に渡っているものの、その声の密度というか強さみたいのはやはりロック声なんだなあ、ということ。こういうヒップホップ・エレクトロニカな感触のバックトラックで歌って魅力的かというと、魅力がないわけじゃないけどそこまですごいとも思わないというか、正直なところ期待したほどいいと思えなかったりもする。曲も前述の2曲やNorah Jonesに下品なこと歌わせるために作ったの?って感じのSuckerあたりは魅力的だけど他の曲にはあまりハマれず。2001年の頃からプロジェクトを開始して、ちょっと長い時間かかりすぎたってのが音楽の鮮度を落としてしまったのかもしれない。このアルバムとこないだのMOONCHILDを足したような音楽だったらすげーよかったかも。

いやそれでもすげー好きだけどさ。もうちっと好きな曲以外のも聞き込んでみます。

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2006年05月25日

Songs Without Words / MOONCHILD

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Songs Without Words / MOONCHILD

発売直前になるまで全然知らなかったんですが、ミクシィで「ジョン・ゾーンの新バンドにマイク・パットンが参加しているらしい」という情報があり、速攻でアマゾンで予約したはいいけど発売日を過ぎ、出荷予定日を過ぎてもなんの音沙汰もなくなってしまってました。そうこうしてるうちに日本に入ってきたと教えてもらったのでソッコー買ってきた。

ジョン・ゾーン曰く"combining the hypnotic intensity of ritual(composiotion) with the spontaneity of magick(improvisation) in a modern musical format(rock) "とのこと。いやよくわかんねーんだけど。とにかくロックのフォーマットでインプロ主体の強烈なのかまします、ってことだよね。多分。違うかな。国家の主権の発動としての戦争と個人レベルの殺人や生き物を殺すことを同じ論理的枠組みで語っているかのような海辺のカフカはどうなの、ということかなξ( *´▽`)ξ♪从゜▽゜*从

で、参加メンバーはヴォーカルにマイク・パットン、ベースにトレヴァー・ダン、そしてドラムにジョーイ・バロン。あれ?ジョン・ゾーンは?って感じですけどジョンは演奏には参加してないです。ジョンはconceive, composed, arranged & conductedだってさ。この3人のインプロスキル、演奏力を熟知したジョン・ゾーンが彼らを使って頭の中の音楽を具現化したロックプロジェクトがこのMOONCHILDということになるのでしょうか。

そんなことをシタリ顔して書いてる俺なんですが、全然ジョン・ゾーンのアルバムは持ってないしミックス担当のビル・ラズウェルもほとんど知らなかったりするのです。えへへ!

という前説的なことはともかく、音楽的には確かにロック色は強い。ギターもなければジョン・ゾーンのサックスもないけれど、この3人で十分MOONCHILD流の猛烈なロックンロールが展開されている。トレヴァーのぶっといベース(FANTOMASでもMr. BUNGLEでもトレヴァーのベースってあんま気にしたことないんだけど、この人のフレージングって結構独特というか、こうやって聴いてみるとトレヴァーらしさってのが結構あるんだね)と変拍子だらけのドラム。そしてパットンのヴォーカルはいつになく攻撃的。もちろん叫んでいるだけじゃなくていつものように不気味なハミングや得体の知れない音を出してはいるんだけど、ココ最近のパットン作品の中ではもっとも邪悪でユーモア色の薄いヴォカリゼーションになってる気がする。4曲目の声とかちょーかっこいいっす。

で、飽くまでパットンファンとしての感想になってしまうんですが、音楽全体にはあまりパットン色は強くないように思う。パットン特有のキャッチーさも少なくてジョン・ゾーン色が強いんだけど、その分最近のパットン参加作品にはないヨコシマな感じが強く、緊張感もすごい。その瞬間、3人がジョンの脳、筋肉、思考にチャンネルを合わせ、3人のテンションが極限まで高められている感じ。いやかっちょいいです。これ生で観たらすげー迫力だろうなあ、観たいなあ・・・。

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2006年02月19日

One Time For All Time / 65DAYSOFSTATIC

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One Time For All Time / 65DAYSOFSTATIC

2004年にデビューしたUK出身4人組の2ndアルバム。これ久々にキタ!って感じ!かっちょいいー。

彼らのサウンドを説明するならば、ポストロックになるのだろうか。MOGWAIを彷彿とさせる轟音ギターとAPHEX TWIN的な無慈悲な高速ブレイクビーツを絡め、さらにピアノ(これがかなり肝)、ストリングス、生ドラム(手数足数多い)によってオーガニックな感触をも生み出している。まさにおいしいとこどりなサウンド。

もちろんMOGWAIだとかAPHEX TWINだとか、そのアイディアの源泉となるバンドのほうがそれぞれのツールの使い方と風景描写の深みには一日の長があるけれど(当たり前か)、それぞれの要素を使っていながらも、飽くまでそれは「ツールの一つ」であり、彼ら自身の描きたい世界もしっかり描写していると思う。安直さはあまり感じない。。

ピアノフレーズの反復によって静寂の中に閉じ込められたエネルギーが徐々にスパークしていくかのようなDrove Through Ghosts To Get Here、緊張感のあとに訪れる高揚感たまらなく気持ちいいAwait rescueという冒頭2曲におけるインパクトはかなりのもので、最初はそのデジタルな攻撃性と殺伐な空気の印象が強いんだけど、中盤以降は生のバンドによる音の積み重ねによって描かれる哀しみや絶望を感じさせる風景も増える。荒涼として曇っていて、というその風景の描き方に、いかにもイギリスなムードを感じることができてすごい好み。

日本ではまだ契約ないみたいだけど、これは絶対ライブ観たいぞ。フジにこねーかなあ。夜に野外で観たら凄そう。

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Live In The Still Of The Night / WHITESNAKE

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Live In The Still Of The Nighst / WHITESNAKE

どもども。お久しぶりです。お久しぶりなのにノスタルジー。

WHITESNAKEの2004年12月HAMMERSMITH公演が、ようやくリリース。

ZEPP TOKYOで観たときは2階席でデビカバの老けっぷりもよくわからず、音もまあそこそこかなとか思ってたんですが、こうしてきちんと作品と仕上げられたライブ作品はかなりかっちょいいです。ダグ・アルドリッジとレブ・ビーチ(やっぱりタッピングしないと死ぬんです)は堅実なプレイながら重さと太さに欠けるなあという感じですが、トミー・アルドリッジの立体感があってドコダカドコダカうるさい手数足数の多いドラミングがかっこよくて、今回のバンドサウンドのキモはドラムと言っても言いすぎではないと思います。

オープニングのBurn(Stormbringerも挟む)、続くBad Boysでのバスドラのアタックがすげーかっこいいの。YNGWIEんときは曲間違えたりテンポがトロかったりでなんだかなあと思ったんですが、こうして見るとやっぱ好みのドラムです。

それにしてもこの人30年前からルックスがまったく変わってないのがすごい。と言っても若々しいってわけではなくて、若い頃からしわしわのおじいちゃんみたいなルックスだったのが変わってないというパターン。この人年取ったらどうなるんだろうなんて高校生のときは友だちとよく話したものですが、気が付いたらそう話していた我々のほうがおじいちゃんルックスになってそうです。

デビカバも白シャツとジーンズという服装はイヤらしくオシャレだし顔は老けたといえ体型は維持しているし動きもエネルギッシュ。歌はどれだけ手直ししてるかわからないけれど、ヘヴィメタルスネイク時代の曲中心のセットリスト(Serpens Albusから6曲)をなんとかこなしている。カメラワークは12台のカメラを使用してきちんとした撮影してるし、特に期待しないで買ったDVDなんだけど観てみたら意外とよかった。

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2005年12月22日

Elegies / MACHINE HEAD

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Elegies / MACHINE HEAD

タワレコにRAINBOWとJUDASのDVDを買いに行ったらこれが売ってたのでJUDASをやめて買ってきました。日本盤ももうすぐ出るけど輸入盤なら2700円ぐらいで安かったし!と思ったらAMAZONは1800円強じゃねえか・・・

結局名盤Through The Ashes Of Empireでの日本ツアーはなかったのが寂しい。日本ではあんま売れなかったんかなあ。でもイギリスではそれなりに人気があったのかこのDVDに収録されている2004年12月のBRIXTON ACADEMYはソールドアウトだったらしい。

インタビューだのビデオクリップが収録されてるんだけど、メインはそのイギリスでのライブ。新曲をメインとしながらも過去の曲をバランスよく織り交ぜつつの90分が徹頭徹尾かっこいい。今の彼らのサウンドは伝統的なメタルの突貫力と90年代的なヘヴィネスとグルーヴのバランスがバッチリで凄く好き。3rd4thで多少迷いが見られたような気もするけれど、結果的にたどり着いたThrough The Ashes Of Empireでの「結局俺らはメタルなんだよな」的吹っ切れ感はその紆余曲折があったからかもしんない。でも3rdのFrom This Day好きだったんだよな。このライブでもやってないけど今の雰囲気だとさすがにあの頃のチェケラッチョムードどには抵抗が出ちゃうのかしら。

っつーかDavidianもいいけどやっぱオープニングを飾るImperiumのカッコよさが凄まじい。これ観て燃えないやつはメタル好きとか言う資格はねえ。演奏で印象に残ったのはDave McClainによる、ツブの揃ったツーバスのちょっとしたオカズやタム回し。聴いててすげー気持ちいいです。

あー、生で観たかったなあこれ。という悔しさが味わえるDVDです。

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2005年12月16日

久々に大人買いしました。

イングヴェイのライブ前にいろいろ買いました。っつかね、実は仕事サボったんです。やっぱ年休は使わなきゃね!

CD
Dominate / ADAGIO
Vitalij Kuprij's Revenge / VITALIJ KUPRIJ'S REVENGE
Nosferatu / BLOODBOUND
Winter In Paradise / LAST AUTUMN'S DREAM
Wild On The Run / TOBRUK
Taken / RADIOACTIVE

まだ全部しっかり聴いてないないんだけど、BLOODBOUNDはなかなか。MAIDENに影響を受けた正統派メタルなんだけど、メンバー全員IMMOTALみたいなブラックメタルメイクしてやがんの。STREET TALKのメンバーがこれやってるってのがキューンと来る。あともうちょいでもっとすごくなりそうなのになあ、っていうもどかしさはあるんですが、なんつーかHIBRIAとかで感じたメタル燃え度がけっこう高く、タイトルトラックはかなり好き。

RADIOACTIVEはイングベ参加に惹かれて。なんかイングベらしくないフレーズ弾きまくってます。

DVD
Some Kind Of Monster / METALLICA

話題の作品を。冬休みになったらゆっくり観よう。

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2005年11月24日

BON JOVI LIVE WEMBLEY 1995 FULL UNEDITED SHOW

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どもども。BON JOVIの来日が決まったことを記念してヲタク臭いアイテムの紹介です。

BON JOVIの1995年6月23日ロンドンはウェンブリースタジアム公演のブートDVDです。この年彼らは3日連続ウェンブリースタジアムをソールドアウトにしてその最終日をビデオ収録し、オフィシャルビデオとして発売したわけですが、このブートはそのときの3公演の初日を完全収録したもの。

で、どうせオーディエンス録画の汚いシロモノだろーと思っていたんですが、実際届いたのはプロショット(というかスクリーン用の映像)で、音もサウンドボード。2時間半のライブを1枚のDVDに入れるためにビットレートが低くなってしまっているのが残念ですが、間違いなく関係者から流出したものでマニア垂涎の品です。

ただ、残念というかわけがわからないのは途中「ヴォーカルとギターの音が完全に消える」ことが多いこと。特にYou Give Love A Bad NameとWild In The Streetsはひたすらティコのドラムだけが聞こえてます。Alwaysのラスト、リッチー入魂のギターソロ!と思ったらその瞬間ギターの音が消えるとか。卓でミキシングするときの都合なんかな。きちんとバンド全部の音が聞こえるときのバランスはすごい好みの音(ギターの音がバカでかい)だけに残念。

あとはスクリーンで流す映像そのまんまだからさ、曲の途中でいきなり馬が走ってる映像とかビデオクリップでも使われてた映像が映ったりする。

そんなわけで、意味不明なとこもいっぱいあるこのブートなんですが、それでもやっぱこの時期のBON JOVIは素晴らしい。セットリスト的には長い割にはBorn To Be My Baby、In These Arms、These Daysとかはガッツリ外されているんだけどもGood Guys Don't Always Wear Whiteが演奏されたりしておもろいし、I'd Die For Youもまだ生きてる。そしてとにかく演奏。ホント素晴らしい。Blood On Bloodはアルバムも何倍もドラマチックだし(ギターもヴォーカルも聞こえないけど・・・)、Dry Countyの迫力と言ったら言葉を失うほど(ギターソロのクライマックスでギターの音消えるけど・・・)。

ジョンのヴォーカルは「自分でも声が出るのが楽しくてしょうがない」っていうのがよくわかるぐらい伸びやか。オフィシャルで発売されたLive In LondonのAlwaysのラストでは「神アドリブ」かましてますが、その日よりもさらにこの24日のほうが調子がいい。そして今となってはパワー不足の寂しさを感じることも増えてしまったティコのドラムもこの時期が全盛期。ギターとヴォーカルの音がオフになった音を聞くことでティコの凄さが際立つ。Keep The Faithとか鳥肌もんだよ(これ95年のライブについて書くたびに言ってんな)。

ああ、これ音声が問題ないヴァージョン出ないのかなあ。マジいいライブだこれ。こういうの見ちゃうと来年のライブは楽しみというより不安。リッチーももう全然声出ないだろうし・・・。ジョンの声域が狭くなってきていることはぶっちゃけしょうがないし、そのときそのときの声にあった素晴らしい曲を書いてくれればいいやとは思ってるんだけど、一番不安なのはやっぱティコのドラムなんだよねえ。2001年ぐらいまでは素晴らしいドラムだと思ってたけど、最近はずーっと物足りなさを感じてるんだよなあ。だからサポートメンバー入れたんだろうけど、そういうのでカバーできない部分もあるしなあ・・・。

という超後ろ向きエントリーでした。

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2005年11月10日

Their Law -The Singles 1990-2005- / THE PRODIGY

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Their Law -The Singles 1990-2005- / THE PRODIGY

新作が出て来日したわりにはあまり話題になってない感じがするTHE PRODIGYのベスト盤。いくつかのヴァージョンが出ているみたいだけど、俺が買ったのはシングルのB面曲やライブトラックが収録されたDISC2に加えて1997年12月20日のロンドンはBRIXTON ACADEMYでのライブ映像や全ビデオクリップ等が収録されたDVDもついての3枚組ヴァージョン。

俺が目当てにしていたのはそのDVD。このロンドンでのライブはなぜかNew York 98とかNew York 97.11.22とか間違った日付とロケーションでブートが出回っていて、映像はかっこいいのに放送禁止用語にはご丁寧にピーが入っていてすげーうざかった。Oh My God, That's The Funky Shitなんかマキシムが叫ぶたびにピー入っててもうジャマでジャマで。今回リリースされたDVDはそのブートと同内容ながらもちろんそのピーはないし、画質はいいしでほんとうれしかとですばい。THE PRODIGYの入門編としてはベスト盤よりもこのDVDのほうがいい。

こういうエレクトロニックなサウンドって少し経つだけで古臭くなってしまいそうなんだけど、8年も経ったというのにこのライブはすげーかっこよくて刺激的。FAT OF THE LANDが大ヒットし、大盛況だったツアーのクライマックスなのでとにかく漲る自信が凄い。

彼らのサウンドって変に知的・都会的にならず、バカで田舎的なアグレッションが漂っているところがいい。カルト宗教の狂信者のようなマキシムと地獄のボスキャラにパシらされる小物悪役のような卑屈で馬鹿っぽいキースという二人のベタキャラによるところも大きいんだけど(いやリロイも存在感ありました)、サウンド自体も都会的なテクノというよりもわかりやすいロックのダイナミズムがある。サポートギタリストの存在感が大きかったり、ライブではドラマーを起用しているってとこも大きいんだろうけど、やっぱテクノっつーよりベタにロック。洗練されたオシャレ感はないにせよ、だからこそその野暮ったさがカッコいいというか。

実際の彼らのライブってなんか流れが微妙に悪くて1曲1曲はかっこいいのにダレる時間が長かったっつー印象があるんだけど、このライブDVDではコンパクトにヒット曲が連発されるし全編アゲアゲなムードが続く。FAT OF THE LAND以前の、Voodoo People、Poison、Their Lawといった曲もライブで聞くと今でも通ずる鋭角性を保っていて体に響いてくるし、ラウドミュージックファンならこのライブ映像は一見の価値ありだと思う。

ビデオクリップに関しては、80年代は痛かったと言う人に90年代だって今となっては痛かったってことを実感していただきたくなる1stのクリップが凄い。きゃーなーりー恥ずかしい。

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2005年11月09日

Dark Light / HIM

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Dark Light / HIM

サマソニのライブを観てキモいだの太ももの間に手を挟んでクネクネしながら歌うなとかピーピー言ってたんですが、ダークでメランコリックなメロにまみれたサウンドは好みだし、音だけで聴いたら好きになれるんじゃね?と思って買ってみました。初回版安いし。っつーか同じくヴォーカルがキモいTHURSDAYだって好きなのにHIMだけキモいと切り捨てるのはよくないね!

という目論見どおり、音だけ聴くといい。ライブでもそのアピアランスに慣れてしまえばその曲の良さと堅実な演奏を楽しめるモノだった、と今さらながら思うんだけど音だけ聴いてるとほんとズルいレベルに達している曲が沢山あって、特に前半のテンションの高さはすげえ。次から次へとメロが印象的な曲が飛び出してくる。ぶっちゃけ音だけでもキモさとか鬱陶しいナルシズムが音に纏わりつきまくって「これ好きになったらヤバいっすよムード」はかなり出てんだけど、そういうのに対する好き嫌いを一歩飛び越えて「ここまでやるならそういうとこで文句つけてピーピー言うのもバカバカしいかも」とも思わせる説得力が音楽に伴っている。

ちょっと物足りないなあと思ったのは、もっと悲哀とか絶望、痛みみたいのが感じられるバンドなんかなと思ってたら意外とアッサリしているとこ。俺の勝手な先入観なんだけど。まあそれがないおかげで「高品質なメロハーアルバム」として楽しめるのも確か。

っつかね、そのメロハーっぽさとヴォーカルの声質のせいか、聞いてるとTENを思い出したりすんだよ。ちょっとメランコリックでナルシスティックで軽快になったTEN。TENの再録ベスト、Stay With MeもWait For Youも入ってないってどういうことなのよ!と憤りつつ。

関係ないけどLUNA SEAって今ヨーロッパで売り出されたらすげー人気出そうだよね。

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Beyond The Shadows / DARK ILLUSION

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Beyond The Shadows / DARK ILLUSION

1982年~1985年にかけて活動していたバンドが再結成してリリースしたアルバム。再結成だけどデビューアルバムだったりします。

L.A. Metal誕生以前のアメリカンメタル(RIOTとかY&Tとか)やNew Wave Of British Heavy Metal的なリフワークと軽やかに疾走するというよりも重心が後ろにあるがゆえにドタドタとした重さも感じさせるスピード感、そして80年代初期の北欧メタルバンド特有のどこかダークな世界観と時折の哀メロが胸をキュンとさせてくれます。明快な甘さやコテコテに逃げない(逃げれない)実直なサウンドがいい。ネオクラ・美旋律以前の北欧メタル。キーボードはキラキラよりもハモンドで、みたいな。南海キャンディーズのしずちゃんのような様式美シャツでもイングヴェイのようなタケちゃんマンジャケでもなく、袖を切り落としたGジャンとバッヂが似合うサウンド。

そんな感じで音楽のフォーマット自体は古臭いんだけど、トーマス・ヴィクストロームやヨナス・オストマンと言った職人達の演奏としっかりしたサウンドプロダクションでただのノスタルジーに終わらない説得力を感じさせてくれていて、聴いていると妙に血が騒いでくる。まあヴォーカルがトーマスだから妙に「明るさ」も感じられたり、彼ならではのコーラスも沢山あることから「そこがいい」という人もいれば「ダミ声ヴォーカルだったらもっといいのに」という人もいるかも。

関係ないけど、このアルバム聴いたあとにYNGWIEのUNLEASH THE FURY聞くと、YNGWIEがやりたいのも「この頃の攻撃的なメタル」なんだなーって感じがした。Locked & Loadedとか聞くとそう思わん?

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2005年11月06日

Scab Dates / THE MARS VOLTA

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Scab Dates / THE MARS VOLTA

THE MARS VOLTAにとっての「曲」というのは、それ自体を目的に演奏されているわけではなく、インプロで溜めに溜めたエネルギーを爆発させる起爆装置のようなものだと思う。アルバムではきちんとした流れの中で構成されたシンプルな形で収録されているが、ライブを観るとアルバムに収録された音楽はその「起爆装置一覧」であり、THE MARS VOLTAの凄さというのはインプロでのエネルギー充填の力と、起爆装置によって引き起こされるそのエネルギーの爆発力の凄まじさによるものだということがわかる。

もちろん起爆装置一覧だけでも素晴らしいんだけど、ライブにおける「エネルギー充填→爆発」の過程を観て、感じてしまうとスタジオで演奏・記録して作られたアルバムが物足りなくなってしまったりもする。いや今でも大好きだけどさ。

フジロックでのライブではそんな彼らの個性が極端な形で炸裂。1時間のライブ中、45分はインプロ。「キツかった」という人が多いのももちろんなやりたい放題ライブだった。ただ、フルートやサックスなどが入って退廃的であると同時にメルヘンチックであり、薄汚くも神々しさすら漂うそのインプロによって蓄えられるエネルギーは以前よりも明らかに容量が増えていた。そして起爆装置によって着火された瞬間にもたらされたカタルシスは本当に凄かった。

そんな彼らがライブアルバムをリリース。1曲目は得体の知れない赤ん坊の泣き声だとか車内放送みたいののコラージュが延々と続く。こういうの聞くと、聞こえるはずがないのに"Dr.Davis, Telephone Please..."という声を聞いてしまうところに自分に滾る熱いメタル魂を再確認。

そのコラージュが終わるとフジでも味わえた彼ららしいライブ。77分のランニングタイムで実質的には3曲ぐらいじゃね?さすが。

今まで観たライブではジョンのドラムがバンマスとなって引っ張り、その上でオマーがひたすらオナニー的インプロをカマす(2ちゃんでこれを「オマニー」と名づけられてた)感じだったんだけど、このライブアルバムではサウンドバランスのせいかジョンのドラムが若干抑えめに聞こえ、その分各楽器の主張も明確に聞こえる。ライブではドラムスや混沌としたサウンドに埋もれがちなオマーのギターもとにかくすげー。このライブアルバムではジョンよりもオマーがバンドを引っ張ってる感じがする。キーボードのプレイも素晴らしく耳を惹くし、こうして聞くとベースもやっぱりうまい。バンド全体としてのインプロでのまとまり方がすげー。バラバラにプレイしてるのに1+1=2以上にしちゃってるところにバンドとしての凄みがある。

だーっと聞き流してるときは「いつまでやってんだ」って思うし街を歩きながらウォークマンで聴いてもさっぱりわかんねーんだけど、家でゆっくり向かい合おうとして意識をそっちに向けてしまうとあっという間に引きずり込まれる。構築美を求める人には向かないアーティストだとは思うけど、インプロのスリルやエネルギーを愛する人ならば、スタジオアルバムよりもこのライブアルバムのほうがこのバンドの凄さを実感しやすいと思う。いやすげーっす。かっちょよすぎ。

とやっぱMVすげーっすよモードな俺も、さすがにラストに収められたコラージュはキッツい。12曲目(正確には5つのパートにトラック分けされたCicatrizのラストパート)に入るとライブサウンドが遠くへフェイドアウトし、かすかなその音よりもはるかに大きい音で1曲目のようなコラージュがミックスされている。そのパートが10分ほど続いたところでまたライブの演奏が戻って来るんだけど、さすがにここまで来ると僕ちんも理解できないです。ライブだったらもしかして空気に圧倒されて10分経っちゃうかもだけど、家にいてこれぼーっと聞くのはキツイです。どういうとこで経験値積むとここらへんも気持ちよくなるんだろうか。

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2005年10月19日

Used And Abused ...In Live We Trust / IN FLAMES (DVD)

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Used And Abused ...In Live We Trust / IN FLAMES

日本盤の発売が遅れているIN FLAMESのライブDVD。ようやく北米版はリージョンフリーらしく、それが日本の輸入盤店にも普通に並んでいたのでゲット。

このパッケージでメインになるのはイギリスはHammersmith Apolloでのパイロ炸裂しまくりのビッグ・ショウ、そしてSoundtrack To Your Escape完全再現プラス過去の代表曲の2部構成からなる地元スウェーデンはSticky Fingersでのクラブギグという毛色の違う2本のライブを収録したDVD1(DVD2はツアードキュメント・インタビュー・ビデオクリップを収録)。

まずパイロ炸裂しまくりのHammersmith公演。80年代のMOTLEY CRUEやKISSのごとき炎の演出を多用しながらもその演出に負けないだけのパフォーマンスだ。彼らのライブを何度か観た印象では、HELLOWEENと同じくその道のパイオニアと言える存在でありながらライブパフォーマンス(というか演奏)にフォロワーたちをだまらせるだけの貫禄がないと思っていたのだが、このDVDではアメリカツアーを経験したバンドならではの自信あふれるアピアランスをしっかりしたカメラワークで捉えるとともに、ショボかったりすることも多い出音がきちんとミックスされて迫力あるサウンドになっていることもあって、実際のライブ以上に彼らのかっこよさを実感できる素晴らしいライブ映像となっている。いいのか悪いのかわからんけど、かっこいいDVDが観れるのはいいことだ。

セットリストのほとんどを占める中期以降の楽曲も、初期とは違った毛色のサウンドながらも英国ニューウェーヴ的な暗黒ムードを醸し出しており、ライブでかなりの力を発揮していることがわかる。Cloud ConnectedとかめちゃめちゃかっこいいしMy Sweet Shadowはライブのエンディングを飾るにふさわしい名曲だ。やっぱIN FLAMESは最近の曲のほうが好きだなあ。

そしてこのHammersmithのライブではPANTERAのFuckin’ Hostileをダイムバッグ・ダレルに捧げてプレイしているのだが、そこからBehind Spaceになだれ込む瞬間が鳥肌が立つほどかっこいい。

Sticky Fingersのライブは本当に小さなクラブでの演奏で、音のタイトさはHammersmithよりこっちかも。Soundtrack To Your Escape完全再現されるよりは普通に過去のアルバムの曲とミックスしたセットリストのほうがファンとしては楽しめそうな気もするが、まあそういう企画ライブなんだからしょうがないし第二部もあるからいいのか。

映像・カメラワークも一級品だしIN FLAMESファンのみならず、単純にメタルのカッコよさを味わいたい人にもオススメだ。アンダースがヘドバンするたびにスポーンとドレッドが抜けてしまうのではないかという緊張感を味わいつつ観て欲しい。

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2005年10月17日

Girls Girls Girls Tour / MOTLEY CRUE (DVD)

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こないだのROCK AM RINGフェスでの映像を観て、やっぱ今の彼らの演奏はキツいなあと思って昔の映像を探すことにした。AIRSとかでも売ってるんだけど、実際買うのはアメリカからのほうが画質・映像がいいし安いんだよね。

まず今回購入したのは日本ではTACOMA '87というタイトルで出回っているブート。良くみるとあんまりかわいくないNASTY HABITSのエイミー、ミック・マーズ夫人の出身地タコマでのライブであります。届いたのはエアーズでチェックしたのより画質・音質ともに良かったので一安心。とは言うものの、カメラワークはイマイチで、パイロが炸裂してるのにメンバーのアップを映してるもんだからその瞬間を捉えられていなかったりってのがよくあったりする。音はサウンドボード直なのか歓声がほとんど入ってないんだけど、ドラムサウンドが好みだしギターの音もデカくて生々しいので好みの音。

やはり今の彼らの映像を観た後だとカッコよさも際立つというか。ヴィンスは細くてまだまだかっこいいし声もずっと太い。そしてミックじいちゃんが若々しく動いてるというのもそれだけで感慨深い。バンドサウンドは、巧くは無いけど今の彼らにはない勢いがあふれているし、やっぱこの時代はカッチョいいです。

そしてこのブートの見所といえば、やはりトミーの回転ドラムソロ。Wild Sideのビデオクリップを観る限り、ゆっくり回転してるのかと思ってたんですが、ぐ・ぐ・ぐ・ぐ・グリン!って感じで結構勢い良く回ってんのね。これ乗ってる方はかなり怖そうです。

決定版とうたわれていながらも日本で入手できるのはクォリティがイマイチなのばかりの89年のカンザス公演もオーダーしたんだけど、果たしてどうかしら。

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Swallow This Live! (DVD)

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全盛期の彼らのプロショットライブブートでフルライブ収録なのって今まで観た事なかったんですが、今頃になってポツンと出てきました。画面にはVH-1 CLASSICのロゴが入ってるから最近放送されたりしたんかな。1991年のSouthern Californiaでのライブで、映像のクォリティは文句ナシ。音質もよくはないけど問題なし。っつーか彼らのブートとしては文句ナシに決定版。カメラワークはあまり良くないけれどクレーンも使って撮影してるみたいだし素材としてはオフィシャルでリリースされてもおかしくないだけのレベル。というかCDで発売されたSWALLOW THIS LIVEと同じ音源な感じなので実際リリースする予定だったんだろうな。

そしてもちろん!そういう映像制作者側のレベルがどうのとか関係なく、ヘタッピ。さすが!と嬉しくなるぐらいヴォーカルも楽器陣もヘタッピ。彼らの場合、ヘタクソではなく、ヘタッピといいたくなるのが肝です。彼らにとって演奏力というのは高めるものではなく、愛嬌をふりまくためにあるのでこれでいいのです。

残念ながらパイロ炸裂な場面はあまりない(この時代にありがちな引きの画を効果的に使わないカメラワークのせいでわからないだけかもしれない)ですが、彼らならではのライブの楽しさ、楽曲の良さ、華やかさは存分に味わえる。オフィシャルリリースされたリッチー・コッツェン在籍時のライブもいいんだけど、やっぱFRESH & BLOODんときのツアーこそがPOISONのキャリアのハイライトだと思うので、このブートはかなり嬉しいです。

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2005年09月27日

Everyone Into Position / OCEANSIZE

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Everyone Into Position / OCEANSIZE

イギリスはマンチェスター出身の5人組。各地で大好評なので煽られ弱い俺は思わず購入。2ndアルバムらしいが俺は2002年ごろにリリースされたA VERY STILL MOVEMENTっつーシングルしか持ってなくて、しかもあんま聴いてなかった。ってことで「いや僕前からこのバンド知ってましたから」と言うためにあわてて聞き返す。ちょっとオルタナがかったヘヴィロックっぽいところもあればMOGWAI的な轟音ポストロック的なとこもあり、またプログレ的なとこもアリで当時からかなり懐の深みを見せ付つけている。

で、その間の1stアルバムだとか色んなとこをすっ飛ばしていきなり2ndを聴いた。冒頭はTOOLっぽい雰囲気を漂わせつつも今となっては懐かしい感じのオルタナ・ヘヴィロック風味なんだけど、不穏な雰囲気を感じさせながらも静かに流れている川が徐々に荒れ狂っていき、気が付くとその濁流に飲み込まれたかのような感覚を覚える。全体的には俺が持ってるシングルの頃と同じ方向性なんだけどその説得力というか世界の厚味はかなり増している。

真っ暗闇の中川に飲み込まれて体を弄ばれているようなウネリがあるかと思えばどこか想像もつかないぐらいの未来を感じさせられる音の広がりがあり、さらには静謐な世界で音を紡いでいく幻想的で美しい曲もある。それらがきちんと一つの世界観の中で描かれており、アルバムトータルで77分近い長丁場ながら通して聴いている間はその世界の微生物から動物の一生、そして地球全体の動きまでを俯瞰しているような感覚で、あまりの密度の濃さとスケールの大きさに圧倒されながらも目を離すことができないまま時間が過ぎ去っていく。

なんか相変わらずわけのわからない表現になってしまうんだけど、この手のポストロック的な音楽を聴いていると俺の場合人工的なものではなく自然の壮大な風景とその圧倒的な存在への畏怖みたいのを感じてしまう。スピリチュアルな体験に近いというか。もちろんそれらがどれも同じ感覚というわけではないけれど、なんか聴きながら自分が漂う世界はどれも人間の叡智が太刀打ちすることができない宇宙だの自然だのの根源的な存在を感じさせるというか。あ、もっとわけわからんね。もちろんこの手の音楽にもそういう感覚を喚起させてくれずに終わっちゃうアルバムがあってそういうアルバムはあまり好きになれずに終わるんだけど、このOCEANSIZEはかなりのトリップ感覚を味わえる。確かに話題になるだけのバンドだなあと感心してしまった。1stも買わなきゃ。

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Grand Illusion / NOCTURNAL RITES

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Grand Illusion / NOCTURNAL RITES

前作NEW WORLD MESSIAHは、初期のムードを取り戻してしまったというかAFTERLIFE以降の持ち味であった剛性が後退してたもんで楽曲的には悪くなかったものの、超ヘヴィメタルな名盤SHADOWLANDの次としてはどうにも物足りなかった。KAMELOT、EDGUYと並んで「凡百のお子様メロスピバンド」とは一線を画す力強さと存在感を持つ彼らのことは本当に大好きなんだけど、新作出ますよっつーニュースを聞いたときも「日本では未だに初期の方が人気があるようだしジョニー・リンドクヴィスト加入以降の鋼のような剛性と熱いメロディーが共存する”かっこいいヘヴィメタル”ではなく前作や初期のようなソフトな印象のアルバムだったらイヤだなあ」っつー不安があった。

しかし、そんな俺の不安をわかってくれたのか、この新作ではAFTERLIFE、SHADOWLANDで聴けたヘナチョコ感皆無のストロングな音がしっかりと戻ってきていて一安心。まあ相変わらずどこかこじんまりとした印象の音像(ドラムサウンドのせい?)だったりギターソロの音色は妙にキーボードっぽいペローンとした音で好きになれなかったりはすんだけど、前作よりははるかにカッコイイ音で重さがあると同時に躍動感もある。ぶっちゃけ楽曲の出来は名盤SHADOWLANDほどではなく前作と同じぐらいだと思うんだけどもこの剛性が戻ってきただけで印象がグンとよくなる。

ミッドテンポのFools Never Dieはオープニングとしてはつかみが弱いものの、アップテンポのNever Trustはジョニーの熱い声質が活きていてキャッチーかつ力強い。KAMELOTのMarch Of Mephistoを想起せずにはいられないナグラレルファーのクリストファー・オリヴィクスやイェンス・ヨハンソンをゲストに招いたヘヴィなCuts Like A Knifeもかっこいいし、彼らならではのメロディーが堪能できるEnd Of Our Ropeもいい。何気にボーナストラックのUnder The Iceも愁いを感じさせる哀メロがなかなかのステキな疾走ナンバーだ。

そんな感じで聴き所はいくつかあるのだが、そんな中でもナウなヤングのハートをガッチリキャッチしそうなパンチの効いたゴキゲンナンバーが3曲目のStill Aliveだ。イントロのギターフレーズからして欧州のメタルキッズがおーおおおおーとご唱和してしまいそうな雰囲気が漂っているが、サビメロの展開がヤバイ。”So there is nothing to revive, I’m still alive”のメロディーは「ちきゅうーをまーもーるーのだー、のくたーなーるらーいつ!」と拳を振り上げて歌ってしまいたくなるヒーロー戦隊物的な雄々しさに満ちている。いやこうやって茶化してしまってはいるけれどジョニーが歌いあげると「クサイ」ではなく「熱く雄々しい」メロディーに聞こえてものすげー血が騒ぐ。熱いぜジョニー!

とにかく現在このStill Aliveにハマってしまってて、今年度のベストチューンにしちゃいそうな勢い。この1曲のためにアルバム買って聴きやがれ!あ、SHADOWLANDも絶対聴けよな!と控え目にお願いしたくなるぐらい。

あとはこの曲をライブで聴ければ万々歳。前回の初来日んときは初期偏重のセットリストだったしHAMMERFALLの前座ってことでサウンド面でも必ずしもベストって感じではなかったので、今度こそ万全の態勢で来日してShadowlandやStill Aliveをプレイして俺の血を燃やし、涙させて欲しい。

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2005年09月23日

You Can't Trust A Ladder / THE MYRIAD

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You Can't Trust A Ladder / THE MYRIAD

HEIR APPARENTやFIFTH ANGELを輩出した奇跡の街シアトル出身のニューバンド。COPELANDのヴォーカルがプロデュースしてるらしい。

かき鳴らされるギターと力強いリズム、そして悲壮感さえ漂うメロを歌う儚げなヴォーカル。1曲目を初めて聴いたときに真っ先に浮かぶのはMUSEだ。RADIOHEAD好きだったんすけど、MUSE聴いて衝撃受けましたよ!とか目を輝かせて言いそうな感じの音。初期RADIOHEADのアメリカ流みたいのがPALO ALTOの1stなら、初期MUSEをアメリカンロックでやってみましたよ、って感じなのがこのTHE MYRIADというか。ただ、中盤以降はMUSEというよりもしっとりとしたアメリカンロック的な雰囲気が強まっていき、こちらのほうが彼らの本分なのかな、という気も。

まだまだこいつらならでは!っつー個性みたいのがしっかり確立されているわけじゃないし曲の出来のバラつきも大きいんだけど、中盤以降を聞いていくとMUSEをそのままやりたいというよりも、単純にいい曲を追求する中で時折MUSE的手法を使ってメリハリつけたいだけだったんだなってのがわかる。1,2曲目のインパクトに引っ張られてしまうけれど、それだけでも終わりたくないのよねっつー誠実さも伝わってくるアルバムだと思う。

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Hide From The Sun / THE RASMUS

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Hide From The Sun / THE RASMUS

胸を締め付けるメロディーを反則モノのハスキーヴォイスが歌い上げるポップロックという路線は前作DEADLETTERSと変わりないが、前々作で聴かれ、前作にも残っていた快活さはさらに後退し、その分ダークでメランコリックなムードがより強まった。前作収録のIn My LifeとTime To Burnを曲作りの鍵としたと語っていたが、それはリズム面のパターンということだろうか。まあダークでメランコリックなムードが強まったとは言え基本的には前作を踏襲した作風なのだが、音に漲る自信が前作とは大きく異なっている。「前作で成功を収め、勢いに乗っているところでリリースされた新作」という先入観があるからなのかもしれないが、この自信漲るサウンドがバンドとしての存在感を前作より一回り大きくしたようにも感じる。

肝心の楽曲もなかなか充実している。前作の方が瞬殺ナンバーは多かった気がするが、今回は全体的なレベルが底上げされたというか。楽曲の形態としてはあまりバラエティに富んでいるわけではないのに1曲1曲がきちんと独立した魅力を持っているのはメロディーの引き出しの豊富さと繊細なアレンジ力の成せる技だろうか。また、バンドの演奏もギターが若干太く厚く聞こえるパートが増えたこと、リズム隊の弾力性が若干強まったように感じることなどから音のメリハリがより一層強調されていて聴いていて気持ちいいサウンドになっている。

今の時点で特に気に入っているのはヘヴィなリフ使いとサビの壮大で狂おしいほど切なく哀しいメロディーが絶妙なLast Generation、果てしなく空に広がっていくようなサビメロがありながらも根底に流れる哀感が胸を締め付けるKeep Your Heart Brokenあたり。

ライブも場数をこなしてきただけのパフォーマンスだったし哀メロ派とかそういうくくり抜きで色んな人に聞いてもらいたいバンドだと思う。

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Have A Nice Day / BON JOVI

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Have A Nice Day / BON JOVI

ウィッキーさん的な親密さを表したものではなく、「あっそ。別にいいんじゃね?どうぞご勝手に」という意味でのHave A Nice Day。インタビューを読んでると随分と大人というかセレブっぽい考え方になってきたなという雰囲気。自分のことで精一杯だった若造が大人になって政治にも興味を持って、みたいなベタな道を歩んできてます。

そんな中で「今のアメリカに住む俺を表現しなくては」的な意気込みが強すぎるようなジョンの言動は正直日本に住んでる俺から見るとやや滑稽に映ったりもするんだけど、こういう空回りの必死さってのは昔からBON JOVIの最大限の持ち味だったわけで、その向けられる方向性は変われども中身は全然変わってねーなと思ったりする。ここらへんは昔やってたhpでいろいろ書いたのでよろしかったら見てください。このコンテンツしかマジメに書かなかったなあ。まあでも言ってる内容関係なくBON JOVIがポリティカルてやっぱちょっと痛く見えたりもして。そこらへんはジョンの生まれ持ったキャラってことで。

そんな強い意気込みとは裏腹に、今作は前作前々作の延長上にありながらも肩の力が抜けたかのような伸び伸びとした作風が印象的。もちろん職人と言っても過言ではないスキルから生み出されるポップな楽曲群の出来には文句のつけようもない。

ただ、第一印象としてはなんかイマイチで、やっぱ大映ドラマ的なBON JOVI像を期待してしまう俺は前作のUndividedだとかそれこそBorn To Be My Babyのようなハードロックチューンが欲しかったと思ったし、もっとつまんない曲がざくざく入っててもいいからもう1曲強烈な印象を残す曲が欲しかったなあ、とかNovocaneとWild Flowersを入れるならその代わりにDirty Little SecretとNothingを本編に入れればよかったのに・・・とかいろいろ思ってました。CrushやBounceよりずっといいじゃんみたいな感想を多く目にした反動もあったりしたんだけど、改めて何回も聴いていくと全体の空気というかその伸びやかな作風はすごく心地よいし、なんだかんだで気に入ってきてしまった。いやきてしまったってことはねーか。

Have A Nice Dayのインパクトは絶大だし、ミッドテンポでちょっとヒネた感じなとこがジョン好みって感じのI Want To Be Loved、ラストクリスマスっぽいメロが一発でアタマに残るWelcome To Wherever You Are、メタリックなリフとアップテンポな曲調、そしてライブのオープニングにもってこいの歌詞のLast Man Standing、ジョンのアヒル声が映えるポップチューンLast Cigarette、伸びやかでありながら仄かな哀感漂うメロとジョン節炸裂の歌詞がたまらないI Am、映画だとかフットボールのオーナーだとかいろんなとこに手を出してもやっぱり音楽で自分を表現することこそが自分の誇りであるというステイトメントをアップテンポで力強いメロに乗せたStory Of My Life。デビュー以来20年間こんだけ高いレベルの楽曲を作り続けていく才能には恐れ入る。

なんだかんだで結局ヘヴィローテーションしてしまってるし、やっぱBON JOVIて凄いわね、ということを実感させられるアルバムです、結局。

上に書いたNothingはI Am(これけっこうハマってきた)に雰囲気似てるから外されたのかもだけど、しんみりといい曲なのでシングルとかできちんとリリースされるといいな。

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Are You Dead Yet? / CHILDREN OF BODOM

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Are You Dead Yet? / CHILDREN OF BODOM

アレキシて美形美形騒がれてるけれど、頭と体のバランスが悪くて全然かっこよく見えない・・・という「広末って性格悪いらしいよー」みたいな難癖つけたがる女みたいなことを、僕は常々思っております。

現代的なメタルとSKID ROWのSlave To The Grind的野性味の融合を目指していると思われるアレキシに過去のようなキラキラ☆メロデス(ブラ)学園路線を望んでもしょうがないのだが、彼らの大きな魅力であった、ダセーけどとにかく血が騒ぐキメパートのスリルとメロの煽情度が後退したのはやはり寂しい。その分新たに取り込んだメタルコア風味が新たなカッコよさを生み出してくれていればいいんだけど、それも先達のバンドのかっこよさを超えているかと言うこともない。まあ徹頭徹尾つまらないわけでもないんだけど印象としては平坦かつ中途半端でリアクションとりにくいよしずちゃん!と言いたくなるアルバムだ。聞き込めば印象が変わるのかもしれないが、こういう音楽には強烈なインパクトがあってなんぼだと思う。

ボーナス2曲も選曲のインパクトのみでアレンジにも演奏にもまったく面白みがなく、原曲の出来の良さが際立つだけで騒ぐほどのものじゃない。ただ、Talk Dirty To Meでのアレキシのヴォーカルはキン肉マンがダダをこねているときの声に似ていてそこはレスペクトだ。

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2005年06月23日

The Moon Is A Dead World / GOSPEL

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The Moon Is A Dead World / GOSPEL

ちょい前まではプログレッシヴなロックというとRADIOHEAD、MOGWAIやそのあたりのポストロック周辺が一番元気だったような気がするけれど、最近はISIS、CONVERGE、そしてもちろんTHE MARS VOLTA等のハードコア出身のバンドたちがそのポストロック的なプログレ感性を貪欲に取り込んでいて、音楽を聴いていてすごく「プログレッシヴ」だなあって感じる。今更何言ってんじゃって感じのことかもしんないんすけども。

このバンドもそこらへんのハードコアなプログレッシヴ感覚を見事に受け継いでいて、轟音を撒き散らしながらもそこにThe Moon Is A Dead Worldというタイトルそのままの混沌としつつもどこか神秘的というか幻想的なムードを醸し出している。キーボードの音色やロマンチシズムはKING CRIMSONやその辺の70年代プログレな雰囲気で、そこにISIS、MOGWAI的な音響アプローチ、THE MARS VOLTAばりのリズムの激しさ、そしてCONVERGEのような錆びたカッターで切られていくような肉体の痛みを伴う焦燥感と鬱蒼とした文学性(何それ)という真似しようとしても難しいところをぶち込みあっさりと、というと語弊があるが少なくとも衝動性も存分に感じさせるだけの説得力でたたき出してしまっている。これがデビューアルバムってすげーな。

音楽のタイプについて記述しようとすると昨今の激烈音楽のおいしいとこ、みたいな説明になってしまうかもしれないが全然アタマでっかちになってないし、ドラムを中心としてガツンガツンと攻めてくるところ、ギターとキーボードが限りなく大きな世界を紡いでいくような静のパートなど音圧だけの問題ではない圧迫感と単なるフレーズの組み立てだけでは成立しえない美しさがあって、とにかく聴いていて圧倒される。今年度上半期ベスト候補ってぐらい気に入りました。

ちなみにアマゾンから取ってきたジャケ、実際届いたジャケと全然違う。俺が持ってるのは黒字に紫でとある星の深海のような得たいのしれない画が書いてある。なんで違うんだろ。

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Aperitif For Destruction / RICHARD CHEESE

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Aperitif For Destruction / RICHARD CHEESE

どこもミュージカル・バトンネタばっかでおもろくないのでシコシコ更新してやる。

このRICHARD CHEESEという人はラウンジミュージック界では有名な人らしく、LOUNGE AGAINST THE MACHINEという頼もしい名前のバンドを率いて膨大な数のアルバムをリリースして活躍しているのだが、その内容がそのときそのときの旬なヒットソングをカクテルの似合うラウンジミュージックに仕立てあげまくっちゃってるというカヴァーアルバム。

このアルバムが何枚目になるかまったくわからないんだけど、今回カヴァーしているのはSLIPKNOT(People = Shit)、GUNS N' ROSES(Welcome To The Jungle)、U2(Sunday Bloody Sunday)、ALICE IN CHAINS(Man In The Box)、METALLICA(Enter Sandman)等々・・・。他の曲も洋楽好きなら自然と耳に入ってくるであろう有名な曲ばかりで、メジャーマイナー問わず「そのとき流行ってる曲」を無節操にチョイス。で、それらのアレンジがまた秀逸でチークダンスが似合うようなしっとりムードからスウィンギンニッポンなノリノリムードまでビシっとかっこよく決めちゃってる。Enter SandmanにはMr. Sandmanのフレーズを絡めつつだったり、歌詞や掛け声にちょっとした皮肉を加えてみたりと聴いていて全然飽きない。もちろん原曲がいいからでもあるんだけどさ。

ヘヴィロック系では他のアルバムでWHITE ZOMBIE、SLAYER、PRODIGY、LINKIN PARK、NINE INCH NAILS、MOTLEY CRUE、SYSTEM OF A DOWN、DISTURBED等々が取り上げられている。

ちょこっといじってみましたレベルに留まることない徹底的なアレンジと「これでメシ食ってるからね」的な余裕を感じさせながらもしっかりと本気モードが漂う演奏、さらにはアメリカ人らしいベタなユーモアと下ネタ、そしてもちろん原曲の良さもあいまって「これはこれでいい」と思わず聴き入ってしまう説得力がある。この手のネタアルバムではパット・ブーンのメタル馬鹿一代という作品があるが、それ以上に笑える作品ばかりなので、「友だちに聞かせて笑わせたいCDコレクション」には是非加えておきたい。ライブ観てみたくなるよ。

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2005年05月18日

Mezmerize / SYSTEM OF A DOWN

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Mezmerize / SYSTEM OF A DOWN

政治的なテーマで辛辣なメッセージを発信しつつもそこにたっぷりユーモアを絡めてくるS.O.A.D.流儀は今作でも健在。メタリックなリフとリズムで疾走するかと思えば唐突にR&Bになったりポルカになったりタンゴになったり、アルメニア系の血を強く感じさせる東欧風のどこか物悲しいメロディーを朗々と歌い上げたかと思えばギャースカギャースカ叫んでみたり。勢いだけでガンガンやっているようにも感じるんだけど出来上がってみるとそれらがすべてキャッチーでファニーかつシリアスでクールにバッチシ決まってしまっているのが今の彼らの勢いを表している。

ギターの音がやや明るく抜けが良くなった分クランチーな雰囲気が強まったこととリズムの突進感が増したことから全体的にメタルムードが強まっている。そのせいかコミカルなパートとの落差も大きくなったように感じるが、もちろんそのコミカルなパートもただのおちゃらけで終わることなく彼らの音楽の凄みとメッセージの辛辣さをより一層際立たせている。

また、1stシングルのB.Y.O.B.やラストのLost In Hollywoodで聴かれるように、ヴォーカリスト・ダロンの出番が増えているというか、中音域で朗々と歌うサージの歌とピッチが高くキャッチーな歌声でときにマイルドに、ときにヒステリックに叫ぶダロンの歌の対比が非常に印象的で、音楽的にさらに奥行きを与えているように感じる。

スラッシュメタルよろしく突っ走ったかと思えばダンサブルなパートも折り込みメッセージは強烈な大統領批判ととにかくカッチョいいB.Y.O.B.から歌詞のインパクトに負けず劣らずの勢いを感じさせるCigaro、人を食ったかのようなノリと爽やかなメロに載せて「暴力的なポルノー、獣姦~」と歌ういかにもなViolent Pornography、TOOLがBLIND GURDIANとコラボってみましたみたいなQuestion!、チープなエレクトロサウンドと脱力ポップメロが余計にセンスの良さを感じさせる(なんか歌いだしがHALCALIっぽい)Old School Hollywood、そして前作のAerials同様叙情詩的に物悲しく歌うLost In Hollywoodまで、インパクトがあって中毒性も強い曲が満載。Chop Suey!、Aerialsのような名曲が入った前作にまったく引けをとらない素晴らしいアルバムだと思うし、こと各曲ごとのキャラの立ち具合についてなら過去最高とも感じる。

MEZMERIZEがこれだけの出来であればHYPNOTIZEも相当の出来であることは間違いないし、当分はSYSTEM OF A DOWNムード一色な感じになりそう。なんかこの怖いものナシムードって一時期のTOOLにも通ずるような気も。

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2005年05月11日

Composure / WAKING ASHLAND

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Composure / WAKING ASHLAND

自主制作のEPが話題になり、「2004年度全米でもっとも期待される未契約バンド」と言われていたらしいアメリカのバンド。ピアノと歌を軸にして伸びやかで清清しくちょっぴり切ないメロディーを聞かせる彼等の音楽は、ポストJIMMY EAT WORLDと言われていたりTooth & Nailと契約したものの、COLDPLAYやTRAVISの名前があがっているようにエモ界隈だけじゃなくもっと大きなフィールドで活躍していくことを容易に想像できるポピュラリティの高さを持っている。KEANEのような真っ直ぐな雰囲気も漂っているんだけれどそこに留まらない懐の深さも感じさせる。とにかく新人にしてこのアルバムはありえない。

自主制作EPのタイトルトラックでこのアルバムにも収録されたI Am For Youと言う曲がそれこそJ.E.W.のSweetnessのようなアンセムになりうるって言われているみたいだけど、音楽的には「みんなで一緒に盛り上がる!」っつータイプよりもアップテンポながらもしっとりと染み入る感じの曲。楽曲のノリがというよりもサビの

And I, I Am For You
And I, I Will Love You
And I, I Am For You
And I, I Will Save You

のくだりによるところが大きいのかな。エモっ子大合唱の姿が目に浮かぶし確かにパワーがある曲だと思う。ただ、このアルバムが凄いのはそれが「突出しているからアンセム」になっているわけじゃないところ。

1曲目のShades Of Greyから全編素晴らしいメロディーの洪水で、後半になっても沈静化することなく流れ続けている。ほんと溺れちまうぜって感じ。どの曲も同じ雰囲気だっつーとこで単調と感じる人もいるかもだけど、単体で聞くと全曲名曲と言いたくなるぐらい胸にしみる、前向きだけど涙がポロリみたいなエモエモソングの金太郎飴状態。あまりにどの曲も素晴らしいので途中からは感覚が麻痺してきて痺れを感じるほど。でも我に返って流れている曲に気持ちを向けるとやっぱりそれもすげーいい曲だー!みたいな。そんなテンションが本編13曲50分強という決して短くない時間持続しちゃう。

ちなみにラスト2曲は自主制作EPに収録されていた曲らしい。力強さもあるがしっとりとした本編の曲とはちょっと違う快活な雰囲気もある。

とにかく「メロディーが染みるエモ大歓迎!」な人は是非。エモは飽和状態になってるとは思うけど、このバンドはそういう状態の中でも音楽の説得力で聞き手の口をふさぐことが出来るバンドだと思う。

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2005年05月01日

Argentina 1993 + 1995 / BON JOVI

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ブートDVD2枚組。既発プロショットアイテムのグレードアップヴァージョンで、試写したら確かによくなってたので買ってしまいました。93年95年のアルゼンチン公演の、それぞれテレビ放映された映像を収録。93年のディスクにはオマケでその日のライブ直前に出演したテレビ番組での口パクライブを3曲。

まずは93年。KEEP THE FAITHツアーってオフィシャル並のブート音源が結構出回っている割にビデオで決定的なのがない。アメリカツアーのプロショットがいくつか出てるけど短かったりスクリーン用の映像みたいのばっかで。そういう意味では音質画質イマイチだけどそこそこの時間収録されてて(Blood On BloodとBad Medicineが収録されてないのは痛いけど)そこそこのクォリティなこの日の映像がこのツアーでは一番無難だと思う。それかバッファロー公演。でもそのバッファロー公演には収録されてないIn These Armsが入ってるのはでかいかな。このツアーってウェイン・アイシャムが何公演か撮影してたハズのでそれをリリースして欲しい・・・って今更無理か。

KEEP THE FAITHツアーの音って丸いというかエッジがないのであんまり好きじゃないしこっちはあんま観ないかなあ。Born To Be My Babyもなんだかなあって感じだし。ってことで熱狂的にこのツアーが観たい!ってほどじゃなければあえてこの日の映像目当てで買う必要もないと思う。ただ、ライブ自体に見所がないわけじゃなくて、アンコールのアタマに演奏されるバラードアレンジのBEATLESのHelpとかは聞きごたえあり。1番をジョンが歌い、2番をリッチーが歌うんだけどやっぱリッチーの歌は良いわね。ただ、これも音質最高なブート音源で聞けばいいかって感じ。

95年のは、THESE DAYSツアーで唯一(?)Born To Be My Babyがプレイされた11月4日のライブを収録。この映像は既発モノよりはるかによくなってて嬉しい限り。ただ、南米モノの切ないところでカメラワークは最悪だし(もっと引きの画が欲しい)音もモノラルでややノイズが目立ったりもする。時折インタビューが挿入されて曲のアタマとかぶったりするし。それでも同時期の南アフリカ公演のブートよりも画質・音質はよく、ティコのドラムが輪郭のはっきりした音で聞こえるのが嬉しい。今でこそかなり衰えが目立ってしまうものの、この時期のティコのドラムはマジすげえ。Keep The Faithの中盤以降どんどん激しくなっていくとこはラテンのカーニバルグルーヴというかまじ雷太鼓。だ、大丈夫?ってぐらいスピードアップしちゃうのもスリル満点でナイス。なんかこの日のティコは全体的に走り気味。でもモタるより走るほうがいいぜー、と盲目ファンアピール。

ジョンの歌もこの時期の絶好調というわけではないけれど今とは比べ物にならないぐらい伸びやか。ヴォーカリストとしての最盛期はこの頃だよな。

ちなみKEEP THE FAITHツアーではなんだかイマイチな演奏だったBorn To Be My Baby、95年のライブサウンドで、しかも長らく演奏されてなかっただけに大した出来じゃないかと思ったんだけど意外としっかり演奏できてるしテンポも速くてかっこいい。リッチーがギターソロ忘れてたみたいで即興でごまかしてるけど期待してなかっただけに嬉しい。っつーかこの時期のリッチーのかっこ悪さはどうしたことだろう。今のほうがはるかに若くてアイドルっぽい。ジョンの「バンダナにフリルつきシャツ」ってのもどうかと思うけど。

フル収録じゃないのは残念だけど、Keep The Faith、These Days、Born To Be My Babyをかっこいい演奏で観ることができるってだけでも買う価値はあるでよ。This Ain't A Love Songはサビをスペイン語で歌ってます。Como To Yo Nadie To Amado~

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2005年04月13日

Suspended Animation / FANTOMAS

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Suspended Animation / FANTOMAS

現在パットンが手がけているプロジェクト・バンドで一番実体が伴っている感じがするのがこのFANTOMASだと思う。「外科手術のサウンドトラック」というコンセプトだった前作はやや上級パットンで、わけわからんながらも聞き手の集中力を極限まで高めて作品を聞かせてしまうという点ではすごかったがやはり正直「すいませんわかりません」とも思ってしまっただけに、今作こそ!という期待が高まってしまう。

パットンが大好きな奈良美智にコンタクトしてFANTOMASのアルバムを贈ったら奈良が気に入ってくれてアルバムのアートワークを手がけることになり、1枚だけかと思ったら30枚も作品を描いてくれたもんだからそれならってことで「30枚の絵を30日のカレンダー」っていうコンセプトにして作られた作品。その作品を生かすためにアートワークは日めくりカレンダー風の豪華すぎる装丁。奈良美智って普通に「なんかこわかわいいー」って女の子ウケもしそうな感じで正直パットンとはどうなんだろ?と思ったんだけどこうしてきちんと作品を見るとやっぱドロドロと不気味なものも渦巻いてる感じがしてFANTOMASサウンドと違和感無く溶け合ってる気もしてきた。

今回のサウンドについて、パットンは「休日のための音楽っていうイメージ」と言ってるけどそこはFANTOMAS。休日がこんなイメージになっちゃったら大変だよ!っつー激烈サウンドと奇声が飛び交う相変わらずのサウンドになっております。奈良美智の絵のイメージからか、子ども番組で聴かれるようなキュートなファンシーサウンドのサンプルを多用しているけどもちろんそれをそのままかわいい雰囲気の演出のために使うわけはなく、どれも途中でテープの回転を遅くしたり早めたりエフェクトをかけたりすることによって、どこか歪んだムードを醸し出させる小道具に使われている。ラストも皮肉の効いたセリフで終わっているし。

全体的なサウンドは1stで提示されたFANTOMASサウンドの延長上だけど、1stよりもややポップでキャッチーになってるような気がする。もちろんポップでキャッチーっつってもマイク・パットンのFANTOMASですからBACKSTREET BOYSみたいになったとかそんなわけはなく、例によって「ダイナミズム」とかそういう言葉では形容しきれないようなふり幅の大きさで地獄と桃源郷を行ったり来たり。

厳粛な図書館と急性期の統合失調症患者が運転する超高性能猛スピードブルドーザーが合体したと思ったら思い出したように夜中にロマンチックなラヴレターを書き始めたり、という雰囲気とか
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な雰囲気で鼻から脳みそが出てるようなパートがあったかと思えば一転してアタマから湯気を出して怒り狂うジャイアンにバラバラに破壊されていくドラえもんを目の当たりにするかのような場面展開の連続だとか、とにかく形容の方法はいろいろあると思うけど、まあそんな感じ。

と、どうしてもFANTOMASについて語るときはそのサウンドの奇怪さや変態さを強調するに終始してしまうんですが、今回はその変態さに呆気にとられる前に素直にかっこいい!と思えるパートが満載で、IQ300の変態とかそういうエクスキューズなしでも単純に「猛烈にかっこい激烈音楽」として楽しめる気がする。そういう意味ではやっぱキャッチーになったんだと思う。最初に前作がああだったからこそ今作には期待してしまうって書いたけど、その期待は「こういうのを頼むぜ」という具体的なことじゃなくて、「とにかく今度は俺にもすごさが伝わるわかりやすいのをお願いします」みたいな抽象的な期待だった。で、この作品がどうだったかっていうと、まさにその期待通り。いやもちろん初めてこれ聴いたらその変態性にまず圧倒されて「なんじゃこりゃー」になってたかもしれないんだけど、今までの3枚のアルバムとの連続性の中でこのサウンドを叩きつけられると、もう見事にこちらの感覚的期待通り。かっこよい。

パットンパットン言ってるけれどこのカッコよさはバゾのアングラ臭プンプンのギター、デイヴ・ロンバードじゃなきゃ叩けないっつー高速激重ドラミング、トレヴァーならではの・・・えーとベースはよくわからんのでなんも思いつかないんだけどとにかくこの3人だからこそのものってことが体にしっかり響いてくるのもFANTOMASというバンドである必然性を強く感じさせてくれて嬉しい限り。パットンのアタマの中で隅々まで構築された音楽にそれぞれの持ち味をこれでもかと加えて初めてこういう奇跡的にカッコイイ音楽になってるわけでさ。いやあやっぱマイク・パットンはすげーっすよ。

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Symmetric In Design / SCAR SYMMETRY

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Symmetric In Design / SCAR SYMMETRY

UNMOORED, SOLAR DAWN, TORCHBEARER, INCAPACITY などで活躍する Christian Alvestam (vo) を中心に、CENTINEX, CARNAL FORGE, THEORY IN PRACTICE といった錚々たるバンド群の現/元メンバが集結した、スウェーデンの新たなメロディック・エクストリーム・メタル・バンド SCAR SYMMETRY のデビュー・アルバム。

ちょうど今日借りてきたINCAPACITYの人とか俺でも聴けたUNMOOREDの人のバンドなんだね!こりゃタイムリーだ。1曲目のイントロは身構えていただけにちょっとずっこけたけど、その後はブルータルでありながらメロディーも際立ちまくるという、メロディアス路線を追求しながらも大事なモノを失わなかったSOILWORKって感じのかっちょいいサウンド。BON JOVIファンだけど、背伸びして激しいのも聴きたがるちょっとおマセな俺の好みにドンズバ。アングラな臭いは皆無でメジャー感バリバリだけど、お子様な僕にとってメジャーっぽくわかりやすいことは美徳です。弦楽器隊の音圧、ドラムのキレと重さの伴ったプレイ、そして流麗なピロピロギターソロの煽情力もかなりのもの。

ただ、いつも思うんだけどなんでこの手のバンドのヴォーカルがクリーンヴォイス使うと冷めた声で朴訥に歌うって感じになっちゃうんだろう。まあクリーンヴォイスまで暑苦しかったらデスヴォイスと対比させて使う意味もないのかとも思うんだけど、もう少しなんか工夫ないのかなと感じてしまったりもして。こういうサウンドでこういうクリーンヴォイスを使うのであれば伝家の宝刀って感じで使うほうが一瞬の美をより引き立てることができるんじゃないかと思うんだけどどうかしら。このアルバムはクリーンヴォイスの比率が高いので、その分歌唱から漂うアッサリ感に物足りなさを感じる機会が増えるような気がする。

と、ちょっと知ったかぶりして難癖付けてみたりしたものの、そのクリーンヴォイスのパートにしても他のパートにしてもメロでこちらの気分を昂ぶらせる術を知っているし、ブルータルなかっこよさを知り尽くしたメンバーだけにサウンドの説得力は十分。メタル識者の諸先生方は、オリジナリティがどーたらとか言いたがるかもしれないけれど、この完成度の前にはそんなことどうでもよくなってしまう。次から次へと「お、この曲いいじゃん!」と惹き付けられる曲が繰り出され、それが最後まで続く。SOILWORKがCATHEDRALのMidnight Mountainをやろうとしました・・・みたいな雰囲気のObscure Allianceが7曲目に配されてるのもすごいいいアクセントになってると思う。変拍子を織り交ぜたりもしてヒネリもあって、どの曲にも必ず耳を惹くパートが配されていて飽きることがない。サイバーでキラキラなキーボードサウンドでの味付けも派手で、現在のメタルの売れ線をガッつり取り入れているので商業的にもいいとこいけそう。あ、よくわかんないのに商業的にどーのとかコメントしたのは、「飽きないだけに商いがうまいね!」というダジャレを言いたかっただけなんですえへへ。

第一パラグラフのバンドのバイオっぽいところはCASTLE OF PAGANから転載してみた!こったんごめんなさい。よそ様のとこから大胆にアイディアを拝借しつつ自分の文章も組み合わせてレビュウを完成させようというアティテュードはオリジナリティの欠如をクォリティの高さによってカヴァーしてしまおうというSCAR SYMMETRYのアティテュードに呼応していると言えるぴょそよっっ!!

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2005年04月07日

Hide Nothing / FURTHER SEEMS FOREVER

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Hide Nothing / FURTHER SEEMS FOREVER

Tooth & Nail Recordsの看板エモバンドの3作目。1stでは後にDASHBOARD CONFESSIONAL(爽やかすぎて・・・っつーかMTV UNPLUGGED観て鳥肌立つほどキライになった)で大成功を収めるクリス・キャラバ、2ndはJason Greasonという人、そしてこの3rdアルバムでは解散してしまったSENSE FAILのJon Bunchが歌っています。

なんで今更?って言われるかもしれないですけど、なんか買ってしばらく聴いてなくて最近じっくり聴いたらすげーはまっちゃったんだよね。へビィローテーション。

1st2ndはその青臭さと必死感で「エモですぅ!」というムードを発散していたけれど、今回は一味違う。一聴したところ音像も楽曲も随分としっとりとしたというか落ち着いた雰囲気が漂っている。前作まではところどころドライヴ感を感じさせるアップテンポなパートもあったけど、今作ではそういうパートが激減してタメ気味のスロー~ミドルテンポが中心なこともあり、マッタリしていると感じるかもしれない。こう書いてしまうとなんとなくマイナスイメージだけど、今作のキモはまさにそのマッタリ感。このマッタリさがあるからメロディーとエモーションがじわーっと聞き手の心に沁み込んでくる。

マッタリと言ってもだらけてるわけではなく、ジョンのしっとりとした声質によって歌われるSENSE FIELDで聞かれたメロディーとハーモニーを発展させたようなしなやかで真っ直ぐな歌がどこまでも伸び、果てしなく大きく広がっていくようなスケールの大きさを感じさせてくれる。その歌とFURTHER SEEMS FOREVERらしいどこか寸足らずで(いや字余りっぽい?)手数の多いリズムとチリチリとした痛みを幾重にも重ねたようなギターが絶妙のマッチングを見せており、前2作が好きになれそうでハマりきれなかった俺はこのアルバムで初めてどっぷりハマりました。泣き叫んでいるわけじゃないけれど、哀しみを湛えた切ない雰囲気がたまりません。

汗をびっしょりかきながら切ないメロディーを大合唱したい!という青春パンク命な人には物足りなく感じるかもしれないが、しっとりとしていながら力強く、激しくなくとも心を揺り動かすようなエモいロックを聴きたいと思ってる人にはうってつけだと思う。

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2005年04月04日

GENERAL PATTON VS. THE X-ECUTIONERS

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General Patton vs. the X-Ecutioners

我等がマイク・パットンとターンテーブル集団X-ECUTIONERSのコラボレート作品。ラーゼルをはじめ、ブラック・ミュージックとのコラボレーションにも果敢に挑んでいくパットンの創作意欲はすげえ。

ということで聞く前から絶賛体制になってたりするんだけど、正直なこと書いていいですか。俺こういうターンテーブルを主役とする音楽をあまり聞いてないのでぶっちゃけ「どこがすごいか」ってのがよくわかんなかったりするんですよね。パットンてターンテーブルじゃないけどサンプリングは多用するじゃん?で、スクラッチだとか音の切り替え(と言うのかしら)を駆使してるところはまあターンテーブルでプレイしてるんだってわかるんだけども、「これはパットンのサンプル?それともターンテーブルのプレイ?」とわかんないとこの方が多いんすよね。

まあそういう「やってることのすごさがわかるかわからないか」と作品を聞いて「好きと思うか嫌いと思うか」というのはまた別の話ですからね。いや技術を否定するわけじゃなくて、ドラムソロで「これをやってたからすごい」と言われてもそれを聞いて楽しいかどうかはまた別のとこだよね、ってこと。

コラボレーションを「パットン将軍対処刑人」の戦争に見立て、アートワークまで凝りに凝ったこのアルバムは、パットン作品の中では非常に聞きやすい作品です。X-ECUTIONERSの作り出すキャッチーなバックトラックにパットンならではのキャッチーなヴォカリゼーションとわかりやすい歌が乗る。音楽性は一言で言ってしまうとヒップホップ色の強い作風。こういう音楽でのパットンを聞くと、彼の歌唱・ヴォカリゼーションは変態的に叫ぶとか人声とは思えない音をひねり出すとかそういうこと以前に非常にリズミックでパーカッシヴな魅力にあふれていてそこからキャッチーさみたいのが出てるんだなあということに気づかされる。

もちろんわかりやすいと言っても彼の作品ですから全編わかりやすいわけでもなく、パットンらしいアヴァンギャル度の高い展開と「この得体の知れない音はきっとパットンが出してる音なんだろうな・・・」というサンプル(声?)を組み合わせたトラックだとかもあり、そこらへんに関しては"HIP HOP FANTOMAS"といった雰囲気でもあったりするんだけど、そこらへんも含めてすべてリズミックであり、難解な雰囲気は皆無。

そしてこれが重要だと思うんですが、「不穏な雰囲気」とか「イカれた感じ」がパットン作品にしてはかなり薄め。飽くまで「彼の作品にしては」という注釈がつきますが、あまり変態な感じがないです。なんか最近の彼へのオーヴァーグラウンドでの評価の高まりやTHE WIRE誌の写真1.2.3.4.5.6.7あたりを見ると、やけにオシャレに取り上げられているようでなんとなく違和感を感じたりするし、この作品の(しつこいようだけどあくまでも彼にしては、な)健康的な雰囲気についてもやや物足りなさも感じたりするんだけど、珍しく気軽に気持ちよく聞ける作品だったりもしてこれはこれで好き。

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2005年03月26日

Holdes Of The Brave / IRON MASK

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Hordes Of The Brave / IRON MASK

イングヴェイのルックスを知っている人なら写真を見ただけで失笑・・・いやダッシュでレジにアルバムを持っていきたくなるほどに「極めている」ギタリスト、ダッシャン・ペトロッシ擁するIRON MASKの2ndアルバム。MAGIC KINGDOMEんときは「うーん、まあまあ」とか思ってたんだけどこのアルバムはいい。多分イングヴェイ名義で出ていたら「久々の快作!!」と絶賛されてたんじゃないかしら。

イングヴェイ直系のネオクラシカル・メタルをややメロディック・パワーメタルの方向にシフトさせたような作風で、随所にネオクラッシャーの血を燃え滾らせるフレーズと決してお行儀がよいだけで終わらない音圧を備えていて頼もしい。この手のバンドは大抵ヴォーカルで腰砕けになってしまったりするが、新加入のゲッツ・ヴァルハラ Jr.・モーレは名前こそダンディ坂野のネタの複合技みたいだしルックスは思いっきりこちらの腰を砕いてくれるものの、熱さと攻撃性を兼ね備えた魅力的なヴォーカルを聞かせてくれる。オリヴァー・ハートマンも3曲でゲストとして相変わらずの歌唱を聞かせてくれるが、今回はむしろゲッツ!!の魅力のほうが際立っている。

ギターソロに関してはやはりまだイングヴェイの域には達していない・・・というか今のイングヴェイ以上に汚さと粗さが目立ってしまっているけれど、リチャード・アンダーソンによるエゴイスティック・キーボード・ソロが十分にその穴を埋めている。楽曲的にもややムラはあるものの、Holy War、Freedom's Bloodのアタマ2曲のパワーメタリックなインパクト、Crystal Tearsで聞かれるような仄かな哀感漂う曲、ゲッツ!!の柔の魅力も味わえるバラードMy Eternal Flame、なんかイングヴェイというよりもスティーヴ・ヴァイとかジョン・ペトルッチ系の非ハーモニック・マイナーパート(なんつーのかわかんないからとりあえず)からイングヴェイっぽいメロディーになだれ込むTroops Avalonなど聞きどころは多く、今のイングヴェイに希望を見出せないオールドスクールネオクラッシャーなら溜飲が下がるのではないだろうか。

ジャケは「ようこそ!仮面舞踏会へ」とかフレーズ付けたくなる。面白いセリフ募集。

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Starbreaker / STARBREAKER

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Starbreaker / STARBREAKER

派手さはないが安定した実力で、ありがちなようでそうではない正統派北欧ヘヴィメタルを創作し続けるLAST TRIBEのマグナス・カールソンとTNTのトニー・ハーネルが組んだという地味ながらもメタル心をくすぐられるプロジェクトのデビュー作。マグナスには今後LANDE / ALLENもあるわけだけど、LAST TRIBEはヴォーカルがなあ、と思ってる人が「実力あるヴォーカリストとコラボれ!」とか入れ知恵してるのかしら。リカルドの歌はそんな悪いわけじゃないしバラードなんか彼ならではの雰囲気があっていいんだけど確かに地味だもんな。

音楽的にはLAST TRIBEで聞けるようなエッジの効いた適度にテクニカル、適度にポップなHMにトニーならではのポップな歌メロが乗るという想像通りの音。元々マグナスの書く曲・・・というかLAST TRIBEの曲ってクサく突き抜けきらないのでもどかしいと同時にそれが妙ないい味になってたりするんだけど(突き抜けなさ感はリカルドの声質のせいもあるか)、今作ではどうもその突き抜けなさ感を「味」に昇華するには至ってないような気がする。いや実力者同士のコラボレーションだけに一聴すると地味なものの、なんとなく何度も聞いてしまうような味わい深さはあるのだが、そのメロの即効性の薄さが物足りないというか。

トニーの声は相変わらずキャッチーだしトニーならではの歌メロのポップさなんかも随所に感じることができる。マグナスならではの適度なエッジやヒネリのあるアレンジもしっかりあるし、こちらの期待しているものはそれなりに提示されているんだけど、なんか決定打に欠けるんだよな。1+1=2じゃなくて1+1=1.85ぐらいでした、っつー微妙な欠落感。俺としてはトニーが過去に歌ってきた曲と同じぐらいとは言わないまでも、もう少しインパクトのある歌メロが欲しかったなあって気がする。いや今回の歌メロが悪いってわけじゃないんだけど、なんつーか「惜しい」って感じ。

マカルーソはやっぱりメタルに向いてないよね。

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2005年03月25日

Lullabies To Paralyze / QUEENS OF THE STONE AGE

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Lullabies To Paralyze / QUEENS OF THE STONE A

彼等の認知度を一気に高めたSong For The Deafから3年ぶりのニューアルバム。ジョシュと並んでバンドの顔だったニック・オリヴェリが脱退してしまい、ジョシュのワンマンバンドといった雰囲気が漂うようになってきた。前作では3人が歌っていたわけだけど今作ではラネガンが3曲歌ってるだけであとはジョシュってのもそういう雰囲気を強調する一因かも。

マーク・ラネガンによる「死神が昔話を始めました」的イントロダクションで幕を開けるこのアルバム、カラッとしてるんだけど粘度は高く、相変わらずダークで妖しくてひねくれてて・・・というQ.O.T.S.A.らしさは不変。でも、今回はどこか覇気に欠ける。Rで地獄のビーチに花咲くパラソルのようなカラフルで妖しく不気味なサウンドを打ち出し、Song For The Deafで多少その色彩は落ち着いたもののスケールの大きさを身につけた彼等だったが、今回は色彩はどこかモノトーンで雰囲気的にもこじんまりとしてしまった感じ。悪い意味で落ち着いちゃったというか。ニック不在の影響なのか何をするかわからないみたいなキレた感じや不穏なポップさもなくなった。っていうかこのアルバムにMONDO GENERATORを足すとちょうどいい気がするんだよな。

こじんまりした分ヒネクレ感とか性格の悪さ感は強調されてる気もするし、Q.O.T.S.A.の核は依然として残っているんだけど、どうも物足りないというか寂しさを感じます。ライブを観るとまた印象変わるかもしれないけどライブだと余計にニックの不在を痛感するかもなあ。うーん。

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2005年03月24日

Luxaeterna / AQUARIA

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Luxaeterna / AQUARIA

メロスパー界隈で大騒ぎされてたんで買いました。煽りに弱い僕。UIRAPURUというバンドを母体とするブラジル出身のバンド。サウンドは重さよりも疾走感、味わい深さより即効性、そしてアグレッションよりも気品を重視といった感じのまさに「メロスパー垂涎」のサウンド。ラファエル・ビッテンコートやサシャ・ピートのバックアップを受けて作られたこのアルバムの出来は新人とは思えないハイクォリティ。

前半はやや躁な感じで「僕等は希望を持って生きていく!人間同士が憎しみあうなんて悲しいことじゃないかっ!!」みたいなことを臆面なく口に出せるような勧善懲悪サウンド。悲しげなパートも苦痛や哀しみを表現するというよりはその後にもたらされる喜びや希望をひたすら強調するために存在しているような雰囲気なので、そういういい人ヅラした音楽聞かされると「けっ!」と思う人にはツライかもしれない。俺も最初軽く聴いた限りはあまりにメルヘンチックで前向きなサウンドにうんざりしてしまい、「善は細胞レベルで善、悪は宇宙の果てまで行っても悪」みたいな考え方しそうな想像力の欠如した音楽だよなあ、と物置の陰に隠れてひねくれた目で見てたんですが、中盤以降のオペラ的(っつーよりミュージカルか)な展開やクライマックス設定の妙には「そんなところに隠れてないで一緒に地球への愛を歌おうよ!」と強引に引っ張り出されるような力があり、「君のように物事を色んな側面から見ることは大切だけど、あまりに分析的になりすぎるあまり、一番大切なことを忘れていないかい?」と諭されているような気になってきました。いやそれはまあ冗談なんすけど、実際オリジナリティだとか今書いたような前向きすぎな雰囲気に対しても認めざるをえないような説得力があるのは確か。

キーボードサウンドはちょっと軽薄だけど、7分以上の大曲ばかりにも関わらずダレは感じず集中力が途切れないし単純にこういう高揚感を与えてくれる音楽もいいよなあ、と素直に思えるだけの力はあると思う。つい軽視してしまいがちだけど、こういう高揚感はやっぱこういう音楽ならではの強みなんだよなあってのを思い出させてくれるというかさ。オリジナリティは感じられないけれど、質の高さでそういうのをねじ伏せてると思う。メルヘンに生きよう!

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2005年03月09日

Demigod / BEHEMOTH

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Demigod / BEHEMOTH

試聴してみたらめちゃめちゃかっこよかったので思わず購入。こういうのレビューすると「無理しちゃってよ!」と思われるかもしれませんし例によってこのアルバムが俺にとっては初体験でな-んもわかりません。そこで某アメリカサイトで調べてみたら(そりゃ聞いてるよな)ポーランドのブラックメタルバンドの7枚目らしい。

なんかね、ブラックっつーと俺の中ではシンフォニック!冬!っつーイメージがある。おそらくそれは俺がなんも知らないだけだと思うんだけどどうしてもヒンャーとしたキーボードサウンドとかを含めて「北欧の夜の吹雪」っつーイメージなのよね。でもこれは全然そういう雰囲気じゃなくて、森の中というよりも地底奥深い朽ち果てた魔殿、もしくはロード・オブ・ザ・リングでウルク・ハイが作られてるああいうところ。暗くて、おどろおどろしいけど冷え冷えとはしていない。荒廃しつつも嫌な熱気、臭気が立ち込めているようなそんな雰囲気。

ドラムの圧力、スピード、そして耳を惹きつけるリズムパターンが本当に素晴らしく、そこにこの手のバンドにしては珍しい(?)図太いギター。テクニカルな早弾きも披露するけど美しいというよりも狂乱といった感じでSLAYERとかMEGADETHのそれに近い雰囲気があるような。そして地底に潜む悪魔のラスボスのごとく低く唸るヴォーカル。アコースティックギターも効果的に織り交ぜつつも決して「美」に逃げることなく、ひたすら醜、悪、激、邪、憎、痛の凝縮でこちらを圧倒する。前回のHIGH ON FIREはアメリカならではの荒んだ雰囲気、泥を感じさせてくれるバンドだったけれどこちらのBEHEMOTHはヨーロッパの泥に染み込んだ血塗られた宗教の歴史を感じさせてくれる。

音質もメジャー級というか、映画音楽的なブラックメタルのように予算をオーケストラだとか装飾に割くことなく、ひたすらストイックにバンドの凄みを強調する技術に費やしている感じ。生々しくリアリティを感じることのできる音。精神性は欧州的と書いたけれど、サウンドプロダクションはアメリカっぽい弾性を強調している感じで、だからこそのパワー感もある気がする。

とにかくこのリズミックなかっこよさには感服する間もなく引きずり回されてしまう。圧殺されるようなビートと髪の毛をひっつかまれてふり回されるようなグルーヴが備わっていてブラック的な切迫感があるのがたまんなくカッコよい。アメリカのバンドでもここまでかっこいいビートを感じさせるバンドは少ないと思う。ブラックとか云々以前に、ビートがかっこいい激しい音楽を聞きたい人におすすめしたい。

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2005年03月06日

Blessed Black Wings / HIGH ON FIRE

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Blessed Black Wings / HIGH ON FIRE

試聴して思わず買ってしまいました。

元SLEEPのマット・パイクを中心とするトリオバンドの3rdアルバム。清く正しい北欧メタルが大好きな僕ですから当然のごとく1stも2ndもSLEEPも興味ないんだけどマット・パイクって名前がマイク・パットンに似てるから聞いてあげたの。って俺ほんと全然マット・パイク関連の音って聴いたことなくてごめんなさいって感じなんですがそんなことどうでもいいぜってぐらいかっこいいよこれ。ヘヴィなロック、激しくて野蛮で粗野で野卑で。かっこいいロックが好きなら聞いとけ!責任とるからよ!みたいなそんなことを言いたくなるアルバムなのです。まあなんの責任をとるのかと聞かれると困るのですが、そういう押し付けをしたくなるようなかっこよさなんです。

ドコドコダカダカバシーンバシーン!とひたすらやかましく重く叩きまくるドラムに時折聞こえるピッキングノイズがかっこよい太くうねるベース、そしてアングラ臭を撒き散らしながら錆びた鉄鑢のような質感で聞き手の体を嬲るギター。そして「絶対ヒゲ面で汚い顔してるよ」と思わずにいられない汚悪度満点のヴォーカル。それらが渾然一体となってひたすら大地を揺るがしながら地底に向かって掘り進んで行く。

サウンドを例えるならばMOTORHEAD meets MELVINSっつー感じでそこにSLAYERのエッセンスをまぶした感じ。俺の拙い音楽知識でさらに説明するとしたら、MASTODONのこないだのアルバムのテクニカルな部分をアメリカの土着的アングラロック雰囲気に置き換えてNEUROSISの暗黒描写を加えたというか。アングラっぽいとは言ってもとっつきにくくはなく、むしろこんだけどろどろしてるのに十分キャッチーでドラマチックな展開がメタルカタルシスをも存分に味あわえる。「へびめたさんだ」の話でムキになってる暇があったらこういう音楽を聴いて「かっこいいロックってなにか」を実感したいぜ!(ミクシィでの論争、ほんとはちょっと混ざりたい)

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2005年03月02日

Irony Is A Dead Scene / THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON (2002)

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Irony Is a Dead Scene / THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON

現在のアメリカケオティックハードコアシーンを代表するバンド(知ったかぶり)の4曲入りEPです。

見てください。アーティスト名に燦然と輝く”with MIKE PATTON”という文字列。きゃー!!そうなのです、このEPにはあたしのヒーローであるマイク・パットンが参加してるんでございます。もうたまりません。音のほうもまさにそのアーティスト名が示すとおり、「D.E.P.にパットンが参加した」というよりは「D.E.P.とマイク・パットンのコラボレート」とも言うべきガチンコ勝負。

D.E.P.によってIQのめっちゃ高い狂人が暴走を始めたかのようなカオティックでありながら知性的という矛盾した激音がぶちまけられれば、その凄まじさと対等どころかさらに上を行くブチ切れっぷりと変態性を示しながらもどこかダンディで堂々としているというこれまた矛盾した双極性の魅力を持つパットンがそのカオスも、狂人の暴走をも手のひらの上でコントロールする。この両者の激突によって生まれる筆舌に尽くしがたいカッコよさ。こりゃもうすげーよ。たまんねー!IPECACから出てるパットン作品ってどこか音がこもっていると言うか鋭角性よりも丸みと重みを感じる音作りなんだけど、このEPにはしっかりとその鋭角性もあるのが嬉しい。

APHEX TWINのCome To Daddyのカヴァーは思っていたよりも普通だったけど他の曲に関しては文句なし。文句なしとか言うレベルじゃなくて期待していた以上のものをかましてくれました。Mr. BUNGLEでやってたケチャっぽいこともあればFANTOMASっぽい声とサウンドエフェクト、TOMAHAWKのような妖しい雰囲気もあり。他アーティストとのコラボながら、パットンのこれまでの活動の集大成的でもあり。勿論それだけに留まらず、ここまでカッコイイ作品になってしいるのはTHE DILLINGER ESCAPE PLANというそれを受け止めるだけではなく、1+1を3にも4にもしてしまう素晴らしい器があるから。

正直言えばD.E.P.の他の作品はすげーと思いつつもハマりきれなかったりするんですが、この作品だけは例外。楽曲そのものはD.E.P.スタイルで彼等の他の作品と特に大きな違いがあるわけじゃないんだけど、他の作品との差を決定的にしてるのはこの作品のキャッチーさ。歌唱がとか絶叫がとかいう以前にこの「わかりやすさ」こそがパットンの最大の貢献だと思う。「変態的」でありながら同時に「キャッチーに仕上げちゃう」っていうのがパットンの本当の凄さだし、そのパットンの個性を最大に活かす事ができたコラボレーションとしてホントこの作品は奇跡的にすげえ。すげーばっか言っててアホみたいですが、ほんとすげーのよ。たった一つの欠点は、4曲しかないってことぐらい。

3曲どれも甲乙付けがたいほど好きなんですけどPig Latinでの「ピンガッ!!山田!!ピンガッ!!山田!!ピンガッ!!ジャバダグボゲバドガ!!」ってのがたまらなく好き。

歴代パットン参加作品の中で一番俺がすげーと思う作品はこのEPです。FAITH NO MOREであればANGEL DUST、FANTOMASであればFANTOMASMELVINS、Mr.BUNGLEならCALIFORNIA、とそれぞれオススメはあるけれど、そういうバンドごとの枠を取っ払って「マイク・パットン」で最初に聞くのであれば、このEPを聞いて欲しい。すげーから、ほんと。

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2005年02月27日

Mit Gas / TOMAHAWK (2003)

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Mit Gas / TOMAHAWK

マイク・パットンは2000年代前半、Mr. BUNGLE、FANTOMAS、TOMAHAWKと3つのプロジェクトで継続的に活動していたんだけど、しっかりと3つのバンドの色というものがあって、きちんと「それぞれのバンドならでは」の魅力を備えた納得のいく作品を作ってくれているところ。他にも色々参加しているのに決して器用貧乏になってないんだよね。そのあふれ出る創作意欲をそれぞれのプロジェクトに参加しているメンバーならではの個性とぶつけつつ(ここ重要)素晴らしい作品をリリースし続ける。いやーもう天才としか言いようが無いっていうか、けなすところが見つかりません。彼が世に出たFAITH NO MOREのTHE REAL THINGからこうしてずーっとリアルタイムで活動を追ってこれたことに感謝です。

炭酸ガス、というタイトルが付けられたこの2ndアルバムも1stと基本的な方向性というか、こういう音楽形態を用いてどのような風景を描き出そうとしているかという点に置いては前作と大きな変化はない。パットン作品にしてはストレートなハードロックだが、パットン以外のメンツが元JESUS LIZARDのDuane Denison、元MELVINSのKevin Rutmanis、元HELMETのJohn Stanierという一癖も二癖もあるメンツによって構成されていることからも伺えるように相変わらずどこか不気味でよじれを感じる淀んだ空気が漂いまくっている。1stはDuane DenisonのギターによるJESUS LIZARDっぽさというのがパットンの魅力と同じぐらい表出していたと思うんだけど、今作にはそれに加えてダイナミズムというか緩急の起伏が新たに加わっている。キャッチーさという点ではやや落ちた感はあるが、スピード感のある曲や跳ねるリズムを使った曲、さらにはブレイクビーツ的なリズムアプローチを用いた曲もあったりしてスリリングな展開が増えた。

そんな今作で印象に残っているのはまず6曲目のCapt. Midnight。ブレイクビーツ的なリズムの上に妖しく浮遊するパットンのヴォーカルが乗るこの曲には、曲の真ん中に1パートだけシリアスで叙情的、エモーショナルな部分があるんだよね。ひとしきりそのパートが終わるとまた浮遊パートに戻り、後半またその印象的なパートが出てくるのかと思いきや唐突に曲が終わってしまう。物足りなくもあるんだけど、パットンに入れ込んでる人間としては「さすが」と思ってしまうあばたもえくぼ。

あともう1曲すごく好きな曲はラストのAktion F1413。繰り返されるリズムとクリーンなトーンで怪しいコードをストロークするギターの上にパットンがコンピューターヴォイスの如き怪しい語りと浮遊する歌を乗せる前半。一瞬フェイドアウトしたかと思わせたところですべてを歪ませた阿鼻叫喚の世界が爆発する。その曲が終わって10数秒待つと、怪しげなギターの上に隣の部屋の人のうめき声のような不気味なパットンの歌(声)が乗った曲が始まり、そのままアルバムが幕を閉じる。これこそパットニズムだよなあ、と思わず汗をかいてしまいます。

投稿者 trouble : 20:28 | コメント (25) | トラックバック

Millennium Monsterwork / FANTOMAS & MELVINS BIGBAND (2002)

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Millennium Monsterwork / FANTOMAS & MELVINS BIG BAND

2000年の12月31日、サンフランシスコのSlim'sで収録されたライブアルバム。タイトルからもわかるかもしれないけどFANTOMASとMELVINSが一つのBIG BANDに融合し、それぞれの曲をプレイするというなんとも贅沢っつーか夢のようなイベント。と言いつつMELVINSはCRYBABYとビアフラメルヴィンズしかCDで持ってないんです。

そんなわけでMELVINSの曲がFANTOMASによってどう原曲の雰囲気に変化を加えられているのかとか全然わかんないんですが、とーにーかーくーかっちょよい!!音自体はパットンの好みなのかFANTOMASのアルバムと同じようなどこかこもった丸い音像で好き嫌いは分かれるかもしれないけど、ギター×2、ベース×2、ドラム×2で音の圧力は抜群。ドラムとベースが二人いるからなのかカチっとした感じはないんだけど、重い重い。
MELVINSの曲でのヴォーカルはバゾも歌ってるんだけどほとんどパットン。元の歌メロ以外にも絶叫とかヴォカリゼーションを入れたりするんだけどパットンが歌ったり合いの手みたいな絶叫が入れることでMELVINSの曲のキャッチー度が格段に上がってる気がする。いや元々Night GoatもThe Bitもキャッチーだとは思うんだけど元曲のカッコよさにさらなるフックが増えたって感じで。まあ細かいことはともかく、かっこいいんすよ。MELVINSの暗黒重量感とは逆方向に突き抜けた感じのパットン狂気が加わったせいで音楽そのものが双極のカッコよさを纏った感じ。

FANTOMASのなんたるかもわかるしMELVINSのかっこよさも同時に味わえてお得なので、FANTOMAS入門編として買ってみてもいいかもしんない。いや買え。

残念なのは収録時間が40分強しかないってとこ。おそらくライブは70分ぐらいだったと思うのでフル収録してほしかった。

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Tomahawk / TOMAHAWK (2001)

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Tomahawk / TOMAHAWK

Mr.BUNGLEとFANTOMASでアルバム制作&ツアーと精力的に活動していたパットンがさらに新バンドを結成。メンバーは元JESUS LIZARDのDuane Denison、元MELVINSのKevin Rutmanis、元HELMET、現BATTLESのJohn Stanierという豪華オルタナ人脈。

並行して活動していたBUNGLEとFANTOMASがある意味両極端で派手な音楽性だったのに対し、このTOMAHAWKは後期FAITH NO MOREにJESUS LIZARDテイストをまぶしたようなやや地味目な作風。しかしながら地味=つまらないというわけではなく、このオルタナティブ人脈の持ち味を存分に活かしたさすがの作品。楽曲的にはFAITH NOMORE以降のパットン作品の中ではもっとも普遍的なロック形態をとっているんですが、参加しているメンツがメンツですからなーんか不気味なムードが全編を通して感じられる。そしてそこにまぶされているマイク・パットンならではの性格の悪さっつーかシニカルさっつーかが痛快。うわあこんなの聞いてる俺もきっと性格悪いんだろうな!とか言う妙な選民意識が満たされます。

とか言いながら正直最初はやっぱその地味っぷりに肩透かしを食らったりもしたんだけど。聞き込むごとにその地味の隙間から沁み出す歪み汁に体と心が侵食されていくような、スルメスメルな作品です。

投稿者 trouble : 20:20 | コメント (1) | トラックバック

Direcrotr's Cut / FANTOMAS (2001)

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The Director's Cut / FANTOMAS

1stアルバムがFANTOMASのスタイルってのはこういう感じだぜ!的な作品だったと思うんだけど、今作はそのFANTOMASスタイルでこんなこともできちゃうぜ!という応用編的アルバム。料理の材料は映画音楽。というわけで映画のサントラのカヴァー集です。

当初はフラッシュダンスのWhat A Feelingも収録予定だったみたいですが、早々に消えたみたい。うあー、聴きたかったなあー。まあそれはしょうがないとして、このアルバムはカヴァー集と言っても、上に書いたように完全にFANTOMASのスタイル。すげーよマジで。1曲目のGodfatherからして物悲しいメロディオン(だっけ?)から一気に爆発してパットンが絶叫し、バンドが疾走しまくるというまさにFANTOMAS。実のところ全部の曲を原曲と聞き比べているわけではないので偉そうな事は言えないのですが、すべてのアレンジはパットンによって手がけられており、1stで提示されていた静と動のコントラスト、不気味さを演出するモンドちっくなアレンジと音色、楽器の使い方、そして有無を言わさぬ圧倒的な爆発力、っていうFANTOMASスタイルのカッコ良さに、元曲に備わってる魅力的なメロディーってのが伴ってしまって筆舌に尽くし難い半端じゃないカッコ良さになってしまっています。原曲が持つ普遍的な魅力もあいまって普段アヴァンギャルドな音楽に慣れていない俺みたいなリスナーにもわかりやすくてグー。

今作ではパットンの「音」だけではなく「歌」も楽しめる。表現力の凄まじさは相変わらずで、その歌唱力にはほれぼれしてしまう。勿論絶叫や音なんかでもパットンらしさが存分に味わえるわけですが、やっぱ歌好きだもんな、俺。

俺のお気に入りは、静と動のコントラスト、そして物悲しいメロディーが素晴らしいThe Godfather、ヘヴィかつ神秘的なCape Fear、パットンの妖しい声とドラマチックなメロディー、展開が胸を打つRosemary's Baby、パットンの芝居がかった語りと機械的なサウンドがカッコ良いSpider Baby、来日公演でも披露されていたゴシックホラー的な荘厳さとFANTOMAS的な爆裂の対比がたまらないThe Omen、サビた有刺鉄線のようなバゾのギターとパットンの熱唱(?)にやられてしまうHenry:Portrait Of A Serial Killer、へんちくりんだけど妙な哀愁が漂っているVendetta等々。ラストのCharadeもパットンのヴォカリゼーションと歌、そしてドラマチックな演奏が楽しめるし、もうアルバム通して大好き。

聴きやすさと前衛的なカッコ良さが絶妙のブレンドで溶け合った逸品。

投稿者 trouble : 19:41 | コメント (4) | トラックバック

California / Mr. BUNGLE (2000)

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California / Mr. BUNGLE

ああ、やられました。思いっきり「歌モノ」です。この裏切り方はさすがとしか言いようがないっす。この作品がリリースされる前に出たFANTOMASのアルバムが歌の一切ない声のパットン作品だったけにMr. BUNGLEでどんなのを出してくるかと思ってたんですが、まさかこんなわかりやすいアルバム作ってくるとは、とビックリ&脱力。

勿論「歌モノ」と言っても普通のバンドみたいになったわけでもないです。タイトル通りのウェストコーストビーチでのんびりトロピカルドリンクって感じのムードがそこかしこにあふれているんですが、急にメロディー展開が怪しい雰囲気全開になったり変態ムードで突っ走ったりMr.BUNGLEらしさが織り込まれてる。壮大なバラードも、エンディングはいきなり「ピーーーー!!!!」でぶつ切りになってたりするし、らしさは満載です。前作が前衛タイプでパットンも「歌」よりも「音」重視って感じだったのが今回はまったく逆。パットン朗々と唄いまくり。

各曲それぞれコンパクトな作りで、聴きやすすぎる事この上ナシ。Retrovertigo、Pink Cigaretteと言った曲はベタで美しいバラード。パットンの朗々と歌い上げるヴォーカルがたまりません。不穏なロカビリームードとBUNGLE風味が絶妙なNone Of Them Knew They Were Robotsは名曲だし、のってけサーフィンなトロピカルムードがやはりBUNGLE流にアレンジされているThe Air-Conditioned NightmareもBEACH BOYSだとかVENTURESのようなパートにMr. BUNGLEらしい不気味なコード進行、メロディーが絡むかっこいい曲。変態オリエンタルなムード&フラメンコ&サーフィンな感じが漂うArs Moriendi、ケチャを取り入れたチベット密教の寺院をほうふつとさせるGoodbye Soberdayあたりもたまりません。

今回も相変わらずありとあらゆる音楽性が織り込まれているんだけど、とにかくその展開がすごくわかりやすいってのが特徴。同時期にFANTOMASの1STを制作していて、そちらは歌よりも音重視、曲もぶつぎりな感じだっただけに、その反動でCALIFORNIAが歌モノ中心になったのかも。

前作の奥深さとは一転してわかりやすさを打ち出してきた今作もやはり名作。BUNGLEの最初はこれをオススメします。

投稿者 trouble : 17:50 | コメント (356) | トラックバック

Fantomas / FANTOMAS (1999)

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Fantomas / FANTOMAS

1998年のポルトガルでのライブを最後に解散したFAITH NO MOREの後、すぐに行動を開始したマイク・パットン。早速新バンド結成!ということで報じられたのがFANTOMAS。で、メンバー観てビックリ。ギターにMELVINSのバズ!ベースにMr. BUNGLEのトレヴァー!極めつけがドラムに元SLAYERのデイヴ・ロンバード!この年の7月ぐらいからはライブ活動を始めており、ほぼこの1stを完全再現していたようです。このアルバムが発売されたのは1999年4月だから録音はツアーの後なのかな?ちなみに「MELVINSのバズ!」とか興奮したフリしましたが、当時は「カート・コバーンの師匠らしい」ってことぐらいしか知らない人でした。

また、このアルバムはパットン自身のレーベル、IPECAC RECORDINGSから発売された記念すべき第一作。パットンの活動の広がりに拍車がかかります。

買ってきてワクワクしながらCDプレイヤーで聞いたものの、最初は「やべ、わかんねーパットンモードだ」って思った。当時すでにパットンは2枚のソロアルバムをリリースしていたんですが、それらは俺にはアヴァンギャル度があまりに高く、わけわからんで終わってました。このアルバムも基本的に「曲」「歌」はないし、「きっついなこれ」って思ったの覚えてます。結局リリース後しばらく聞いたんだけどよくわからないまま奇跡的に実現した来日に2回足を運び、そこで始めてこのアルバムの音楽の凄さに打ちのめされてアルバムも聞けるようになったって感じ。

次から次へとめまぐるしく場面が変わり、アングラ臭漂う破壊的なパートと不穏で不気味でモンドなパートが入り乱れて展開する。パットンは「歌」ではなく、ソロアルバムに近いアプローチで飽くまで「音」を絞り出す。叫んだり囁いたりうめいたり泣いたりわめいたりスッ転んだり空飛んだり。

とにかく複雑でわけわからんこのアルバムの音楽は、パットン1人によって細かく緻密に組み立てられたものらしい。それをデイヴ、バゾ、トレヴァーのそれぞれの持ち味を存分に活かしながら形あるものに仕上げていったという感じ。パットンが音楽的には主導を握っていながらも、各人の個性が色濃く出ており、1STアルバムで「これがFANTOMASのスタイルだ」と言うのがはっきりと提示されている。

ライブでも全曲ではないものの完全再現に近い形で演奏していたが、アルバムと違ったのはその緊張感の凄まじさ。確かに緻密に組み立てられてはいるのかもしれないが、ライブではそれがまるで完全に即興であるかのような緊張感を持って演奏される。家でCD聴くのはつらいな、と思っていた俺もライブを観て目からウロコ、鼻からエラ呼吸。ヨダレを飛び散らし、目をむいて絶叫するパットンの鬼気迫るパフォーマンスと、ライブならではの緊張感で爆裂ドラムをたたき出すデイヴ。いやーカッコ良かったっす。

投稿者 trouble : 17:30 | コメント (0) | トラックバック

Album Of The Year / FAITH NO MORE (1997)

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Album of the Year / FAITH NO MORE

前作完成後、トレイ・スプルアンスはツアーに出ることを拒み、後任にはもとDUHのディーン・メンタ(Dean Menta)が加入。しかし結局このディーンともツアーはこなしたが曲は一緒に書けず、またもや脱退。後任にジョン・ハドソン(John Hudson)を迎える。「俺たちはギタリストとは合わないのさ」と自嘲的なジョークをかましていた彼らだが、対ギタリストというだけではなく、バンド全体の雰囲気もあまり良くなかったようだ。パットンは後に他メンバーがこのアルバムのために書いてきた曲を「クソだと思った」と発言したりしており、すでにこのバンドから心が離れかけていたことが伺える。

というわけで悲しいことに彼らのラストアルバムになってしまった6th。上記したようにあまり良い環境で制作されたとは思えないが、内容自体は彼ららしいシニカルなアルバムタイトルに負けずに充実している。

例によって前作とは違った雰囲気を纏っており、前作にあったコア的な部分がやや減退、「粘り気のある美しいメロディー」を前面に押し出している感がある。動で狂気を発散し、カタルシスを得るのではなく、静謐な世界の中でだからこそ感じられる歪んだ狂気を表現した味わい深い曲が多い。

そのような「静の狂気」は、トリップホップ的なアプローチにパットンならではのポップで美しいメロ、エンディング間際のドラマチックな展開を織り込んだ名曲Stripsearch、絶望によって引き起こされた諦観にまとわりつく狂気のようなHelpless、洞窟の奥深くで蠢く醜く愚鈍な生物のようなPaths Of Glory、終末思想的なPristinaあたりで特に放出されている。これらの曲での静かな雰囲気から漏れ出る歪んだ空気は本当に凄まじい。

勿論それ以外の曲も魅力的。拡散性はやや薄れ、意外と統一された作風に感じるこのアルバムだが、やはり1曲1曲が深みを持っている。オープニングを飾るCollisionは静と動のコントラストがカッコよく、Last Cup Of Sorrow、Ashes To Ashesは粘りのある美しいメロディの裏にある彼等独特の不穏なムードが印象的な名曲だ。よじれたポップソングMouth To Mouthといった曲も独特の魅力を持っている。

FAITH NO MOREのアルバムで一番メロディアスなアルバム。一番地味なアルバムでもあるかもしれないけれど、その味わい深さには一片の翳りも見られない。やっぱり素晴らしいです。名盤(FNMは4th以降全部名盤)。買おう。

投稿者 trouble : 17:07 | コメント (3) | トラックバック

Disco Volante / Mr. BUNGLE

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Disco Volante / Mr. BUNGLE

FAITH NO MOREとしてツアーしているさなかにリリースされた2ndアルバム。どういうペースでレコーディングしたりしてたのかさっぱり知らないんだけど、ビッグなバンドに在籍しながらも自分の創作活動を自由奔放にくりひろげてくパットン先生です。ってこのアルバムを音楽的に引っ張ってるのはトレヴァー・ダン(ベース)とトレイ・スプルアンス(ギター)の二人みたい。このアルバム聴くと二人の凄さがわかるぜー。

1stと比べるとわかりやすいミクスチャーロック的な要素が減退して、ちょっとアヴァンギャルド系の色合いが強まった。パットンのヴォーカルも、歌だけではなく、さらに発展させて「声」を使った表現の面白さを追求しているような印象。気狂いサーカスで変態ピエロ大暴れ!な感じも随分弱まっているので一聴する限りやや地味な感じがするんだけど今作のキモはまさにその落ち着いた中に見せる狂気。もちろんはっちゃけてドコドコグジャグジャやってるとこも多いんだけど、それ以外のパートでの静かな中で感じられる不穏さ、不気味さ、緊張感みたいのが随分と魅力的。その不穏な予感どおり徐々に世界が崩壊していくような展開もあってすげーいい。1stはやんちゃな子どもっぽい雰囲気もあったんだけど今作はぐっと落ち着いたアダルトな変態ムード。正装の紳士にみえて、実はチャックが開いててチンポ出てますよ、みたいな。アコーディオンやキーボードのアナログな音色選びが妖しくモンドなムード醸し出していてかっこいい。

俺としては全パットン作品の中でもベスト3に入るほど好きな作品です。アヴァンギャルドで激しいパートからパットンの「つっつっつー」というムーディーなスキャット(?)、おじいちゃんの切ない歌、モンドなキーボードに乗った素っ頓狂なポップメロディーへと移り変わっていくCarry Stress In The Jaw、テクノとエキゾチックな民族音楽にBUNGLE的変態センスが加わったDesert Search For Techno Allah、ノスタルジックなアコーディオン、キーボードサウンドによるムーディーな曲にイタリア語の発音フェチにはたまらないツバが飛んできそうな語りが乗るViolenza Domesticaと言った曲が並ぶ前半は特にたまりません。後半は正直アヴァンギャル度がかなり高まってついていけないパートのほうが多かったりもするんですが、ラストに収録されたMerry Go Bye Byeはウェストコースト風のすっとぼけたポップソングから一転してデスメタルになるという超名曲。

アートワークもいいよね。名盤です。

投稿者 trouble : 16:34 | コメント (5) | トラックバック

King For A Day, Fool For A Lifetime / FAITH NO MORE (1995)

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King for a Day, Fool for a Lifetime / FAITH NO MORE

前作の制作中からこじれたジムと4人の仲はツアーに出た後も悪化の一途を辿る。ジムのギターソロを他メンバーが邪魔をしたり、完全に「いじめ」の状態である。そんな状態でよくツアーを終えることができたなという感じだが、結局ツアー終了後にジムは脱退。後任にMr. BUNGLEのトレイ・スプルアンスを迎え、アルバムの制作に入る。

「新作は醜さを伴ったヘヴィなものになる」という発売前のビルのインタビューでの発言通り、コンパクトにまとまってはいるがヘヴィかつアグレッシヴ。前作のゴージャスな部分はストレートでハードコア、シンプルでコンパクトに置き換えられた。キーボードも少ないが、これは当時ロディがプライベートで問題を抱えており、あまりアルバム制作に関われなかったと言うことも大きいらしい。ということで削られたもの無くなったものが多いアルバムである。しかしそれが魅力の減退という意味ではまったくないところがさすがである。

装飾が減ったということと相反して音楽的な拡散、深化(この2語が並列できるところがすごい)は留まるところを知らず、各曲がFAITH NO MORE印に彩られながらも独立した魅力を放っている。

Evidence, Caralho Voador, Take This Bottleのようなスローかつムーディーな曲をセクシーで怪しく不穏にカッコ良く決めたかと思えばDigging The Grave, The Gentle Art Of Making Enemies, Get Out, What A Dayのようなキャッチーなハードコアチューンで圧倒的なカタルシスを放出。Ricochetではコアっぽいんだけど叙情的…みたいな不思議な雰囲気が味わえるし、パットンが朗々と歌い上げるJust A Manではゴスペルコーラスまでもフューチャー。バリバリにホーンをフューチャーしたファンキーチューンStar A.D.もたまらなくカッコイイし、Cuckoo For Caca, Ugly In The MourningではKORN以降のヘヴィロックの雛形とも言える醜いヘヴィネスを体現している。実際Ugly In The Mourningの後半ではジョナサン・デイヴィス顔負けのあのうなりが聴けたりして。そしてこれらすべての楽曲のクォリティーは、当たり前のように、鬼のように、高い。

FAITH NO MOREはジム・マーティンが脱退して終わった、みたいなことを言う人がいるけれど、それは多分メタル的な要素が減退したことへの寂しさからそう感じてしまうんだろう。でも、メタル的要素はなくなっても、他のカッコ良さがどんどん曲にとりこまれていて、それはパワーダウンじゃなくて俺にとってはパワーアップなんだよね。これもやっぱすげーアルバム。

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Angel Dust / FAITH NO MORE (1992)

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Angel Dust / FAITH NO MORE

大ヒットアルバムの次というプレッシャーがかかる中で制作された4thアルバム。Mr. BUNGLEもレコーディング・ツアーを行っていながらきちんとこちらも仕上げていたっていうのは驚き。現在のパットンのワーカホリックぶりはこの頃もしっかりと発揮されていたってことかな。

FAITH NO MOREファンの中ではこのアルバムを最高傑作とする人も多い。前作をはるかにしのぐ雑食ぶりを見せながらも、それぞれがFAITH NO MOREとしての個性を猛烈に主張しており、大ヒット作品の後のプレッシャーはまったく感じられない。ギターは相変わらずガリガリとしたリフを刻むことでメタルを主張しているが、音は小さく前作ほど前面に押し出されていない。これはジムと他の4人との確執が表面化してきたことの表れでもあり、それ故ヘヴィネスが足りないと感じたりもするのだが音楽的にこれだけの説得力を持つ作品を前にしてはそれも些末なことだ。ギターが後ろに下がった分今回はキーボードの装飾がシンフォニックと言えるほど増えており、十二分に補っている。メロディーはさらなる冴えをみせ、彼らの専売特許である「キャッチーなヨジレポップソング」のオンパレード。コンパクトにまとめあげられた各曲のクォリティーは本当に高い。捨て曲なし、素晴らしいアルバム。最高でーす。

Midlife Crisis, A Small Victoryのようなほんとにポップでキャッチーな曲もあればCaffeinのようにヘヴィーにうねる曲もあり、のんきで素っ頓狂な裏にとんでもない妄想がうずまいているようなRV、パットンがMr. BUNGLEから持ち込んだアヴァンギャルドな側面を打ち出したMalpractice, Kindergartenのような曲、さらにコモドアーズのカヴァーであるEasyと鬼のようにバラエティに富んでいながらもそれぞれが違和感なくこのアルバムに収まってしまっているというのがすごい。

豪華な遊園地のような華々しさと、どこかのネジ狂不ったような穏さが絶妙なバランスで。めっちゃカラフルで楽しいんだけど、その裏には猛烈な狂気と恐怖がうずまいている。マイクのヴォーカルは前作とは打って変わって現在に近いオペラティックな歌唱を随所に織り込むようになっており、耳あたりが大分良くなったし深みが格段に増した。勿論耳当たりがよくなったといってもそれはクリーンに歌い上げるところだけであり、シャウトに纏わりついている狂気はさらにダイレクトにこちらに伝わるようになった。また、Caffeinの中間部やRVで聞かれるような「低音を強調した声での語り部としての魅力」みたいのも出てきた。Mr. BUNGLEのアルバム制作に身に着けたことをこのアルバムでさらに発展させたと言った感じだ。

FAITH NO MOREで最初に買うならコレ。

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Mr. Bungle / Mr. BUNGLE (1991)

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Mr. Bungle / Mr. BUNGLE

はじめてこのアルバムを聴いた時、俺は「単なるFAITH NO MORE好きの高校生」で、他に聴くのはメタルばっかだったもんで「さっぱりわからん」って感じだった。それでも「マイクのバンドだから好きにならねば」という幼稚な忠誠心から、何度も一生懸命聞いた気がする。

FAITH NO MOREの加入時にマイクが要求したのが「MR.BUNGLEでの活動も認めること」という条件だったらしい。大ヒットアルバムTHE REAL THING後という非常に大切な時期でありながらこのサイドプロジェクト(マイクにとってはむしろこちらが本業?)がレコーディング、ツアーを行ったのはその契約によるところが大きいんだろうか。FNMで一躍大ブレイクしたパットンが在籍しているバンドと言う事でCDデビュー前から話題になっていたんだけどその音楽性については全然情報がないというか「デスメタル」って言われてた。でも聴いてみれば一聴瞭然、実際のところは全然デスメタルじゃない。それにしてもいくらFAITH NO MOREのヒットがあったとは言え、まだメジャーデビューして一枚しかアルバムを出してない若造のバンド、しかもジョン・ゾーンプロデュースっつー作品がメジャーレーベルからポイっと出てくるって凄いよね。もともとパットン以外のメンバーのポテンシャルというか、バンドとしてもかなり買われていたからなんだろうけど。

このアルバムを買った当時はさっぱりわからんかったと書いたけれど、その後のパットン作品に触れ、こちらも当時より音楽キャパシティが幾分広がった今聴くと、このアルバムはすっげーわかりやすいのな。まあわかりやすいとは言ってもジャケットの不気味なピエロオヤジから受ける印象そのままの、変態的な曲展開が多いのは確かで、血まみれで爆笑してみたり糞まみれで号泣してみたりというアグレッションもありながら、ジャジーというかムーディーにしっとりとチンポ丸出しで歌い上げたりレッチリよろしく陽性ファンクでヨダレ垂らしながら跳ねたりもする。そしてそれらのパートが目まぐるしく入れ替わるという気狂いサーカス。

しかしながら重要なのはその目まぐるしさも含めてどれもすごくキャッチーだということ。むちゃくちゃなんだけど全体を通してポップさまでを感じてしまう。とにかくありとあらゆる食材(中には食材でないものも)を鍋にぶち込み、すべてがドロドロに溶けてからではなくてどれも形を失わずゴロゴロしている状態でいきなり皿に盛られて「食え!」と脅されて食べてみたら意外とうまかった、そんな不思議な雰囲気。

パットン先生は高校時代からの気心の知れた変態ミュージシャンたちとリラックスかつ気合満点でこの作品に取り組んだのだろう。THE REAL THINGとは比べ物にならない幅広い声と歌唱を披露していて「パットンの魅力」が花開いたのはこの作品があったからこそと言っても過言ではないと思う。

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The Real Thing / FAITH NO MORE (1989)

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The Real Thing / FAITH NO MORE

彼らが世界的規模でブレイクするきっかけとなった、そしてマイク・パットンのメジャーデビュー作となったFAITH NO MORE3rdアルバム。ジム・マーティンのガリガリとしたメタルギターが前面に押し出されていたり、サウンドプロダクションも硬質であったりすることなどから当時のメインストリームだったヘヴィメタルな感触が非常に強い。曲調も現在と比べてストレートなものが多く、メタル全盛であった80年代後半ならではの作品と言えるかもしれない。よってクロスオーヴァー/ミクスチャーブームの旗手と呼ばれるきっかけとなったこの作品であるが、現在ほどの雑食性は感じられない。しかし、1曲1曲のクォリティーは現在と同じく非常に高い。

ストレートに突っ走るFrom Out Of Nowhereで幕を開けるこのアルバムに収録されているラップとキャッチーなメロ、そしてメタル的な音像&曲展開が絶妙のマッチングを見せるEpicは大ヒットしただけあって今聴いても変わらずカッコイイ。ミクスチャー云々というよりもたまたまヴァースがラップ(今聴くとラップって感じじゃないんだけどね)なだけであってギターソロのドラマチックさ、その構成は完全にヘヴィメタルである。また、Surprise! You're Dead!でもまさにスラッシュメタルといえるギターリフが織り込まれており、ジム・マーティンの貢献度の大きさが印象的だ。

他にもZombie Eatersにおける悲哀と怒りのコントラストが素晴らしい展開を見せる曲や8分の大作であるタイトルトラックThe Real Thingなどにもメタル色が色濃く出ている。ドラマチックなWoodpecker From Marsもカッコよい。チョッパーベースとザクザクと刻まれるギター、硬質なマイク・ボーディンのリズムに中近東風のまか不思議なメロディーがのるインスト。

10曲目にはBLACK SABBATHのWar Pigsのカヴァーが収録されている。メンバー曰く「ジョークでやっただけ」とのことだが、お遊びではすまない気合である。この曲の肝はとにかくボーディンのドラム。かっこよい。

マイク・パットンのヴォーカルは現在と違ってあまりオペラティックな印象はなく、声質も今よりピッチが高く、鼻のつまる一歩手前のような不思議なひらべったい声…という印象だ。しかしその表現力はすでにその後の凄まじさの片鱗を見せている。スラッシーなSurprise! You're Deadにおいて思いっきりヘヴィーな歌唱を披露したかと思えば、一転Zombie Eatersのイントロにおける囁くような歌を聴かせている。INTRODUCE YOURSELFまでのF.N.M.も独特の魅力があったが彼の加入で一皮むけたような感じ。一気にメジャー感が出た。

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2005年02月24日

Unleash The Fury / YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE

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Unleash The Fury / YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE

長文です。超長文。

どうも「イングヴェイはクラシックの影響を受けていて高尚だ!」とか「イングヴェイの魅力はクラシックに影響を受けた美しいメロディーだ!」とか言いたがる耳の腐った人が多いんですが、そういうこと言ってる奴は信用してはいけません。

イングヴェイの「クラシカル」っていうのにみんなどんだけ気品とかを感じてるかはわからんけど、俺が聞く限り彼のクラシックは本当の意味でのクラシック感覚というよりは、田舎の金持ちが「これがロレックスだべ!」「シャネルってのは高級なんだべ!」「本当の金持ちはゲージツを学ばないとな!」ってアピールしているようなのに近い気がするんだよね。いやイングヴェイは本気で好きなんだろうけどさ、その根っこにある人格的なとこにそういう下品さがあるというか。

とは言うものの、最初からイングヴェイが下品全開だったかというと、そういうわけでもない。20代の頃の彼の音楽には、中学生が権威に向かって自分の力を誇示しようとするような甘ったれたトゲトゲしさと、その裏側にある思春期的ナイーヴフィーリングが随分と表れていて、それが彼の音楽を北欧的ダークでアグレッシヴなヘヴィメタルの中に繊細な美しさを共存させるという「ネオクラシカルヘヴィメタル」たらしめていた。

今聞き返すと20代の頃の彼の作品は本当にナイーヴで彼自身の自己顕示欲と繊細なパーソナリティが強く表れており、ROCKIN' ON的な視点でも十分に語ることができるだけの文系ロック感覚があったと思う。もちろんそれに留まらないメタメタしいアグレッションも満載だったけど。

しかし、この若者ならではのナイーヴさを維持し続けるのは難しい。イングヴェイもそのナイーヴさを美しさと繊細に昇華させていたのは20代の間までだった。30歳を過ぎた頃からそのナイーヴさは大人の世界で身に着けた傲慢さに置き換わり、それと同時にナイーヴな感性から生み出されていた美しさと繊細さは傲慢さから放出される下品な雰囲気と野太いグルーヴに取って代わった。

よくイングヴェイの作品を語る際、交通事故前と交通事故後、もしくはポリドール時代とそれ以降というように分けることがあるが、俺にとってイングヴェイが変わったのは30歳っていうのが大きな分岐点になっていると思う。最近の作品に否定的な人は押しなべてそのナイーヴだった頃のイングヴェイを求めているんだと思うけど、それはぶっちゃけ40の男に「なんでお前ヒゲ生えてんだよ生やすんじゃねーよ!」と難癖付けてるようなもんで、何をいまさらって感じ。

で、何が言いたいかっていうとイングヴェイの魅力っていうのは下品なカッコよさにあるわけであって、クラシカルなフィーリングってのは後付けの装飾にすぎないってこと。

今回のアルバムは、イングヴェイ自身が初めてそのことを自覚して表現したような感じがある。今までは自分でもどっちが自分の魅力か決めあぐねているところがあって、そのせいで最近の作品にはやや中途半端なもどかしさを感じるものが多かった。特にATTACK!!はそんな気がする。でもUNLEASH THE FURYには「俺の魅力はこういうヘヴィで下品なグルーヴだろ!これがロックなんだよバーカ」っつーステートメントが込められているような感じがして個人的には痛快だった。

もちろん歌メロの弱さに関してはいかんともしがたいところがあるしギターソロのコード進行っつーか展開はマンネリを超えて「そういう展開にすると決めてある」ぐらいワンパターン。音質だって例によって悪い。このアルバム聴いたあとに聴く他のバンドのどのアルバムもまず「うわ、音いいな!」って思うぐらいだし。しかし、今回はそういうのってどうでもよくね?って思えるだけの勢いとエネルギーがあると思うんだよね。リフの音はファットで、ドラムもバタバタやかましい。ベースは大人げないし、手癖だらけであってもギターソロはピロピロっていうのとはまた違う鋭さで切り込んでくる。音の汚さも今回は別にマイナスに作用してないと思う。曲数にしてはやっぱ省けばもっと締まっただろうなとは思うしCrown Of Thorns, Beauty & A Beast, Revelation, The Huntあたりはカットしてもよかったかもしれない。まあもっといらないのはクラシックのカヴァーなんだけど、この恒例のカヴァーがあるとイングヴェイの大阪のブランドおばはんみたいな下品さが強調されるから残しておこう。でも、意外と冗長さを感じなくね?

今までのイングヴェイの作品で「曲がいい」って思えた瞬間は何度もあったけど、「カッコイイ」って思えたアルバムはあまりない。そういう意味では完成度はともかくとしてイングヴェイ史上もっともカッコイイアルバムが今作であると思う。Locked & Loaded, Cracking The Whip(ノイズがかっちょいい)あたりの「美しいメロよりもカッコよさが重要だ!」みたいなのはかなりいい。まあそれだけにこのヴォーカルのショボさがもったいないんだけどさ。全曲イングヴェイがダミ声で歌ったほうが良かったんじゃねーかな。

あとね、そもそもSEVENTH SIGN以降のイングヴェイは「ネオクラシカル」ではないわけで、だからこそ「ネオクラシカル」という視点でフォロワーの完成度と比較するのは90年代初期ならまだしも、今となっては完全に無意味だと思うんだわ。イングヴェイは「クラシカル」という装飾を用いての「ロック」作品を作る中で、そのフォロワーたちとはまったく違う次元のカッコよさを追求しているわけだし今回そのカッコよさという点ではかなり実現できていると思う。音楽に機能性しか求めない人にはそういう感覚はおそらく理解できないと思うけど。まあ表面的なキレイキレイ音楽を聴きたいならひたすらママに選んでもらって聞いてればいいと思うし、どっちにしてもお上品な音楽で表現できる美なんて麻生久美子のアゴのラインの美しさと比べたらウンコみたいなもんだ。こうなったら音楽に何を求めようが人の勝手だみたいな意見は無視だぜ!いぇーい!

そういうわけで、俺はこのアルバム好き。オタクっぽいフレーズの積み重ねでオタク向けの機能性オンリーのネオクラしか作れないフォロワーたちの中でイングヴェイのように「かっこいい」と思える音楽を作ったアーティストなんかいないわけで、そもそもの格の違いをまざまざと見せ付けたアルバムだと思うよ。いや別にフォロワーと比べてる人に対してこうして理論武装したりするなんてのも無意味なんだけどさ。理論武装しなきゃ聞けないアルバムでもなくて、単純に熱くて下品でかっこいいアルバム。

と、書いておきながら実はこのUnleash The Furyがそこまで素晴らしい作品だとも思ってないんだけど、どうも「最近のイングヴェイのかっこいいとこ」をきちんと理解してる人って少ないよなあ、というもどかしさで長々と書いてきたわけです。ここ数年思ってたんだけど、イングヴェイが比較される対象はザック・ワイルドとかMORTORHEADのレミーみたいなキャラのアーティストだと思うんだけどどうだろう。音楽性はまったく違うが表現しようとしていたロックのカッコよさについてはこの両者のベクトルに近いものがあると思うんだよな。

ということで発売後3日間聞きまくっている最中の感想でした。今後また変わったら「YNGWIE」カテゴリーでちょろちょろ追加していこうと思います。

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2005年02月17日

Rocked, Wired & Bluesed : The Greatest Hits / CINDERELLA

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Rocked Wired & Bluesed: Greatest Video... / CINDERELLA

「あ~らとっつぁーん死んでれら~と思ったら生きてれら~」というのはルパンの名言ですが、去年末のWHITE LIONブームに続いて現在はCINDERELLAブーム。

俺が彼らを知ったのはMTVヤポーンでNobody's Foolのビデオクリップを観て気に入り、1stをレンタルしたときでした。そのナンパなバンド名と「BON JOVIの弟分」という触れ込みとは裏腹に、トゲトゲしいサウンドと伸びやかになったウド・ダークシュナイダーって感じのヒステリックなヴォーカルが印象的でした。俺ウドは嫌いだけどCINDERELLAは平気なのよね。今でこそヘアメタルみたいに言われてるしBON JOVIの弟分ってことでポップなイメージがあるかもだけど、この1stはすげーメタリックでアグレッションも強く感じることができた。Somebody Save Meみたいに攻撃的なリフが曲を引っ張るようなのもあるし、楽曲の良さとか以前に単純に「かっこいい」って思えたな。

2nd以降はフナみたいな口をしたトム・キーファーの趣味が色濃く出た軽薄さとは無縁の渋い曲も増えたけれど、そこにもキャッチーなセンスってのは健在でどのアルバムにもいい曲が沢山入ってた。特に俺が好きなのは3rdのHEARTBREAK STATIONなんだけど、Shelter Meのようなサックスソロにしびれる少しファンキーな感じもするキャッチーな曲やThe More Things Changeみたいなちょっぴり土臭いストレートなハードロックチューン、今聴いても泣けてくるセンチメンタルな失恋バラードの超名曲Heartbreak Station、そして「これがブルーズだよ!」と中学生にシタリ顔させてしまうような渋い曲も入ってて今でも聴いちゃう。こういうアルバム作れちゃうバンドを「ヘアメタル」でくくって過去の遺物扱いしちゃっていいの?みたいにちょっと熱くなっちゃうほど好き。

このDVDはそんな彼らのビデオクリップ10曲を集めたDVD。オマケでLONG COLD WINTERツアー時のインタビューやライブ映像、Heartbreak Stationのビデオクリップのメイキングなど、以前リリースされたビデオ作品にも収録されていた映像もまとめてくれてあります。あとはトムたちのコメントとかね。意外としっかり作ってある。

さっき「過去の遺物にするな」とか書いてしまいましたが、さすがに初期のビデオクリップはノスタルジックな空気を感じさせてくれます。1stからの3曲はバンド名にちなんで意地悪姉妹が出てきたりするし(シンデレラ役はビデオによって違うのね)。Gypsy Roadのビデオクリップの見所は珍しくスッピンのトムの笑顔です。

音楽的にトムのワンマンバンドであったことは間違いないと思うんですが、こうして映像で見るとジェフやエリックはギター&ベース回しみたいなとこだけじゃなくて身のこなしみたいのにもそれぞれ華があっていいです。音楽性云々よりもこうやって「魅せる」こともできるプレイヤーがそろっていたのが80年代バンドならではって感じ。ちなみにトム・キーファーはNobody's Foolとか観ると、すげーゴスっぽい。

ウェインズ・ワールドのサントラに提供した名曲Hot & Botheredのビデオクリップが入っていないのは残念だけど、他のビデオクリップは全部入っているし、上に書いたようにオマケも入って輸入盤なら1600円強で買えちゃうんだからこりゃお得。CD版も出ていてそちらはビデオクリップになっていない曲の選曲もばっちしだしHot & Botheredも収録されてるのでそちらもオススメ。1997年に出たベスト盤も、日本盤ならNight SongとPush Pushがボートラで収録されているし、ジャニス・ジョプリンのMove Overのカヴァーも入ってたりするんでオススメなんで見かけたらどんぞ。

ちなみにここらへんのベスト盤では申し訳程度に1曲ずつしか収録されていない4thアルバムStill Climbingですが、3rdよりも躍動感があるというかドライヴ感満点。頭3曲のたたみ掛けや疾走チューンFreewheelinのカッコよさといったら。助っ人参加のケニー・アロノフのヌケのいいドラムも気持ちいい。、ヒット曲こそないものの、内容は素晴らしいので軽視しないように。

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2005年01月26日

Romances / PATTON & KAADA

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Romances / PATTON & KAADA

マイク・パットンとノルウェー出身のキーボーディストKAADAのコラボ作品。パットンってのはアホみたいに活動領域が多岐に渡っていて中には(というか数多く)俺がついていけない作品もあったりするんですが、このKAADAとのアルバムはどちらかというと聴きやすい雰囲気。いやね、実はこれ買ってからしばらくはその淡々とした空気になじめずに放置してたんだよね。それを最近改めて聞き直したら手のひら返しにハマってしまった。

マイク・パットンが誰なのかってのはおいといて、まずこのKAADAさんというのはどちらの方なのかしらん、と思って調べてみると、どうやらノルウェーの権威ある映画祭において音楽賞を受賞するような方らしい。映画音楽ってぐらいだから派手なオーケストレーションなのかな、と思ったんだけどどうやらノスタルジックなムード漂う音楽を得意としているようだ。パットンもMR. BUNGLEやFANTOMASにおいて60年代の映画で聞けるような独特の雰囲気を持った妖しい音楽をやってたりもしたことだしその辺でつながったのかな。

そういう先入観で聴いてみるとこの作品はまさにドンピシャというか。KAADAによるノスタルジックな薫り漂うキーボードサウンド(それはアコーディオンであったりピアノであったりエレピであったり、テルミンであったり)の上にパットンの唸り、ファルセット、叫びなど相変わらずどこまでがサンプリングでどこまでが本当の声なのかわからなくなるような多様な「人の口から出る音」によって表現されるハミングや歌が乗る。その両者の鬩ぎ合いによって生まれるのは、やはりこの両者にしか生み出せないであろう独特な世界。ジャケ(相変わらずIPECACのパットン作品はジャケがすてき)では美しさと不気味さと物悲しさの共存した生き物クラゲを暗い色彩で描いているが、中身も本当にそういう雰囲気。

瞬間的にはほのぼのと暖かい空気だったりすることもあるんだけど、それはすぐ不穏なコード進行や奇怪な効果音にかき消され、色はひたすら暗く混濁したまま流れている。しっとりとムーディーでありながらひたすら不気味で、美しく、悲しく、おかしく、よじれた世界。

淡々としているようで、その実その瞬間瞬間における緊張感はただ事ではない。起伏が激しいわけじゃないんだけど、一度聴き始めてしまうと展開というかこの音楽世界の進み方から目が(耳が)離せなくなってしまう。そういう意味ではFANTOMASに大きく共通したスリルも感じられる。音圧的には高いものではないが、聴いてて感じる圧迫感がなんだか妙に強いんだよな。

ということでやっぱマイク・パットンは偉大でした(KAADAも!)。

投稿者 trouble : 20:34 | コメント (38) | トラックバック

Aeronautics / MASTERPLAN

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Aeronautics / MASTERPLAN

HELLOWEENを脱退した二人がJORN LANDEと組んだバンドのセカンドは、ファーストを大きく上回る素晴らしいアルバム。前作は軽快な曲が印象に残ったが、今回は楽曲のテンポの速い遅いに関係なくずっしりとした質感と大きな空間と広がりを感じさせるスケールの大きな楽曲が印象的。全体的にクォリティも前作よりも大きく底上げされている感じがするというか、どの曲にも耳を惹かれるフックとアレンジが施されていてかなり引き込まれます。アップテンポながら重厚な雰囲気のオープニングチューンCrimson Riderからポップながらもやはり落ち着いた雰囲気もあるWounds、そして10分近い大作のBlack In The Burnまで途中で飽きることなく聞ける。

事前に聞いた人は「いいんだけどヨルン・ランデのやる気のなさが見え見えでさあ」と言っていたのですごく不安だったんだけど、聞いてみたら全然そんな雰囲気は感じられなかった。やる気がないというよりも無理なく歌える音域で作られたメロディーをガナったり声を張り上げることなく、しっとりと歌っているから普段の「鬼神」のイメージとは違った印象になったんじゃないかしら。

でね、先述したバックの演奏や楽曲のずっしりとしたムードとヨルンのその落ち着いた歌唱がすごくマッチしてて独特の大人感を醸し出してるのが本作の最大の肝だと思う。性急で青臭いのももちろん好きなんだけど、ベテランだからこそ出せる風格による迫力みたいのがこのアルバムにはある。伝統的な欧州メタルのフォーマットでこういう威風堂々な威厳と重みを醸し出すアルバムっていうのは最近なかなかお目にかかれなかっただけにこのアルバムをしばらく聞き込んじゃいそうです。

投稿者 trouble : 19:59 | コメント (10) | トラックバック

Hot Fuss / KILLERS

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Hot Fuss / KILLERS

超今更感覚で。Rで持ってたんですがやっぱこれきちんと持ってたいなって感じで買い直し。いや直しとは言わないか。フジロックで観て好きになったんですが、久々に聴いてもやっぱりいい。ちょっとキッチュなニューウェーブ感覚と多少どっしりとしたロックグルーヴ、そして極上のポップメロディー。こういうのをイギリスのバンドがやると沢田太陽絶賛!みたいな感じでFRANTZ FERDINANDみたいなイヤーな雰囲気のバンドになるんだろうけど(いやバンドに罪はないですよね)、アメリカはラスヴェガス出身ってのがなせる業なのかいい意味で俗っぽい。

ていうかライブ楽しかったなあ。単独も行こうかしら。

投稿者 trouble : 19:31 | コメント (9) | トラックバック

The Illusion Of Democracy / REFLUX

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Illusion of Democracy / REFLUX

つとむ君が2004年のメタルコア5選のトップに挙げていたワシントン出身のバンド。アルバムタイトルや曲名、ミルトンなどの言葉を引用したブックレットなど、インテリ臭プンプン。って俺ミルトンって誰だか知らないんだけどね!誰だっけ。経済学者?哺乳瓶の洗浄剤?トマス・ジェファソンなら知ってるぞ。まあそんなことはさておいて、いやこりゃかっちょいいっす。メタルコアっぽい突進パートと叙情味あふれるエモーショナルなメロディーのコントラストがあり、かと思えば不穏で混沌とした世界を想起させる和音や変拍子をまじえてケオティックでテクニカルな雰囲気もややあったりする。

こう書くとSIKTHみたいな音を想像するかもしれないけど、SIKTHが飽くまでPROG-METAL的な流れの上にあるとすればこちらはあくまでメタルコアの流れ。その突進力と咆哮、切羽詰ったギリギリの感覚がおもっくそハードコアっぽい。突き動かされて暴れているかのような衝動性も強いし、ドロドロと混濁した空気も感じられる。それゆえ複雑なことをやっているしメッセージ性も強いんだけども頭デッカチにはならず、スリリングに感じられる音楽になりえてる感じがする。

構成や展開もデビュー作とは思えないほど緻密で6分台、7分台の長尺の曲もけっこうあるんだけどどれも途中でうんざりせず集中して聞いてられる。アルバム後半になってもそのインパクトが弱まらないってのはいいねー。確かにこりゃすげーバンドだわ。

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2005年01月22日

Rock Am Ring 2004 / LINKIN PARK

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ドイツ最大のロックフェスティバル、ROCK AM RINGフェスに出演したLINKINのブートDVD。ドイツ最大とか知ったかぶりしてみたけど実際のとこどうなんかわからんかったりするんだけどー。ってことで2004年のROCK AM RINGって誰が出たんだろ・・・と思って検索してみました。なんじゃこりゃ。すっげーメンツ。どの日も恐るべしって感じのメンツなんですが、特に6月5日はヤバイ。WACKENとフジロックとサマソニをくっつけたようなラインナップ。こんなのだと逆に困るな。選べない。

で、このブートはドイツのテレビ局WDRのROCKPALASTという番組でオンエアーされたライブをブート化したものだけど、このWDRってテレビ局はすげーよね。数々の名ブートのソースが放送されてるわけで。うらやましすぎる。で、今はその放送ソースをデジタルで録画してデジタルでコピーしてブートが出回るのね。昔みたいにダビングを重ねた映像ってわけじゃないのが嬉しい。

このROCK AM RINGの映像だと一昨年のQUEENS OF THE STONE AGEも超一級品のカメラワークとミックスが施されていてそこらの映像商品なんかよりはるかに高いクォリティだったんだけど、このLINKINのライブも素晴らしいです。LINKINのLIVE IN TEXASに満足できない人は是非こっちを買うべき。っていうか初めてのLINKIN PARKにこのブートをオススメしたいぐらいです。

ツアーも終盤ということで一昨年の日本ツアーとはセットリストも随分変わってきてる。Breaking Habitが入っていたり、Step Up~Nobody Listening~It's Going Downみたいな馴染み薄い曲をメドレーにして聞かせたり(Nobody~はフルで聴きたいけれど)、NINのWishのカヴァーをプレイしていたりして来日時とはちょっと印象が変わってきてます。また、他の曲のアレンジというか曲間のつなぎが大分変化してきており、聴きどころはかなり多いです。Numbのイントロかっこいいし。また、LIVE IN TEXASとしてリリースされたではMETALLICA、LIMPとのSUMMER SANITRIUMツアーは演奏時間やステージセットこそヘッドライン時と大差はないものの、やはり客の盛り上がりに関しては飽くまで前座っぽい感じでイマイチだった。が、こちらはやはりそのツアーとはファン層も違って大盛り上がり。どの曲も客が歌いまくり跳ねまくり。

微妙なモヒカンのチェスターはモニターの調子が悪いのか絶好調ってわけじゃないけれど柔和に歌うときの声も喉から血が出るようなシャウトもやはり素晴らしい。Breakin' Habiitとかすごく切ない。

デビューして4年しか経っていないのにこの大会場を易々と掌握して盛り上げる二人のフロントマンと全曲ヒットソングと言いたくなるぐらいの密度の濃いセットリスト。漂う雰囲気が優等生であったとしても、それをここまで高みに引き上げているのを観ると、これもまたエクストリームミュージックだなと思ってしまったりします。すげーなー。

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2005年01月15日

MIKE PATTON & RAHZEL

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おはよう!昨日のウタゲのおかげで今日は夕方に起きて夜に朝ごはんを食べた感じだよ!

で、届きました。ブートDVD。

MIKE PATTON & RAHZEL LIVE 10/03/04

そのタイトルの通り、マイク・パットンとラーゼルのコラボレーションライブ。マイク・パットンが誰なのかはここを読んでる人ならわかると思いますがっていうかわかれよこのやろう!って感じですが、ラーゼルってのはヒューマン・ビートボックス(っていうの?)の人で、BJORKのアルバムにも参加してる人。

ライブは完全にこの二人だけ。ラーゼルがビートを繰り出し、パットンがそこに人声による効果音(叫びであるとかうなりであるとか)を入れる、といった趣で、時折Men In Blackみたいなベタなヒット曲をパットンがラーゼルのビートに乗せる。綿密に準備されたものというよりは「こういうのやってみようぜー」みたいな感じで軽い雰囲気で、なんかのイベントの中で行われたライブっぽいんだけど、なかなかおもろいです。即興ならではの緊張感つーか。

このコラボライブはBJORKのアルバムでの共演がきっかけだと思うんだけど、ほんとパットンってどんどん人脈を広げていくからすげーよな(訂正:後でBJORKのメダラ制作ドキュメント観たらラーゼルの参加はパットンの紹介って言ってたから両者の交流は別にここで始まったわけではないらしい)。きちんとリリースされた作品以外にもこういうコラボライブ結構やってるし。トレーダー間ではそれなりにそういうコラボライブのブート音源もあるんだけど、正直把握しきれない。音源として残す予定のプロジェクトだけですらどんぐらいそれぞれ進行してるのかすら把握しにくくなってしまいましたが、やっぱ細かく追いたいなあ。正直なところ聴いて「これいいなあ!」って俺にもわかるのってなかなか無かったりもするんだけど、このラザールとのは映像を伴っていることもあって楽しめました。次はGeneral PATTON V.S. X-Ecutionersだね。これ楽しみ。パットン将軍ですからね。

どうでもいいけどFANTOMAS以来、パットンっていつも同じかっこだな・・・Tシャツの上にブルーで裏地がちょい紫っぽいやつ。なぜ?

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2004年11月18日

Defying The Rules / HIBRIA

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Defying The Rules / HIBRIA

なんだかんだでBURRN!で高得点を獲得すると話題になるよね。やっぱみんな気にしてんじゃんねえ。俺は「BURRN!のレビューはすっげー当てになる」と思っているので知らないバンドでも高評価であれば購入してしまいます。っていうか活用できる情報は素直に活用しようよ。

ブラジル出身のこのバンドの音楽性は「至極真っ当なヘヴィメタル」。メロスピだとかメロパワだとかそういうものが生まれる前の、RIOTだとかRACER Xのような欧州的なメロディーとアメリカのパワーを併せ持ったようなヘヴィメタリックなバンドに21世紀のバンドらしいドコドコ感というかスピード感を加味したような雰囲気。軟弱でもないし、アタマでっかちでもないし、暑苦しくもない。ノスタルジックな雰囲気を感じさせながらも懐古主義に陥っているわけでもなく、パワーがありながらもスマートさも失っていないという、ありそうでない路線。ヘヴィメタリックに突っ走っても繊細さが垣間見えるところにいい意味でのジャパメタっぽさを感じたりもする。

歌メロなんかはもう少しフレーズにアレンジ加えたらすごいのに!と思ってしまうパートもあるんだけど一度慣れてしまうと聴く態度が減点法から加点法になる。最初は何か物足りなく感じていたのについ何度も何度もリピートしてしまい、いつの間にか「ツメが甘い」と思っていた歌メロが「哀愁を伴いつつ勇壮さを失わないメロディー」に感じるようになってくる。特にA KINGDOME TO SHAREとDEFYING THE RULESあたりはたまらん。

また、楽曲のバリエーション自体は豊富なわけではないが、どの曲も押しと引きを巧みに使い、「ただの疾走曲」に終わらせない劇的さを織り込んでいる。流麗なギターと大人気ないフレーズでガンガンに自己主張してくるベースの絡みもたまらなくスリリング。かといってソレが技術至上に陥っているわけではなく、飽くまで「さらにかっこよく!」ってのを追求したらこうなったって感じなのがグー。そしてやっぱりヴォーカルの力量。適度に耳に突き刺さる攻撃性を持ちながらもスムーズな伸びを感じさせるキャッチーな歌声は正に逸材。

新人なのにプレイヤビリティとメタル音楽センスにここまで抜きん出たものを感じさせるバンドってのは凄いよなあ。ANGRA、SHAMAN、そしてこのHIBRIAと、ブラジル人の音楽的基礎体力の高さって恐ろしいものがある。

革新性がとかロックとしての先鋭性がどうのとかそういうくだらねー理屈引っぱってきて叩かなくたって世界的にブレイクなんてしないんだろうからいいじゃないですか。そりゃ半端なのだったらアレですけど、少なくともこのバンドには気合を感じることができるし俺は大好きだぜー。

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2004年09月25日

You Fail Me / CONVERGE

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You Fail Me / CONVERGE

ボストン出身のロックバンドといえばEXTREMEですが、そのEXTREMEと同じくボストン出身で現在のヘヴィロックシーン最重要バンドであるCONVERGEの新作はまさにMore Than Words。

しまけんの真似をしたしのけんの劣化コピーみたいな書き出しではじめてみましたが、いや本当になんて言ったらいいのかわからない。ケオティック・ハードコアに分類される音楽ですが、そこに表現されているのはすでにそのカオスを完全に乗り越えた、神の領域。知的とか暴虐だとかそういう言葉にしてしまうとあまりにも陳腐すぎる。

自らの骨を軋ませて音を鳴らしているようなギター、ケオティックになりながらも重みと整合感を決して失うことなく、かといって機械的にはならない超高性能高密度泥ダンゴをガトリング砲で撃ちまくるようなリズム隊、そして阿鼻叫喚のヴォーカル。それらが一つになったときに生み出されるエネルギーの凄まじさは「えーとねえ、あえて言葉にするなら"CONVERGE"かな」としか言いようのない唯一のもの。絶望、慟哭、狂気、憤怒などのすべてのネガティヴなエネルギーをぶちこんで凄まじいスピードでかき混ぜたらそこに現れたのは世界中の汚物を集めて描かれた極美の世界のような世界観でした、といった感じ。時折FANTOMASを思い出すようなところもあるんだけど(っていうのは俺があまりこの手のバンドを語るときに広い知識を持っていないからだな)どんな狂世界を描いてもジェントルで知的な雰囲気が失われることがなく、だからこそ変態さを醸し出すFANTOMASに対し、CONVERGEが表現するのはもっと観念的でプリミティヴ。宇宙の誕生の神秘みたいな、我々の想像の及ばないところで爆発する狂気だ。

そして俺が聴けているのが何よりの証拠なんだけど、「ベタ」というわけではないにせよ凄く聴きやすい。ドラマチックだし、In Her Shadowのように、激しさから生み出される狂気の美もある。聴きやすいというと語弊があるかもしれないけれど、なんちゅーかうるさいとか過激だとか美しいとかそういう音楽形態への個人の嗜好を超越したところに凄みを感じさせるバンドなんだよね。パンク・ハードコアの出自でありながらTORTOISE、MOGWAIらが出演するフェスに参加するというところにもジャンルを超えた凄みを持っているということが表されているんだろうし。

激しい音楽を求めているけれど何を聴いていいのかわからないっていう人たちにとって入り口になることもできる名盤。NEUROSISと並ぶ、2004年ベストアルバム候補。すごいわよ。

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2004年09月22日

Start From The Dark / EUROPE

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Start From The Dark / EUROPE

いくら音楽評論家の方々が「初期に戻った」「1st2ndの頃のダークさが」とか言ってもそんなものが本当に戻ってきているなんて露ほども期待していないし、あの頃のような北欧ならではのヘヴィメタルが再現されてるともとても思えなかったのでむしろ「いいわけない」みたいな意気込みで買ったこのアルバム。

ヘヴィなレス・ポールサウンドによるダークなギターリフが曲を引っ張っていてまるで「95年あたりに出たアルバム」っぽい雰囲気なんだよな(こないだのTESLAのもそんな感じだったっけ)。まあ彼ら自身「クラシックなハードロックアルバムを作ろうと思った」と言っているように、70年代のハードロックを今風に解釈、みたいな方向性でやったら70年代のグルーヴを押し出していたグランジに共通するヘヴィなムードが出てくるのは当然だよね。

という音の分析はともかく、聴き始めてみるとこれがなかなかいいんですよ。ジョーイの歌メロはあまり起伏がなく、どちらかというと直線的だったりするんだけど、その少ない音の動きとダークなコード進行によって醸し出される独特の哀感があるというか、派手さはなくて地味なのに「あれ、なんかいいよ・・・」と聞き入ってしまう魅力がある。PRISONERS IN PARADISEでの70年代路線の延長上と言った感じのGot To Have Faithはともかくとして、ブート音源で聞いたときはなんとも思わなかったStart From The Darkや切羽詰った緊張感のあるFlamesと言った曲はダークなリフと明るい声質のジョーイの歌によるケミストリーが抜群で、ヘヴィな音楽に目覚めたジョン・ノーラム(リズムギターの音はかっこいいけど、ソロは正直ストラトで弾いてたころのほうが好き)とソロ活動でソングライターとしての経験を積んだジョーイ・テンペストがいる今のEUROPEならではの佳曲だと思う。この2曲は歌詞もこれからの活動に向けてのステートメントと言った感じで気合も感じられる。

フィル・ライノットに捧げられたHeroは感動的だし、ダイナミックなWake Up Callもかっこよく、前半のテンションはかなり高い。ところが中盤以降AUDIOSLAVEの出来損ないみたいなSong NO.12があったりかなりつまらない曲が増えてきて、アルバム終わったあとの疲労感はなかなか大きかったりする。Spirit Of The UndergroundやAmericaはそんなに悪いわけじゃないんだけど中盤の停滞感を一掃するほどでもないし。そんなわけで、アルバムトータルでみると復活っていう派手な話題に相応するだけの出来のアルバムとは言えなくなってしまう気も。

ただ、バンドに愛着を持っている俺からすると前半の魅力はやはり大きく、絶賛したりはしないにせよ「俺は好きなんだよねー」と言いたい。ただ昔に戻ろうってんじゃなくて、今の自分達の魅力を押し出した上で活動していきたいっていう気概も俺はいいと思うしね。

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2004年09月16日

Pnyc Roseland New York / PORTISHEAD

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PNYC Roseland New York / PORTISHEAD

こないだ観たLIVE FOREVERにMASSIVE ATTACKの3Dが出てて音楽も色々かかってたので(マイク・パットンとのプロジェクトはどうなったんだろ?)それに影響されてここんとこは寝るときにそういうブリストル系のやつ聞いてます。ってMASSIVE ATTACKとTRICKEYとPORTISHEADしか聞いてないから「系」じゃなくてそのまんまなんですけどね。

で、今日はダラダラとそのPORTISHEADが1997年にNEW YORKで行ったライブのDVDを観てた。このDVD日本盤出てなくて今月ようやく出るみたいね。

ニューヨークフィルをバックにしての演奏はものすごいパワー。淡々と演奏してるだけだし基本的に客は座って観てるんだけどその音はとにかくかっこいい。陰鬱で、ドロドロしつつも美しくて、サウンドに惹きこまれているときは呼吸すら止めてしまうような緊張感なんだけど、その気持ちよさは言葉にできないほど。どの曲も凄い求心力があるし、オーケストラの存在感も素晴らしい。緻密に組み立てられたサウンドのスリルというか緊迫感には恐れ入ります。タバコ片手に艶っぽくしっとりと歌い上げるべスもめっちゃかっこいいんだよな。

これは生で観てみたかったー。

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2004年09月08日

Slave Design / SYBREED

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Slave Design / SYBREED

どこのバンドかすら知らないんですが、試聴して思わず買ってしまいました。SPINESHANKやFEAR FACTORYあたりの多少サイバーちっくなところを極端にして荘厳かつダークにしたような雰囲気にHEAVEN SHALL BURNの新作のような(というよりもSTATIC-X的?)ミリタント感覚が加わったようなアタックの強いサウンド。さらにそこに欧州PROG-METAL的な雰囲気がちりばめられていたりします。

展開はかなり多く、それをスリリングにまとめあげるだけのアイディアもなかなか豊富。徹底的に作りこまれたサウンドはとにかく密度が濃く、宇宙船に一人で閉じ込められた閉塞感と迫り来るエイリアンの恐怖みたいのがタップリと(おどろおどろしくはないけど)。サイバーSFプログレメタルって感じ。アルバム通して緊張感は持続するし、かなり掘り下げ甲斐のあるアルバムだと思います。カツマタンゴあたりはずっぽしハマりそうな気がするんだけどいかがかしら。

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2004年08月28日

INTO / THE RASMUS

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DEAD LETTERが大ヒットしている彼らが2001年にリリースした4THアルバム。それまでTHEのないRASMUS名義で出していた作品はポップで快活なミクスチャーロックという感じだったがこのアルバムではメロディアスで爽快なハードロック路線に焦点をしぼっている。

いやなんでこのアルバムがリリースされた当時日本で話題にならなかったかが不思議になるぐらい高品質。DEAD LETTERと比較するとゴス風味は希薄。快活で爽快な雰囲気が強いんだけど、そのメロの殺傷力というか曲作りのあざといまでのうまさにはもう感服を通り過ぎて呆れてしまう。メジャーキーのメロディーに一瞬マイナーキーを織り込んだり、ブリッジに身悶えてしまうようなフックがあったりとほんとなんつーか、ズルい。いい曲や印象的な曲をあげようとじっくりアルバム聞いてみるとほんとどの曲もよくってどうしようもないんだよね。快活なMADNESS、甘く切ないBULLET、哀愁のCHILL、ポップなF-F-F-FALLING、フジキメタラーが思わずガッツポーズをとってしまいそうなアップテンポのHEARTBREAKER、おだやかで優しいSOMEONE ELSE・・・もうこの密度の濃さはなんなんでしょうって感じ。そしてアルバム後半にも使うのが恥ずかしい単語であると百も承知なのにそう表現せざるを得ない「微笑み涙胸キュンチューン」SMALL TOWNがあり、ラストを飾るのが壮絶な泣きのバラードLAST WALTZ。

そんな風にもう「参りました」と言わざるを得ない素晴らしい楽曲、メロを歌い上げる(と言うほど大仰ではないが)のが甘くかすれた声を持つLAURI YLONEN。もうね、この声がやっぱ反則だと思うんですよ。女の子はこの声にはやられるだろうなあ。いや俺も男なのにやられてるんですけどね。

MIKAEL ERLANDSONなどの北欧メタル系だけじゃなくて、ENUFF Z'NUFFのようなハードポップファンにも是非このINTOを聞いて欲しいなあ。

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Live At Slane Castle / RED HOT CHILI PEPPERS

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Live At Slane Castle / RED HOT CHILI PEPPERS

YAMA-ZKさんが「せめて映像で観たい」って言ってたけどこのライブDVDは買ったのかな?俺はこれを持ってるからLive In Hyde Parkは買わなかったんだけど。

2003年8月23日のアイルランドはスレイン・キャッスルからのライブ。なんか最近よく聴く地名だよね。U2の地元凱旋ライブが行われ、素晴らしいライブDVDが記録されたのもこの場所。U2のDVDは映像、演奏、そして何より人の波だけで鳥肌が立つ素晴らしいものなので、U2ファンといわずロックファンなら観て欲しい。それにしてもこれだけ広大な土地にこれだけの人が集まっているのを観ると壮観であるのは確かなんだけど、後ろのほうまで聞こえているんだろうかと思ってしまうのは貧乏性ゆえでしょうか。

CALIFORNICATIONとBY THE WAYの2枚のアルバムと代表曲を中心としたセットリストでこの2枚がレッチリのフェイバリットアルバムっていう後追い僕ちゃんにはたまらない内容。フリーがベーシストとして素晴らしい演奏技術を持ち、チャドのリズムも痛快極まりなく、ジョンのギターはまさに神。そんなすごいプレイヤーばかりなのになぜかライブでの演奏は「鉄壁」というよりもどこか「ヘタウマ」な雰囲気が漂っているのは実際にライブを観たことのある人なら知ってることだと思うんだけど、やっぱりこのDVDでもその「整合感」よりも「ユルさ」があって、だからこそいい。

もちろんバンド全体のかっこよさとか凄みなんかに圧倒されたりもするんだけど、そんな中でも俺はやっぱジョン・フルシャンテのギター、歌に惹かれちゃう。どうしても観るときもジョン中心で観ちゃう。彼のギターは本当に痛くて、優しい。SCAR TISSUEでのギターを初めとして、彼のギターには「むせび泣く」とかそういうありきたりなフレーズで表される感覚をさらに超越した「何か」が伴っている。もうたまんないっすよ。そしてこんだけ特異なオーラを放つギタリストがいながらも飽くまでバンドという単位であることを疑わせもしない存在感。すごいよね。

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2004年08月26日

HERE WE GO AGAIN / SR-71

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Here We Go Again / SR-71

アイドル同然の扱いでデビューした彼らの2NDアルバムは、ミッチ・アランの人間的成長と表現者としての目覚めが反映された素晴らしいアルバムだった。彼にとってはセラピー的な曲だったであろうMY WORLDなど、存在に重みを持った素晴らしい曲が沢山入っていた。

2NDは1STと比べるとヘヴィかつダークな作品だった。それは成長の過程の苦しみであったり、1STで不当に着せられた軽薄なアイドルポップというレッテルに対する表現者としての意地だったりしたんだろうと思う。そしてこの3作目はそこを通過して自分の足元が固まった上で精一杯自分のステイトメントを叫んでいるという感じだ。ただ単純に明るさが戻った、楽しくなった、っていうわけじゃないんだよね。2NDアルバム、そしてその後の苦しみ・葛藤を自分の糧とした上で改めて見つめなおせるようになった上でのポジティヴィティというか。だからこそ聞いている感覚が、表面的ではなくて心の底にまですっと降りてくる感じなんだよね。明るいけれど軽薄じゃない。ポップだけど深みと力強さがある。実際一度自分とこで感想書いたのにもう一度改めて書きたくなったのはちょっとイライラしてるときに聞いたらまた一段とこのアルバムの素晴らしさがしみたから。

音楽を聞いてパーソナルな物語性を強調してしまったり曖昧な話ばっかしてるとキモくなりすぎちゃうかもしれないけれど(でもそういうのができない音楽って魅力的か?と排他的になってみたりして)、実際サウンド的には快活で躍動感のあるハーモニー満載のポップロック、という一見「所謂ロックにうるさい人」ナメられそうな雰囲気にも関わらず、そこには気迫というかミッチ・アランという男のスケールのデカさみたいのが伴っていて、ついついそういうところに敏感になって聞いてしまうんだよね。アイドルっぽい風貌でデビューして、アイドルっぽいビデオを作っていた彼ら(というか彼)が様々な経験を積み重ねて年少の男の子たちから「兄貴」とすら言われるんじゃないかという存在の説得力を持ち合わせるようになったっていうのは冷やかしで観に行った初来日のライブでその素晴らしさに触れた者として、単純に嬉しいです。

オープニングトラックでAXL ROSEを「いつまでも古き良き時代にすがりついて生きる人たち」の象徴として描き、1985も文字通りその時代から抜け出せずにいる女性を描いているんだけど、そこで感じられるのが「現状の否定」でも「懐古主義への皮肉」ではないところがいい。ミッチ自身がハードロックからオルタナ、そしてその後のポストグランジというロックシーンの変遷をその中で感じ、そしてそれぞれの素晴らしさをきちんと捉えられているからこそこういう風に嫌味なく愛情を感じる歌詞を書けるんだろうなあと思う。そしてだからこそ、本当にGUNSにハマっていたわけでも別に1985年をピークとして生きているわけではない人たちにとっても感じさせる何かを持った物語になっているんだろうな。

他にも爽快感とスケールの大きさを感じさせるALL AMERICAN、疾走感がカッコイイHERE WE GO AGAIN、怒りと哀しみ、絶望を歌っているのにそれでもそれだけじゃない力強い何かを感じるBLUE LIGHT SPECIAL DAYなど、とにかく曲がツブぞろい。楽しさと目頭が熱くなる感動が同居してる。楽曲単位でも、アルバムとしてでも存在感のある素晴らしい作品だと思う。

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2004年08月25日

THE EYE OF EVERY STORM / NEUROSIS

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The Eye of Every Storm / NEUROSIS

人間の業の深さとその暗黒世界を描いたような音楽を作り続けるNEUROSISの新作。今回は(も)すげーです。

ひたすら荒涼としているようで、そこに渦巻く怨念の密度と粘度の高さと言ったら筆舌尽くし難い。聞けば聞くほどその世界に引きずり込まれるというか自ら堕ちていってしまうというか。広がり続ける世界観に対して音圧自体は作を重ねる毎に薄くなっているんだけど、そこに織り込まれる苦しみ/痛み/憎しみ/愛情の密度、そして感じられる業の深さ/絶望的な美しさ、そしてダイナミズムのふり幅は未だ右肩上がり。スティーヴ・アルビニの録音も素晴らしい。

こないだのJARBOEとのコラボも良かったんだけどさ、俺はこの地獄の底で血を吐きながら人類の業と対峙し続けているような雰囲気を感じさせるSTEVE VON TILLとSCOTT KELLYの声があってこそ、NEUROSISを好きなんだよなあ・・・。所謂お芸術とは一線を隠しているし、ロックやハードコアという概念とかもうどうでもよくなる人間存在の根源を揺さぶるような本当の表現、アート。

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2004年08月12日

Three Cheers For Sweet Revenge / MY CHEMICAL ROMANCE

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Three Cheers for Sweet Revenge / MY CHEMICAL ROMANCE

裏ジャケのメンバー写真に妙に抵抗を覚えてなかなか買わなかったりしました。特に左から2番目のメンバーの写真が警告アラーム発してたんだよな。

ところが。買って聴いたらもうズッポシですよ。ハマった。
まず1曲目のHelenaにやられたよ。何気にHAREM SCAREMのBelieveに似てる展開だったりするんだけど、こういうサビで高らかに盛り上がっちゃう曲に弱いです。高らかに伸びていくのではなく、途中で切なく転調しちゃうような涙目笑顔系の曲っつーかさ。そしてもう1曲大好きな曲がI'm Not Okay。この曲はエモいメロパンクって感じなんだけど、こういうほんのり涙目系のメロディーに乗せて"I'm not okay~"っすからね。負け犬シンパな俺にはたまらんのです。
他の曲もメロや展開にどこか一癖あって今時の音なんだけど曲にしっかりと個性を感じさせてくれる。途中から疾走して物悲しいメロディーをぶちまける4曲目(曲名長い)もいいなあ。キレイなエモ声じゃなくてジャック・ホワイトにも通ずるようなザラつきがあって、前倒しな焦燥感、切迫感を感じれるのがいい。

全体的にはちょっとポップでメロディたっぷりなスクリーモって感じなんだけど、屈折感が強いんだよね。俺にとって重要なファクターであるウジウジヒネクレ度が高いというか。バカが激情に駆られて勢いでスパーク!ってのも好きだけど、このバンドのようにバカっぽいけど実は色々考え込んじゃって卑屈になって・・・みたいなのが好き。
みたいなことを書いていて改めて自分のウジウジっぷりにも気づかされる30間近の夏の夜でした。

投稿者 trouble : 23:58 | コメント (5) | トラックバック